5 あの場所へ
子供の頃、俺たちは約束した。
『大きくなっても、ずっと親友でいよう』
学校帰りの高台にある公園のベンチに腰かけ、そこで俺たちは時間を忘れ、いつまでも夕陽を眺めていた。
『大きくなっても、ずっと親友でいよう』
その時、そう約束したんだ。
俺は……俺たちは……。
「……そうだな」
約束したんだから、守らなきゃな。
俺は言い出したい言葉を飲み込んだ。
「え?」
小さくため息まじりに呟いた俺の言葉に、彼女の表情が変わり聞き返されるも、複雑な心境だなどと言えるはずもなく苦笑いで答える。
「そうだよな、親友だもんな」
親友だもんな。俺は気持ちを切り替えるために、大きくひと息ついて続けた。
「あ、そうだ。今からあそこ、行ってみねぇか?」
「ん?」
「ほら、早く!」
俺は小首をかしげて聞き返す彼女の手首を掴んで、駆けだした。
そうでもしないと、つい言ってしまいそうになるから。
『親友でいいのか?』
その言葉を。
だけど俺は彼女の気持ちを大事にしたいと思った。
俺は親友として、ずっと彼女を支えていこうと、そう決意したかったんだ。
お読み下さりありがとうございました。
次話「6 距離感」もよろしくお願いします!