第2話 神様と固有スキル
神々しい光とともに現れた人物は、見るからに【神様】という感じのお爺さんだった。白髪白髭でとても優しそうな顔をしていた。
「やぁやぁ。お主があの婆さんが認めた少年か。婆さんから話は聞いておるぞ。【願い石】をもらったんだってのう。それでここへ来たわけか。」
なんだかお爺さんが一人で話して一人で納得しているようだけど、何の話をしているんだ。婆さん?【願い石】?何のことだろう。というかここはどこなんだ。あなたは誰。そんなことを考えていると、再びお爺さんが口を開いた。
「なんだ?婆さんから話を聞いていなかったのか。あの婆さん.....あぁ、すまんすまん。では改めて、ゴホン、儂は神ゼウスじゃ。そしてここは、神々の世界【神界】とでも言っておこうか。その内の儂の空間の応接間みたいな場所じゃ。婆さんというのは、お主が助けた山奥に住んでる婆さんのことじゃ。そして、【願い石】とはお主が今、手に握っている石のことじゃ。」
目の前にいる自称神様は、しばらく頭を抱えてから僕の疑問に答えてくれた。「あの婆さん、しっかりと説明をしておけと言っておるのに」そんなことを呟いているこのお爺さんは、僕の考えを読むことができることから只者ではなのは間違いないのだろう。僕は握っていた【願い石】を見た。【願い石】の色は白くなっていたが、形状からしてあのお婆さんにもらった石だろう。
しかし、新たな疑問が生まれた。なぜ僕はその【神界】とやらにいるんだ?
「あぁそれはな、お主が握っておる【願い石】はのぉ、どんな願いでも1度だけ寝ている間に叶えることができる道具なのじゃ。お主が寝ている時に異世界のことを考えておったのじゃろう。それで異世界への転生が願いとなってここへ来たということじゃろう。しかしお主、転生は初めてではないの。だが、お主前はここには来ておらんのぉ。【怨念転生】というやつじゃろうか。」
怨念?転生が願い?.....あぁ、前世のあのよくわからなかった感覚のやつか。それが、【怨念転生】に繫がったってわけか。でも、夢で転生を願った覚えはないけどなぁ。
「願わなくても、【願い石】を持って寝れば、考えていることが願いになるのじゃ。あと、【怨念転生】については儂もよく分からんのじゃ。」
そうなのかぁ。自称神様でもよくわからないなら考えても無駄だろう。【怨念転生】のことは忘れよう。でも、今の生活が嫌ってわけじゃないから、
「元の世界へ戻るにはどうしたらいいのですか。」
この神界に来て僕が初めて発した言葉だった。今までは、自称神様が僕の思っていることを読んで、答えてくれていたから、何も言葉にしていなかったのだ。それを聞いて、自称神様は困ったように長い白髭を触りながら考え込んでいた。もしかして...
「あぁ、お主の考えている通り元の世界に戻る方法はないんじゃよ。」
やっぱりかぁー。異世界転生や転移、召喚が題材のライトノベルって大抵の場合何故か帰る方法ないんだよなぁー。いざ、自分がこの立場になると理不尽だな。でも仕方ないよな、自称神様がないって言ってるんだから本当に無いんだろう。今回の人生はなかなか良かったんだけどなぁ。
「ま、まぁ、あの婆さんが説明しなかったことも悪いから、転生するときに幾つかスキルをやろう。」
「ほ、本当ですか。ありがとうございます。」
少し落ち込んでいた僕を見て、自称神様は慌てるようにそう言ってくれた。前々世は、何にもできなくて最悪な人生だったからなぁ。少しでもスキルがもらえるならあんなことにはならないだろう。
「落ち着いたようじゃのぉ。では、お主のこれからについていろいろと説明するとしよう。」
そういうと、ゼウス様は手を少し振った。すると、何もなかった【神界】の応接間に高そうな装飾の施された椅子が2つとテーブルが現れた。少し驚いたが、これが神様の【神力】というものなのだろう。前々世の魔法にも似ているが、どことなく違う気がする。この人物は、どうやら本当に神様のようだ。
ゼウス様に勧められ椅子に座ると、次はこれまた高そうなティーポットとカップ、それにお茶菓子が現れた。もう驚かないぞ。差し出されたお茶を飲んでいると、
「では、信用してもらえたようじゃし、そろそろ今からお主の行く世界について話していこうかのぉ。・・・・・」
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ゼウス様の話をまとめると、
・Lvというものがあり、Lvを上げるには経験値が必要
・視界に前世のゲーム画面のような、自分のステータスなどが見える
・スキルは、Lvアップ時に獲得するスキルポイント(SP)を消費して取得する
・魔法の種類や詠唱は前々世とほとんど変わらないが、前々世より魔法が発達していない
・幼い時のほうが、獲得経験値が多い、ステータスも上がりやすい
その他は前々世とほとんど変わらないということらしい。「その他でわからないことがあれば、向こうで調べてくれ」ということだった。
そして、頂けるスキルは【固有スキル】と言って、SPでは獲得できない、生まれながらにして持つスキルだそうで、極少数の生物しか持っていないそうだ.....ありがたい。その固有スキルは、
・獲得できる経験値が大幅に増加する固有スキル〖獲得経験値超増加〗
・獲得できるSPを大幅に増加する固有スキル〖獲得SP超増加〗
・ステータスが限界に達してもそれ以上にステータスを上げることのできる固有スキル〖限界突破〗
・ありとあらゆる攻撃(罠を含む)から、適用者を守る固有スキル〖絶対防御〗
だという.....チートすぎじゃないか?
確かに【神様】なら少しは強くしてくれるのかなとは思っていたけど、まさかここまでしてくれるとは。
「強くて困ることはないじゃろぉ。ここに人が来たのは久しぶりじゃからなぁ。少しいいものをつけてやったぞい。儂が送り出す以上、簡単に死なれては困るしのぉ。」
久しぶりだからってこんなにもらってもいいのかなぁ。確かに強くなれるなら前々世と同じようなことにはならないだろけど...
「まぁ、遠慮せずに受け取れ。あぁそれと、久しぶりといってもこちらの感覚じゃから...前にここに人が来たのは、かれこれ2300年ほど前じゃしのぉ。其奴ももう生きてはおらぬしのぉ。」
2300年が久しぶり程度って...ま、そういうことなら遠慮せずに頂こう。
「では、そろそろ良いかのぉ。お主は前々世でひどい目にあったようじゃからのぉ。固有スキルの他にもいろいろと手配しておこう。」
「何から何までありがとうございます。このご恩は忘れません。本当にありがとうございました。」
これだけしてもらって、更に他にも色々としてくれるのか。本当にありがたい。
「うむ。ではな。しっかりと生きるのじゃぞぉー。」
そうゼウス様が言い終わると、いきなり地面に穴が開いた。僕はそこにゆっくりと落ちて行き、やがて意識を失った。こちらを覗きながら手を振る笑顔のゼウス様が神界での僕の最後の記憶だった。
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そうだった。また転生したんだった...ゼウス様の話では自分のステータスとかが見えるそうだけど...あ、これか。僕は自分の視界の左上にLv1と書かれた白い棒と、HPと書かれた緑の棒、MPと書かれた青い棒、それと、左下に丸いボタンのようなものが見えていることに気が付いた。
こんなものがこの世界の人々には初めから見えているのか。頭を動かして、視界が変わってもステータスなどは動かず、ずっと見えていた。いったいどんな仕組みなのだろう。そんなことは置いといて、とりあえずこのボタンが何なのか確認しよう。そう思い、押してみると...