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私、プロポーズされました

ルーシー視点です。

「ルーシーさん!」

「お父さん、どうか娘さんを俺に!」


 なんだか外が騒がしいと思ったら、私との縁談を待つ人でした。




 実家に戻ってきてから3日目、買い物に行けば、お店の人に口説かれ、家にいれば縁談が舞い込み、私意外とモテるんだわ、と喜んだのも最初の1時間だけでした。

 例の手紙と同じく、どうやらライオネル様が私へのアタックを止めていたようで、きっと仕事にも悪影響が出ていただろうことを考えると、感謝しかありません。


 毎日のように舞い込む縁談や交際の申し込みに、どうやって断ろうか考えていました。というのも、全てに対応をしていると1日が終わってしまうのです。

 そしてまた次の日には新たな縁談がやってきます。

 ウンウン唸る私を見兼ねたのか、お父さんが掲示板や家の扉に張り紙をしてくれました。


「明日、我が娘ルーシーの結婚相手を決めさせて頂きます。

たくさんの方にお話を頂いて、ありがたい反面、ルーシー自身大変困っております。

ありがたくもルーシーと結婚したいと思っていらっしゃる方は、明日朝からそのような場を設けますので、我が家までお越しください」 と。


 そして、この有様です。思っていた以上に集まった人々に驚いた父は、二段構えの面接方式で対応しました。

 まずは父や家族との面談。明らかな冷やかしや、既婚者であるのにそれを偽る人などに、断りを入れてくれています。

 家族との面談を通過すると、私との面談です。1人ずつお話をさせて頂いて、最後にお相手を決める、とのことなのですが……。


「こんなにたくさんの人の名前と顔、覚えられないわ」

「今なんと?」

「いいえ、独り言ですわ」


 目の前にいた本日何人目かの縁談相手が部屋から出て、漸くため息をついた。

 あと何人いるのかしら、そう思いながら、扉の開いた音に顔を上げると、そこにいたのはどこか不機嫌な顔をしたライオネル様でした。

 なんで、ここに? どうしてクビになったお屋敷のおぼっちゃまがここに?

 混乱をする私をよそに、ライオネル様はため息を吐きながら、私の前に立ちます。


「……おぼっちゃ、ま?」


 思わずおぼっちゃまとお呼びしましたが、ライオネル様はそのことについては何も言いません。


「なぜか……ルーシーが、クビになったと思い込んでると聞いたんだが」


 ライオネル様がドスの効いた声音で言います。ライオネル様は使用人にも優しく、落ち着いた人なので、こんな声を聞いたのは初めてです。


「思い込んでるのではなく、クビなのでは? 暇を出すと仰いました」

「それは言葉通り、休暇の意味だ。その後君を信じてると言ったじゃないか」

「……確かにそんなこと仰っていたような」


 思い起こせば、ライオネル様の言葉が耳に入っていなかった時、そんなことを仰っていたような気がします。


「わざわざ誤解を解きにいらしてくださったんですか?」

「そのつもりだった。しかし、ハンテーヌ家の前に着けば長い行列、聞けば君に求婚するための列だと言うじゃないか。仕方なく並んだんだ、たっぷり3時間は並んだよ」


 庶民に混じって並ぶライオネル様を想像して、申し訳なさに胸がキュッとなりました。

 そして、ライオネル様の言ったそのつもりだった、という部分に引っかかります。もしかして、私が呑気に縁談なんてしていたので、怒ってしまわれて、やはりクビになるのでしょうか?


「それはまあいい、なるべく他の人と同じ条件にしたかった。改めて言わせてもらう」

「は、はい」

「他の人ではなく、私と結婚してほしい」

「はい!?」


 思わず大きな声が出てしまいました。


「あの、私は庶民の子ですし、ですからうちにはお金もありませんし、何よりライオネル様に釣り合いません!」

「私は一応貴族の子だが、家も爵位も継ぐ予定はない。お金のことは心配するな、王宮騎士団はそれなりに稼ぎはある。そして、釣り合うかどうかは私が決める」


 私の言葉はすべてライオネル様の言葉で丁寧に否定されていきます。流石、ライオネル様です。言い返せません。


「……旦那様と奥様もお許しになりませんよ」


 いくら跡を継がないとは言え、ライオネル様は貴族のお家へ婿入りできる可能性があります。ライオネル様は見た目も良く、優しいので、学生時代にもおモテになったと聞いた記憶があるのです。


「父上と母上は了承済みだ。本当は、来週、武勲章を頂いてからにしようと思っていた。エドワードのせいでいろいろと予定とは異なったが、私は本気だ」


 エドワード様の名前が出たあたりでライオネル様の顔が怖くなりましたが、最後は落ち着いた様子で私に向き合います。

 言い訳ができなくなりました……。

 でも私、ライオネル様をそういう相手として、見たことがないのです。それこそ出会った頃は、まるで友達のように遊びましたけど、使用人としての教育を受けるうちに、振る舞いを学んでいって、それまでのようにはできませんでしたから、私にとってライオネル様は仕えているお家のご子息様です。


「ライオネル様、私は縁談相手としてあなた様を見たことがないです」


 申し訳なさでいっぱいになりながらも、正直に伝えると、ライオネル様は頷きました。


「普通騎士と縁談があったら令嬢だって喜んで受けるものだが、そうやって僕自身を見てくれるところも好きなんだ」


 その言葉に顔が熱くなります。ライオネル様ってこんなキャラでしたっけ?


「ゆっくりでいい、待つから、いつか返事を聞かせてくれ。さて、うちに帰ってくれるか?」

「はい、働かせてもらえるなら喜んで戻ります」


 そう返事をすると、ライオネル様が嬉しそうに笑いました。なんだか漸く元の日常に戻れそうでほっと胸を撫で下ろしました。

 因みに私の家族には、ライオネル様から既に話をしてあって、ライオネル様を応援してくれたそうですよ。そりゃあ、ライオネル様は子爵様のご子息ですもの。

 でも、私の味方は? 私が帰ってきた時に、お父さん、優しい言葉をかけてくれた気がしたんですけど? 気のせいかしら。


ライオネルの一人称は、仕事の時やそれに近いふるまいをする時は『私』ですが、素を見せている時は『僕』です。


遅くなりましたが、ご閲覧、評価、ブックマーク、ありがとうございます。励みになっております!

毎日更新目指して頑張りますので、お時間がある時に評価していただけたら嬉しいです。

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