第17話 ロック鳥と加護Ⅹ
遅くなって申し訳ありません。
やはり、ロック鳥は大きかった。予想以上に大きかった。初めに出会った、後ろにいる3体や、途中にいた奴等もそうだが、今、目の前にいるのはそれ以上に大きい。〖恐怖耐性Ⅹ〗がなければ、まずかったかもしれない。逆に言えば、このスキルがあったからこそ、今ここで立っていられるのだ。正直、紅葉が「長を呼びに行かせますか?」とか聞いてきた時はどうしようかと思った。あそこで話を振られるとは...紅葉があんな風に振舞っているのに、主の僕が間違った振る舞いをしたら、示しが付かないよ。あれで良かったのかな?
まあ、そんなことを今考えてもどうしようもない。こうして目の前にロック鳥の長がいることだし、聞きたかったことを素直に聞いてみよう。
「どうも、初めまして。紅葉からの紹介もありましたが改めて。瑞獣鳳凰と神獣白虎の主の、ライル・ベリル・アドルクスと申します。どうぞお見知りおきを。」
「これはご丁寧に。私はこの部族の長、ルフと申します。ライル・ベリル・アドルクス様におかれましては...」
「ライルで構いませんよ。それに、堅苦しい挨拶は不要です。」
「主様!」
ンッ?何かまずかったかな?敬語にしたのがおかしかったのかな?それとも敬語だと思っていたけど、そもそもこの言葉自体が間違っているとか?
そんな僕のようすを感じ取ったのか、紅葉が続けて言った言葉でようやく理解することができた。
「良いのですか!?この際です。挨拶は良いとしても、お名前で...人という種族は、家名で呼ぶものだったと思うのですが。」
あぁ、そういうことか。別に気にしないんだけどな。公爵家だからと言って特別待遇されるのが嫌だったから、名前にしたんだけど、冷静になって考えてみると、魔獣がそんなこと知るわけないよね。
「別に良いじゃん。僕は気にしないよ。」
「ですが...」
紅葉はまだ何か言いたそうだったが、我慢してくれたようだ。
「すみません。続きを。」
「えッ、あッ、はい。ライル様、本日はどういったご用件で?」
恐縮しきってはいるが、どうやら堅苦しいのは無しにしてくれたようだ。ならもう、砕けた感じで話してもいいよね。
「うん。ちょっと訳ありで、強い魔獣を探してたんだよ。それで、紅葉に聞いてみたら、ロック鳥のことを教えてくれたんだよ。」
「なるほど。それでは、少しロック鳥という種族について、お教えしておいたほうがよろしいでしょうか?」
「あぁ、お願い。」
そうして、ルフはロック鳥について語り始めた。
「ロック鳥は、群れで暮らしています。極稀にはぐれもおりますが。我々の部族は、ここ一帯の森林地帯、人の言うところの【怠惰の森林】を縄張りとして暮らしています。数百年前にこの洞窟に移りました。以前は、他の洞窟を住処としていたのですが、崩落してしまい、ここに移り住むことになったのです。」
なるほど。紅葉達が探しに行ってくれたのは、そういうことを考えて、だったのか。さすが紅葉、気が利くな。
「我々ロック鳥は、最も長く生きている者を長とし、「ルフ」と呼びます。他の者達も、生まれてきた順に地位、役目が与えられています。そこに居るノーガ、ヒーガ、フーガ等の様に、若い者はまだ役目は有りませんが。」
ノーガ、ヒーガ、フーガ?どうやらこの部族には、〇ーガ、という名前に規則性があるみたいだな。
「少し質問してもいいかな。」
「えぇ、勿論です。」
「さっきから「部族」って言ってるけど、ここ以外にもロック鳥がいるの?」
「はい。我々の部族を合わせて、全部で4つの部族が存在します。元々は7つの部族が存在していたのですが、様々な理由で3つの部族が消滅しました。」
「なるほど。ところで、4つの部族があるって言っていたけど、それぞれどの位の数がいるの?」
「他部族の詳細な情報は存じ上げませんが、我々の部族は私を含め31。他も同じ様なものかと思います。」
へぇー。結構な数いるんだな。全部で120体位か。
「色々教えてくれてありがとう。ところで、この辺りで骨のある狩りがいのある奴っている?」
「そうですねぇ。ライル様と同等以上の者等、存在しないと思いますが、この辺りでの強者といえば、20年程前にこの部族から追放したロック鳥くらいでしょうか。」
「えッ、さっき言った通り、今から狩る予定なんだけど、ロック鳥を狩ってしまっていいの?」
「はい。その者は我が部族の掟を破り、同胞を殺めた者。本当は死罪にしたいところなのですが、掟の中に「同胞を殺めるべからず」というものがあり、そういうわけにもいかず、追放という形になってしまったのです。ですからライル様、狩りをするのでしたら、その者を見つけたら、殺しても構いません。亡くなった者は、我が部族の中では明るく、元気で、人望の厚い者でした。掟さえなければ、その事実を知った時に誰もが、奴を殺そうとしたでしょう。どうか、あの者の仇を。」
「あぁ、分かった。考えておくよ。」
そう言って、僕達一行はロック鳥の縄張りを後にした。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽ ライル一行が去った後のロック鳥達 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「結局何だったんだ、あの少年は?」
「何でも、あの瑞獣鳳凰様の主らしいぜ。」
「それだけじゃない。神獣白虎様の主でもあるらしい。」
「へぇー、そりゃ凄い大物が来たもんだな。」
「どうやら、強者を求めてここに来たそうだ。」
「なるほど。で、瑞獣や神獣を従えるほどの御方が、手こずるほどの強者っているのか?」
「それなんだが、ルフ様が20年前のあれの始末をお願いしたらしい。」
「おぉー。それは有り難い。彼奴は何をしようとも決して許されないことをした。正直、俺が殺っちまいたかったくらいだ。」
「もおその辺にしておこう。彼奴のことなんか思い出したくもねぇ。」
「そうだな。俺等の大切な仲間を殺めた奴なんて...」
「昔は良い奴だったのにな。」
「何時からだろうな。彼奴が変わっちまったのは...」
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「それで主様、どうなさいますか?ロック鳥が言っていた者を探しますか?」
「そうだなぁ、元々今日喚び出したのは、君等の能力調べの為だったけど...まぁ、いいか。ロック鳥の長にも頼まれたし、探すか。」
「では、我々がまた探して参ります。」
「いや、今回は僕が探すよ。」
「ですが...」
「僕も自分の力を確かめてみたいんだ。」
「承知致しました。」
何か紅葉がしょんぼりしている気がするけど、仕方ない。自分の力を知ることは大切だしな。
そうと決まれば、すぐ実行だ。僕は進むのを一旦止め、空中で止まった。それに伴い紅葉達も止まる。
「<気配察知>」
僕がそう発すると、僕の身体が淡い光に包まれ、それは瞬く間に、【怠惰の森林】全体へと広がっていった。
しばらくすると、5㎞程先に光の柱が現れた。
「見つけたよ。行ってみよう。」
「えッ、あッ、承知しました。」
何故か驚いている紅葉達と共に、光の柱の方へ向かって再び進みだした。
「主様、一つ質問があるのですが。」
「何?」
「先ほどの<気配察知>は、加護によるものですか?」
「そうだよ。」
加護とは勿論、ゼウス様の加護のことだ。2歳の時には既に、Ⅳまで加護レベルが上がっていた僕だが、それから5年が経ったのだ。レベルの限界値Lv999を超え、加護レベルも最高のⅩまで上がっていた。種族も既に、人ではなくなっている。何年か前にLv900を超え、半神となったのである。試しに前に鑑定した時は、
<最高神ゼウスの進化型加護Ⅹ>
通常の加護と違い、その名の通り進化する<加護> 加護レベルがⅠ~Ⅹまであり、Lv100で加護レベルⅡに進化し、Lv900で加護レベルⅩに進化する 現在の加護レベルはⅩ(最高) 加護レベルが上がるほど、その効力が上がる 加護レベルⅤになると[種族]が「半人」となり、加護レベルⅩで「半神」となる 「半人」になると、寿命が1000年ほどになる 「半神」になると、不老不死となり、【神力】が使えるようになる 他にも、加護レベルが上がると、テレパシーを送れるようになったり、五感が鋭くなるなど、色々な効果が現れる 加護レベルⅩでの効果は、
<罠感知> 常時発動 仕掛けられた罠を感知することができる
<毒耐性(極)> 常時発動 どんな毒も完全に無効化する
<気配察知> 敵意ある者の常時察知 他任意発動 設定可能
<魔法強化> 任意発動 設定可能
<精神感応> 任意発動 情報の伝達が知覚手段を用いずできる
<予知(極)> 適時発動 危険が迫った時などに発動される
<神眼(極)> 任意発動 全てを見通すことができる
・・・
他にも幾つかあったが、大体こんな感じだ。役に立ちそうなものが幾つもあった。<神眼>は神力の1つのようだった。
私(作者)は、ストックせず書けたら投稿、という形ですので、今回のように投稿が遅れることがあります。できるだけ早く投稿できるよう善処しますので、これからもよろしくお願いします。
次回投稿は少し遅くなります。