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僕と死神の14日   作者: 姥妙 夏希
1/2

Day 1

それは、いつもの様にベタついた、暑い夏のことだった。


「てってれー!田中伊織君、おっめでとうございまぁーす!貴方は14日後に死ぬ運命と相成りました!」


僕は、17年間の長い年月との別れを、唐突に告げられた。



***



「...は?なんのこと?ってか誰?」


ちっちゃい子供を見下ろしながら、そう言う。


器用に頭のてっぺんで結ばれた長い黒髪。

なんかやけにひらひらした、透明の薄っぺらい下着を着ている。

そのくせ、靴下?は膝下まで伸びている。ニーハイってやつ??


この歳で露出狂とは、日本の未来も心配だなぁ。


「なんか今、失礼なこと考えていますね?」

「...別に。ってか、早く服着替えなよ。何考えてんの、君?」

「えぇえ、伊織君、今服見てたんですねぇ。えっち」


...率直な意見としては、ウザい。


というか、何で僕の名前知ってんだ??


あれか、かまってちゃんか?

だとしたら関わらない方が良い。


さっさとどっか行こ...。


「あ、まぁまぁ、ちょっと待って下さいよぉ、私はこういう者でしてぇ...」


そう言うと、どこにそんな隙間があるんだとツッコみたくなるような、ひらひらの服から一枚の紙を取り出し、恭しく両手で持って此方に渡した。


【冥土役所 生への告別課 死神:莉李羽亜】


...名刺??


なんか、意外と良い紙で刷られてるなぁ。パソコンとかで印刷された、ちゃっちい名刺ではないっぽい。最近の子は、ままごと一つにも贅沢だ。


「...ごめん、ままごとなら彼処に公園があるから同世代と...」

「はぁぁぁっ、貴方文字読めないんですか?此処に『死神』って書いてあるじゃないですか。し・に・が・みって!!」


「はいはい、すごいねぇ。お兄さん、ちょっと今から用事があるからこれで失礼するね」


久し振りに何も予定がない日曜日だから、散歩に行こうとした僕が馬鹿だった。

今度から、公園とかそういったご近所さんじゃなくて、もっと遠い所にしよ。


そう思いながら、女の子の横を通り過ぎようとしたら。


「...じゃあ、これだったら信じます?」


そう言うと同時に、近くを歩いていた男性を、何処からともなく取り出した斧で斬り殺した。ごろり、と鈍い音を立てて、男性が血だらけになって横たわる。


「...わぁぁぁっ!?」


人、が、死んでるッ...!?

あい、つ、が、今...殺したのか...?


「救急車っ...それと、警察...!!」


1、1、0、と画面の数字を押し、警察を呼ぶ。


『...はい、どうしましたか?』

「あのっ...女の子が、通行人を...男の人を、斧で斬って...殺した...っぽくて、男の人、血だらけ...」

『...殺人、ですか!?何時に起きたことでしょう!?』

「えっと、つい先程っ...」


「はい、しゅーりょー」


ふわり、と眼の前を浮遊する黒髪の少女が、にやにやしながら【通話終了】ボタンを押した。


先程ので鮮血に染まった斧を弄びながら、「伊織君、これで信じてくれたぁ?」とクスクス笑う。


「...なん、のこと、だよ」

「私が死神ってお・は・な・し」


...信じるも何も...。

人が...死んで?殺され...。


「えぇ、まだ信じてくれないわけ?警戒心強い子、好きじゃないからねっ」


謎の台詞を吐くと、少女は横たわる男の人の元へ行き、腕を差し伸べて「うんぇぇいいっ」と絞るような声を出した。光の粒子みたいなのが飛び散り、血が彼女の掌に吸い取られていく。


「...あれ?」


ふ、と眼が覚めたのか、男性は体を起こし、何もなかったかのようにウォーキングを続けた。


「...さて、伊織君」


風になびく黒髪と、ひらひらの布がくるん、と振り返り。


「これで、信じてくれたかな?」


にっこりと笑って、女の子がそう言った。



***



「...お前は、死神なのか」

「はいそうでぇす、正真正銘、可愛い素敵な死神ちゃん。死ぬ前に拝めて良かったねぇ」


...なんのブラックジョークだよ。


「...じゃあ、僕は...お前の言った通り、14日後に...死んじゃう、のか...」


考えれば考えるほど、意味が分からなくなる。

本当に?嘘だろ?何で僕が??


でも、彼女のさっきの奇跡的な蘇生を見ると、信じざるを得ない。一回死んだ者が、生き返れたのだ。まあ、殺したのも彼女なのだけど。


「んーんーーー、ってか、正確には13日後。今日入れて14日後なんだよね。昨日伝える予定だったんだけど、私昨日昼から酒飲んじゃってさァ〜〜!!!ストゼロ飲んでから気分はSO HIGH!!って感じなんだよねぇ、ハハッ」


...仮にも見た目小学生がアル中発言ってどうよ...。

...そいで、大事な僕の余命が1日ストゼロで消えてくのってどうよ...。


「あのさ...」

「ちなみにだけどぉ、私の姿は死期が近い人...いわゆる伊織君にしか見えないんだよねぇ。此処で話してて、大丈夫なわけぇ?」


...。


周りを見ると、憐れみと同情の念を浮かべた表情が沢山ある。


...一旦帰ろ。


とりあえず、話はそこからだ。



***



「...それで、質問があるんだけど」

「はいほい、どうぞ」


「まず、君は誰?何処から来たの?目的は??」


「質問多いねぇ」


ケラケラ笑いながら、彼女は名刺をピッと取り出して話し始める。


「まずだけどぉ、私の名前は莉李羽亜(リーパー)、死神って奴ね。まあ、人間界でいうところのあの世、冥土から来たの。目的は、君に死期が近いんですよぉ、って伝えるため」


リーパーって、死神の英語訳...。

安易な名前...だがツッコむのはやめておこう。面倒くさそうだし。


それにしても。


...やっぱり、僕は死ぬのか。


「...何で、伝えに来たわけ?」

「ほえ?」

「別に、伝えなくても良くない、そういうの?伝えられたって困るだけじゃん」


「ふぅ...伊織君は分かってないですねぇ」


やれやれ、とばかりに首を振って溜息をつく。

...心底ウザったい。


一発ぐらい殴っても、許されるかな??


「あのですね、私達だって好きで伝えてるわけじゃないんですよぉ?でも、伝えないと、未練のないままこの世を去ったら悪霊化してしまうんですよ。そういうのって、駆除するのも大変なんですから」


駆除してやってんだから、感謝しろよ?とにっこりと笑ってから、「未練のない14日を送りましょうね♡」と言った。


...夢かな?


だとしたらお願い、覚めて。

もう睡眠時間は十分だから。


...駄目か、夢じゃないっぽい。


僕は諦めて、彼女の話を聞くことに徹した。


その後の彼女の話で、一応大体のことは把握した。


まず、悪霊っていうのは、この世に未練を残した、いわゆる幽霊みたいな奴で、人間の足の指をドアにぶつけさせたり、ペーパーカットをさせたりとか、そういうチマチマした嫌がらせをするらしい。


ただの可愛い奴らだ。


ただ、死神達にとっては死期が近くなる人が増加するため(ペーパーカットなんかで死期が早まるか?)大大迷惑だそうだ。いちいち駆除するのも大変。


そこで、死にそうな人で未練がある人には、死神が赴いて、未練を残さないお手伝いをするそうだ。


で、僕はその未練がある人...らしい。


「そんな未練とかなんとか言われても、分かんないけど??そもそも、死ぬって言われたのも唐突だし」

「ううぅん、それはおいおい見つけていくってことで?」


...何でお前が疑問形なんだよ。


「...じゃあ...未練を見つけていくのは、僕ってこと?」

「まぁ、そうなりますねぇ。私が伊織君の未練が分かるわけないですし。勝手に決めていいんなら、テキトーにあしらっておきますが?ソッチの方が楽ですしぃ」


ぶーぶー文句を言う彼女を無視して、僕は本でも読もうと思った。


結構前に買った本だけど、時間がなくて全然読んでなかったやつである。


ふと、読み終わるかな?と考えた。

自分が死んでしまう、14日後、いや、正しくは13日後までに...。


そう思った瞬間。


本がぱぁ、と明るく輝いた。

やがて、光っているそれは段々と小さくなり、光は消えた。


「...え」

「あぁぁあっっー、伊織君、今『本読み終わるかな?』とか考えましたねぇっ?」


ひらひらの服を揺らしながら、面白そうに空中を漂う。


特に隠す必要もなかったので、頷くと、彼女はクスクス笑いながら続けた。


「あのですねぇ、貴方には魔法をかけてあるんですよ。未練のありそうなものに、反応して光る魔法です。って言っても、光自体はすぐに無くなったので、そこまで未練のあるものじゃないんですねぇ。全く、早く見つけてくださいよぉ」


み・れ・ん、と口が動いている。


にまにま口の端を動かす彼女に、とりあえず一発入れておいた。


これぐらいしたって、神様(死神?)は許してくれるだろう。


殴られてあられもない姿になっている彼女は放置して、僕は寝ることにした。昼間だけど。全然外明るいけど。


...これが夢でありますように、と切に願いながら。

まぁ...ゆっくり、投稿を、ね...?汗

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