4 幼馴染み
彼女に、親友なんだから、恋愛感情なんてあるわけないと言われた。
彼女とは幼馴染みで、子供の頃から冗談を言い合ったりからかい合ったり。
たまには真面目な話もしつつ、時には支え合ったりしながら同じ時間を同じ季節を育んできた。
いつしか俺の中に蒔かれた『恋の種』。
発芽することはなかった。俺が、いや、彼女がそう望んだのかもしれない。
今まで俺の気持ちは彼女に語ることはなかったけれど、もしかしたら彼女も同じ気持ちなんじゃないのかと、たまに考えることもある。
そんな彼女に『親友なんだから』とあっさりと言われる。
そんな彼女に『恋愛感情はない』とキッパリ宣言された。
解っていたこととはいえ、そうハッキリと言葉に出されると少し寂しい気持ちになる。
何を期待していたのか。彼女の仕草に、言葉にいちいち心揺さぶられているなんて。
だけど。
「……そうだな」
あるわけないよな。子供の頃からの約束だもんな。
俺は小さくため息まじりに呟いた。
子供の頃。まだ恋の『こ』の字も知らぬ頃。
俺たちはよく学校帰りの高台にある公園のベンチに腰かけ、いろんな話をしたものだ。
流行の漫画やアニメの話、クラスの出来事……。
たわいのない話が楽しかったあの頃。
そこで俺たちは時間を忘れ、いつまでも夕陽を眺めていたっけ。
その時に、これからもずっと一緒にいよう。
『大きくなっても、ずっと親友でいよう』
そう約束したんだ。
お読み下さりありがとうございました。
次話「5 あの場所へ」もよろしくお願いします!