16 現実
アイツとの最後の会話。
俺は今でも妙に気になっていることがある。
というか心の中にひっかかってる。
自分は言わなかったくせに、聞きたかった願い。
最後まで聞くことができなかったアイツの言葉。
その時、病室で俺たちはいつものように話していた。
だけど、いつもとは様子が違って。
先生の診断では、本人が会いたい人を集めるように、というところまで深刻なようだ。
集まったのは彼女の身内数名と、俺。
順番に最後の別れを惜しんでいくというのも、案外残酷なことで。
もうすぐ会えなくなるからと本人に告げているのも同じだから。
だけど、お互い思い残すことがないように、必要なことなのかもしれない。
みんなが別れを終えて、俺の順番が回ってきた。
深空が静かに話し出す。
『あの時一番星に何をお願いしたの?』
『それは言えねぇな』
『ケチ』
『ああ、俺はケチだよ。お前こそ、何て願ったんだ?』
『そんなの言うわけないじゃん』
『ケチ』
ふふふと笑ったかと思うと、穏やかな笑みを浮かべながら彼女は言った。
『ずっと親友でいてくれてありがとう』
『ああ。約束だからな』
『私、ホントはね……』
お読み下さりありがとうございました。
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