第9話 学園と倍率
僕は今、3人の先生と今後の授業日程について、話し合っていた。
先生方の自己紹介が終わり、とりあえず僕はホーラン先生に、王立フィオレンツ学園について教えてもらっていた。はっきり言って、僕は学園について何も知らない。どんな学校なのか、入学試験の内容は何なのか、知っていることと言えば、王都にあるということくらいだ。そこで、男爵家の出で、王国の学術研究者であり、学園の卒業生という説明してもらうにはぴったりのホーラン先生に教えてもらうことにしたのだ。他の2人もある程度は知っているようだけど、そこまで詳しいわけではないらしい。あくまでも基本的な武術と魔法を教えに来てくれと、父に頼まれたそうだ。ホーラン先生は色々聞かれても大丈夫なように、下調べをしてくれていたようだ。
「では、入学試験と学園のシステムについてご説明いたします。まず学園の学科についてですが、学術科・武術科・魔術科・総合科・普通科・農務科・家業科の7つの学科がございます。それぞれ、その名の通り学術科なら学問、農務科なら農業を中心に学習していきます。ただし、普通科は学術・武術・魔法を狭く深く均等に学ぶことができます。総合科は普通科では物足りないという者が、学術・武術・魔法を広く浅く学ぶ学科です。学科は将来自分がどんな職に就くのかで選択します。例えば、魔法に長けていて魔法師になりたい者であれば魔術科、家を継ぐ者は家業科という感じです。まぁ、決まっていなければ、自分のステータスでどのような職が向いているのかを確認し、それで選ぶのも一つの手です。」
「いくつか質問しても...」
「はい。もちろんです。」
僕はさっきから気になっていた疑問を問いかけた。
「先ほどから、魔術科とおしゃっていましたが、なぜ魔法科ではないのですか。」
「あぁ、そのことですか。生き物が日々進化するように、言葉も時が経つと変化するのですよ。魔術は今から約2300年程前まで使われてた言葉で、その頃に魔王を倒した英雄が魔術のことを魔法と言っていたのが浸透し、魔法と言うようになったのです。ですが、フィオレンツ学園はエイヴィスティン王国初代国王が創設したもので、初代国王は過去を大切にする御方だったので、魔術科になったのではないかと言われています。」
なるほど、そんな理由があったのか...ンっ、2300年前?それって確かゼウス様の言っていた...関係があるのかな。僕の前々世では魔法と言っていたし、前世では漫画とかによく魔法が登場していたな。魔術や魔導と書いてあるのもあったけど。ということは、前々世のような世界から、その英雄がゼウス様によって転生させられたのか?まぁいいや。
「なるほど、よくわかりました。では、次の質問です。将来に就きたい職によって学科を選ぶと仰いましたが、デスト先生のような冒険者になりたいという人は何科なのですか。」
「ライル様、冒険者のご興味が?」
「まぁ、少しは...」
ホーラン先生は、男爵家の人間だから、様付けは仕方ないのか...でも、一応冒険者についても知っておきたいしな。デスト先生の目がギラギラしてる。さっきまで死んだ魚みたいな目だったのに。
「では、補足で説明いたしますね。冒険者と言っても、色々種類があるんです。剣術に長けた者なら、武術科です。魔法に長けた者なら、魔法師として冒険者になるため魔術科に、といった感じです。そして学園卒業後、デスト先生が務めているATIなどに通うことになります。ATIに通うこと無く冒険者になる者もいますが。」
「結局は自分が何に長けているのかが重要ということですね。」
「まぁそういうことです。」
「ATIに通わない奴の中にも何種類かいてな。一つはもう通わなくてもいい程、技術がある奴。まあ、こういう奴は親が冒険者とかいう奴がほとんどだ。次に通いたくても金が無い奴。冒険者は組合で登録するだけで簡単になれるからな。金が無い奴は大抵冒険者になる。だが、ろくな装備も買えないので、討伐依頼など危険なものはこなせない。だから、通う必要もさほどない。で、一番厄介なのが、自分が天才だと思い調子に乗って、通わない奴。こういう奴は大抵討伐依頼でミスをする。」
横から、デスト先生が詳しく教えてくれた。さすが、そこで働いているだけはある。冒険者組合に登録する時はATIに通うほうがいいのかな。
「まぁ、冒険者については置いといて、学園の話に戻りますね。」
「あぁ、すいません。お願いします。」
「次に試験内容ですが、学科によって変わります。学術科は学力を測るため筆記テストです。武術科は試験官と1対1で試合です。魔術科はどれくらいの魔法を使えるのかを検査します。普通科・総合科は学術科・武術科・魔術科の試験を全て実施します。他にもある可能性がありますが...農務科は農業技術の実技試験と、農業の知識を測る筆記試験です。家業科はそれぞれの家業の技術を測る試験です。ではとりあえず、ライル様のステータスではどの学科が向いているのかを調べましょう。失礼します。〖鑑定Ⅱ〗」
[名前] ライル・ベリル・アドルクス
[年齢] 5
[種族] 人
[職業・称号] アドルクス公爵家長男
[Lv] 11
[HP] 156
[MP] 174
[ATK] 169
[DEF] 182
[SP] 11
[魔法適性]
火属性 闇属性
時空魔法
僕のステータスを鑑定したホーラン先生は、唖然としていた。ちょっと強めに設定すぎたかな?ホーラン先生が33歳でLv13なのに、僕が5歳でLv11はやりすぎたかな。周りに同じくらいの年の子があまりいないからわからないんだよな。あっ、ホーラン先生が動き出した。結構長い間固まっていたな。
「すごいですね。その年でそのステータス、いったいどうやったのか。それに2属性と1魔法持ちとは...スモーツ様がご自慢なさる理由がよくわかりました。このステータスであと学力が良ければ、総合科でいいでしょう。これからしっかりと訓練すれば、学園トップクラスの実力の持ち主となるでしょう。」
「ありがとうございます。そうなれば嬉しいですね。」
何とか、少し強いくらいだということで収まったな。もう少し弱めに書き換えるべきだったかな。まぁ、今となってはもう遅い。終わったことは気にしない、気にしない。それに、トップクラスということは、このステータスより上の奴もいるということだよな。そいつ等には注意しておかないと。
「では次に、学園のシステムについてです。王立フィオレンツ学園は、完全序列制という制度をとっています。試験などの成績に応じて、ポイントが与えられます。学園内でポイントは最重要で必須品です。序列はもちろんのこと、学園内ではポイントさえあれば何でもできます。ポイントを消費することで、買い物もできます。序列が上になればなるほど権力も上がります。生徒の内の上位10人はそれこそ教員を上回る権力があるともいわれています。が、序列が自分より上の者はわからないので、注意が必要です。ちなみに、教員も生徒と同じ序列に入っています。つまり、教員より上の順位になれば、その教員より権力が上になります。ただし、教員の中にも序列に含まれない人物が何人かいます。学園の研究者や警備員がその対象です。教員の序列は主にその人のステータスです。なので、普通は教員より生徒の序列が高くなることはありませんが...最初にポイントが手に入るのは、入学試験です。ですので、入学試験では、できるだけ多くのポイントを稼ぐようにしてください。」
「わかりました。できるだけ頑張ります。そのためにも、これからよろしくお願いします。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。で、最後に学習プランですが、明日から9時~12時→武術、13時~16時→魔術、17時~20時→学術で、入学試験までの約3年間を予定しております。ちなみに試験日程は、農務科・家業科が、弥生1日~5日。学術科・武術科・魔術科が、6日~10日。普通科・総合科が11日~20日です。」
今世の時間経過は50秒=1分、100分=1時間、30時間=1日、5日=1週間、6週間=1ヶ月、12ヶ月=1年だ。1日の授業時間が3時間×3というのは、かなり長いな。それに、入学試験が各学科何日にもわたっているということは、かなり受験者が多いのかな?
「入学試験が何日にもわたって行われるというのは、どういうことなのですか。」
「あぁ、それは学園の倍率はかなり高いのです。昨年の倍率は、学術科・武術科・魔術科が定員120人のところ、2.3倍、3.1倍、3.5倍で、普通科・総合科・農務科・家業科は、4.15倍、4.93倍、1.79倍、2.05倍と5倍近いところまであります。ここまで倍率が高いのは、王立フィオレンツ学園か国立レーナンス学院くらいですが...」
「すごいですね。まぁ、できる限り頑張りますよ。」
はぁー、これから大変そうだな...