14 輪郭
アイツと過ごした日々。忘れられない時間。忘れられないあの日。忘れちゃいけないあの時。忘れたくないアイツ。
それでも年数の経過と共に、あんなに辛く苦しかったことさえも、今は懐かしく思えるなんて、人間ってのは案外強いものなのだなぁと思う。
想い出も想いもだんだんと色あせていくのが怖い。
あんなに想っていたのに、あんなに大切に想っていたのに。
頭に思い浮かべる大切な輪郭はぼやけてきて、すぐにはカタチにできなくなっていく。
目の前からいなくなることで、次第に心の奥にしまい込んでいってしまうのだろうか。
それとも自分でも気づかぬうちに、辛い記憶を忘れようとしているのだろうか。
だけど写真で見るその姿は、懐かしさと切なさを一瞬で連れてくる。
ああ、まだ彼女は俺の中では過去の人ではないのだと。
でもこの想いにもいつかはケジメをつけていかなければならない。
キラキラと輝いていた日々も、切なく苦い日々も、通り過ぎれば『過去』の出来事になってしまうのだ。
そう思うと少し寂しくもあるが、それが『成長』するということなのかもしれない。
いくつもの出来事を乗り越えたからこそ、『普通』の、『普通であること』のありがたさが少しは理解できるようになったのかもしれない。
お読み下さりありがとうございました。
次話「15 心の穴」もよろしくお願いします!




