第7話 瑞獣と三足烏
目の前に現れたその鳥は、僕を見下げながらそう言った。
「そうです。あなたは鳳凰ですか?」
「えぇ、私は瑞獣である四霊の1体で、鳥類の長である鳳凰です。あなたが本当に私を喚び出したのですか。」
「そうです。あなたと、ここにいる白虎を召喚しました。」
それを聞くと、鳳凰はとても驚いたようで、目を見開いていた。しばらくして落ち着くと、
「そうですか。白虎を喚び出すことができたなら、私を喚び出すことができてもおかしくないでしょう。それにしても白虎、久しぶりですね。」
「あぁ、そうだな。確か前に会ったのは、2000年くらい前か。」
「えぇ、2200年前です。しかし、また人族に召喚されるとは思っていませんでしたよ。」
「そうだな。しかもこんなに幼い子供にな。私が、他にも喚んだらどうかと言ったら、まさかお前を喚び出すとはな。末恐ろしい御方だ。」
「その話し方ということは、この方の従魔になったのですね。」
「あぁ。あれ以上続けていたら、どうなるかわからなかったのでな。降参した。」
「なるほど...なら、いいでしょう。あなたを、私の主と認めます。さぁ、どうぞ名前をお付けください。」
こちらに向き直った鳳凰はそう言った。あれ、天蝎となんか話してると思ったら、いきなり認められた。2200年前か。もしかしたら、ゼウス様の言っていた人かもしれないな。また今度聞いてみよう。
また、名前決めなきゃいけないのか。苦手なんだけどな。名前、名前、名前...そうだ。
「紅葉、でどうだ。」
「紅葉、良い名だと思います。ありがとうございます。」
「あぁ、これからよろしく。」
良かった。もう、名前考えるの苦手だ...どうしても和風な感じの名前になってしまう。まぁ、前世での紅葉は、だんだん色が変わって美しいから、五色絢爛な鳳凰には良いだろう。
「じゃあ、さっそくお手伝いしてもらっていいかな?」
「はい。何をすればよろしいでしょうか。」
「えっと、本探しを手伝ってほしいから、何体か鳥を喚び出したいんだよ。」
「では、私の眷属を喚び出してはいかがでしょう。」
「なるほど、紅葉の眷属なら従ってくれそうだな。」
「はい。主様の魔力が充分に残っているのであれば、一気に喚び出しましょう。」
「MPは大丈夫だけど、どうやって喚び出すんだ?」
眷属の喚び出し方なんて、前々世では見たことも聞いたこともなかったぞ。
「喚び出し方は普通の【召喚魔法】とほとんど変わりません。とりあえず、地面に10ⅿくらいの魔法陣を描いてください。」
「あ、あぁ、分かった。」
僕は、言われた通りに10ⅿ程の魔法陣を描いた。結構疲れた。
「では次に、詠唱を...そうですねー、主様、こちらに。」
「ん?こうか?」
紅葉は頭を下げて、僕の額に自分の額をつけた。そして、
「〖脳内情報伝達Ⅷ〗」
紅葉がスキルを発動すると、僕の頭の中に何かが流れてきた。
「なんだこれ。頭の中に何かが...」
「私の知識を主様の頭に流しました。これで、唱えられるはずです。」
便利なスキルだな。でも本当にできるのかな。やってみよう。
「鳥類を統べし鳳凰に従う鳥共よ、我は汝らの主を従わせし者、闇の霧を払いて、姿を現せ 二十段魔法〘上級複数召喚〙」
ほ、本当に唱えられた。二十段魔法ということは、結構な大物なのかな?そんなことを考えていると、霧が晴れ、
「鳳凰様、お久しぶりにございます。」
そういう渋い声が聞こえてきた。召喚された鳥は全て三足烏で、黒・白・赤・青・黄の5体だった。さっきの声は黒の三足烏だったようで、他の4体より少し前に出ていた。此奴がリーダー的存在なのか?
「えぇ、久しぶりですね黒烏。それに、白烏に赤烏、青烏に黄烏。お元気でしたか?」
「はい。鳳凰様もお元気そうで何よりです。して、其方の御仁は?」
「新たに私の主となった...そう言えば主様、お名前をまだ伺っていませんでしたね。」
「そういえば、私も伺っておりません。」
「えッ、そうだっけ、まぁいいや。僕の名前はライルだ。ライル・ベリル・アドルクス。」
「ライル様ですか。なるほど。さすがは我が主から主と認められた御方。オーラが凄まじいですね。このようなものは見たことがありません。」
え、何?オーラ?そんなのあるの?やばいじゃん。そのオーラっていうのが見える人には、ステータスばれるんじゃないの。
「ね、ねぇ、オーラって何?」
「えっとですね、オーラというのは、その人物が持つ力、つまり魔法適性や魔力量、エネルギーのことです。」
「なるほど。そんなのがあるのか。それは誰でも見えるものなのか?」
「いえ、そういう修行をしたものにしか見ることはできません。」
「じゃあ、君ら全員そういう修行をしたってこと?」
「はい。上位の召喚獣は大抵見ることができます。そうしないと、召喚された際にどのような相手なのかわかりませんからね。」
「オーラを消すことはできる?」
「はい。力を制御することができ、尚且つ、そういう修行をした者よりも隠蔽能力が長けていれば、見えなくなるかと思います。」
「ちなみに、君らには僕のオーラはどんな風に見えているの?」
「えっとですね、それが...何しろ初めて見るようなものでして...」
天蝎が言葉を濁らせていると、紅葉が口を開いた。
「私がお答えしましょう。」
「あぁ、お願い。」
「まず、オーラはそれぞれの魔法適性によって、色が違います。火属性の適性持ちだと赤、水属性では青、という様な感じです。そして、2属性持ちなら2色見えます。3属性持ちなら3色です。さらに、魔力量はオーラの大きさで分かります。魔力量が多い者は大きく、少ない者は小さいのです。しかし、主様の場合は...黒なのです。黒は、どの適性でもありません。しかも、とてつもなく大きいのです。さらに、黒烏達を召喚したのに、ほとんど減っていない。主様、あなたはいったい何者なのですか。」
黒かー、全適性持ちだから全部の色が混ざったのかな?それとも、これはゼウス様の配慮なのか?
「まぁ、そういうわけで、私が主と対戦した時はどのような方なのかわからなかったわけです。」
「そういうことだったのか。オーラが見えていても何かわからなかったのか。」
「そういうことです。」
僕が、紅葉の質問の返答に困っているのに気付いたのか、天蝎が助け船を出してくれた。
「さっきの、紅葉の質問には、そのうち答えるよ。僕もまだよくわかっていないしね。」
「そうですか。了解しました。」
「さて、落ち着いたのでそろそろ書庫へ行ってもいいかな。」
「はい。もちろんです。」
「黒烏達も来てくれるか?」
「ハッ、もちろんにございます。我等が主、鳳凰様の主であるライル様は我らが主です。何なりとお申し付けください。」
「ありがとう。あっ、それと、これは全員にだけどそんなに畏まらなくていいよ。もっと軽くいこうよ。」
「しかし...」
「いいって、僕まだ2歳だし、硬いとこっちも気が滅入るし...」
「わかりました。では、これからは少し砕けた感じで行かせてもらいます。」
「お願いね。」
全然砕けてないけど、仕方ないのかな...僕は皆を連れて書庫へと向かった。
そういえば、皆のステータスってどんな感じなんだろう。「〖鑑定Ⅹ〗」っと。
[名前] 天蝎
[年齢] 5262
[種族] 神獣白虎
[職業・称号] 西方を守護する獣
[Lv] 301
[HP] 79698
[MP] 96785
[ATK] 109865
[DEF] 63210
[SP] 46
[加護] 富と収穫の神プルートスの加護
[魔法適性]
土属性 光属性 雷属性
神聖魔法 精霊魔法
[固有ユニークスキル]
領域守護
[スキル]
〖加速Ⅷ〗〖爪刃拳Ⅶ〗〖攻撃力上昇Ⅹ〗
[名前] 紅葉
[年齢] 5252
[種族] 瑞獣鳳凰
[職業・称号] 鳥類の長
[Lv] 298
[HP] 77698
[MP] 102032
[ATK] 99876
[DEF] 61897
[SP] 25
[加護] 天空神アイテールの加護
[魔法適性]
火属性 水属性 光属性 闇属性 雷属性
神聖魔法
[固有ユニークスキル]
絶対忠誠
[スキル]
〖翼刃撃Ⅷ〗〖魔法無詠唱化Ⅹ〗〖脳内情報伝達Ⅷ〗
[名前] 黒烏・白烏・赤烏・青烏・黄烏
[年齢] 1642
[種族] 三足烏
[職業・称号] 瑞獣鳳凰の眷属
[Lv] 238
[HP] 53456
[MP] 79806
[ATK] 69852
[DEF] 48621
[SP] 209
[加護] 瑞獣鳳凰の加護
[魔法適性]
土属性 闇属性 無属性
[スキル]
〖翼刃撃Ⅵ〗〖魔法無詠唱化Ⅶ〗〖補助技術向上Ⅷ〗〖敵意感知Ⅷ〗
すごいな。僕もすぐ追いつかれるかもな。黒烏・白烏・赤烏・青烏・黄烏は、全員全く同じステータスだ。皆のステータスだと、敵う人はそういないだろう。
さて、そろそろ書庫へ着くな。
「皆、ここが書庫だ。この中から今からいう本を探してくれ。・・・」
そうして、日が暮れまで、僕たちは書庫へこもっていた。
神はギリシア神話から名前をとっていますが、異なる点はあります。ギリシア神話では、天空神は宇宙を創造した天上の至高存在者ですが、この物語では、単に天空を司る神として登場させる予定です。あくまでも予定です。他にも神々が登場するかもしれませんが、名前のみをギリシア神話から拝借しているだけですので、この物語内の役職は異なることになります。




