15 心の穴
あれから3年。
ぽっかり空いた心の穴は、そう簡単には埋めることはできないかもしれない。
だけど、ムリに埋める必要もないのかなと、最近は思えるようになってきた。
彼女が、深空がいないことが『普通』になりつつあるこの頃だが、それも受け入れなければならない現実だ。
穴を埋めるのではなく、その穴の部分を大切にしながら、穴が空いた分の心を広げようと思う。
俺は今、大学に通いながら、将来のことについて、あれこれ考えたりしている。
やりたい仕事は何か。なんて考えたりして。
でも、やり甲斐のある仕事ってなんだろう。
何になりたいのか、何を、どこを目指しているのか。
その辺を模索中ってところかな。
友人にも恵まれ、彼女と呼べるかどうかは解らないが、女友達もできて『普通』の大学生活を送っている。
今の何の変哲もない日々を、ありがたく過ごしている。
あの経験がなければ、今でもそのありがたみに気づけていなかっただろう。
だから、深い空に星を見上げると、やはりあの頃に想いを馳せてしまう。
親友より一歩踏み出した関係になるべきだったのかと、ふと過る。
お互い想い合っていたことは解っていたはず。
でもその想いを繋げることはしなかった。
彼女がそう望んだから。
もし恋人同士になっていたら、あの別れの後、俺はどうなっていたのだろう。
それを察しての彼女なりの思いやりだったのか。
あの時はまだ子供すぎて見えなかったことも、今なら感じ取ることができる。
だけど。
何が正しかったかなんて、誰にも解らない。その時は、高校生の俺たちには、それでベストだったんだ。いや、それがベストだったんだっていうことだ。
お読み下さりありがとうございました。
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