13 旅立ち
それから3ヶ月後、彼女は旅立った。覚悟はしていたけれど、俺にはかなり堪えた。
どれほど泣いても、涙は涸れることがないものだと実感した。
高校3年生の秋だった。
その日の夜は、空一杯に星が輝いて、『泣かないで』って彼女が空の上から俺に話しかけているように感じた。
すると不思議と心が落ちついたんだ。
「深空、そこにいるのか?」
空に聞いてみる。
「そこに……いるのか?」
心に聞いてみる。
再び見上げる空に一条の輝きが流れ、彼女の返事があった気がした。
それから静かに季節は流れ、時間の経過とともに、また以前と同じ空気を生みだしていった。
変わりばえのない教室。変わりばえのないクラスメイトたち。変わりばえのない日常。
ただひとつを除いては。
最後までの日々を、ありふれた日常を、変わりばえのない日々を過ごすことが、俺と深空にとってどんなに難しいことだったか。
『普通』って簡単にいうけれど、その『普通』はとてつもない確率で営まれているんじゃないかと思う。
そしてそのかけがえのない『普通』は、一瞬にしていとも容易く奪われてしまうものなんだと実感する。
今日の『普通』は明日には普通じゃなくなっているかもしれない。
大切なものほど普段は気づかずに、無くしてしまってから気づくものなんだ。
そう思うと、1日1日『普通』の日々を大切に生きなければと思う。
お読み下さりありがとうございました。
次話「14 輪郭」もよろしくお願いします!