第14話 チーム構成と従魔再び
僕は今、ワーライドの城壁の外に出ていた。ある程度大きな都市には、城壁がある。これは、言うまでもなく、魔物たちの侵入を防ぐためだ。そのため、重要な都市になればなるほど、城壁は強固になる。それは、ワーライドも例外ではない。もちろん、一番頑丈に作られているのは王城もあり、一番大きな都市である王都だろう。しかし、この都市も、エイヴィスティン王国で5番目に大きい。なので、城壁はかなり頑丈に作られている。しかも、ワーライド周辺は空を飛ぶ魔物の多発地帯。城壁は普通より高めに作られている。
飛ぶ魔物は、遠距離戦が不得意な者からすると厄介な敵だ。飛ばれていては、攻撃の仕様がない。そのために、冒険者などはチームを組んで行動する。もちろん、単独もいる。僕がその例だ。理由は様々だろう。1人の方が行動しやすい、人と行動するのが苦手、集団に馴染めない・・・。そういったことで、ソロで行動する者もいる。しかし、一般的には、チームを組むことを勧められる。なぜなら、1人では対処できない場合でも、人数がいれば何とかなるかもしれないからだ。
冒険者がチームを組む際は、3・4人組が多い。それは、バランスの良いチームを作ろうとするとそうなるからだ。
1人目が近接戦闘型、剣士や拳闘士などだ。2人目が遠距離攻撃型、魔法師や弓使いなどがこれにあたる。3人目が偵察・支援型、魔法師やシーフ、忍者などだ。3人組ならこんな感じだが、4人目がいるチームは、前の3つの中からもう1人か、修理・生成型の薬師や鍛冶師、錬金術師などだ。
どのチームもバランスが取れていないとすぐに全滅してしまう。仲間割れの多いチームも全滅することが多い。仲間割れを防ぐという意味で、家族でチームを組む者たちもいる。ソロで行動する者は、今のようなことを全て1人でできないといけない。しかし、どれだけ凄い能力を持とうとも、不意を突かれる危険もある。そういうわけで、ソロは少ないのだ。
話を元に戻すが、城壁は小さな村や集落にはない。あっても、柵くらいだ。それが原因で、小さな村ではかなりの頻度で、魔物が出現する。被害もそれなりのものだ。これはどこでも同じで、大きな都市と違い、村には魔物を掃討できるほどの者がいないことも原因の一つだ。
例えば、A村とB村という2つの村があったとする。A村とB村は、人口も、環境も、ありとあらゆるものが同じだった。違いといえば、住んでいる人の能力だけだ。A村には戦闘に関しての知識を持った者が一人もおらず、対してB村には、指揮能力の高い者が一人いたとする。村人個人の戦闘能力を同じとすると、どちらの村が長く生き残れるか、と言われると後者だろう。極端な話、どれだけ戦闘に不慣れな者達の集まりでも、有能な指揮官が的確に指示を出せば、指揮官が無能な一軍隊にも匹敵するだろう。
別に指揮官でなくても、魔物を返り討ちにできるような強者がいれば、村は守られる。しかし、そのような強者がいる村は数少ない。それは、強者は国に仕える、もしくは冒険者になる、などが一般的だからだ。そちらの方が稼げるのだろう。故郷を守ろうと村に残っても、金が無いことには生きて行くことはできない。
もちろん、村でも食べていくには問題ないくらいは稼げるだろう。しかしそれは、畑などの土地を持っている者のみだ。そういう者が少ないからこそ、孤児などが増える。孤児は孤児院などで育てられ、ある程度稼げるようになったら、孤児院を出て独り立ちする。たまに孤児院に戻ってきて、手伝いをする者などもいる。孤児でも才能のある者は、国が引き取ることもある。引き取られた者は何不自由なく暮らし、将来も約束されている。所詮この世は金か才能かなのだ。
ワーライドにも孤児院があり、多くの孤児たちが生活しているそうだ。残念ながら、国が引き取るほどの才能を持った者はいないという。そういう者が出た孤児院には、国からの支援金が入る。そうすれば、孤児もある程度良い食事を摂ることができるだろう。国からの資金は孤児院などにはかなり少ないそうだ。できれば僕も支援したいところだが、僕個人の財産はあまりない。冒険者活動は、個人資産を増やすためにも使えるな...
狩りをしようと思って街を出てきたは良いが、具体的に何が居て、何が強くて、何が高く売れるのか、さっぱりわからない。そこで、街から離れた所で、あいつ等を喚び出してみることにした。
「〘特級召喚〙紅葉、〘上級複数召喚〙黒烏、白烏、赤烏、青烏、黄烏」
僕が、【召喚魔法】を発動させると、辺りに霧がかかり、6つの影が姿を現した。そして、
「お久しぶりでございます。主様。随分ご立派になられましたね。」
「あぁ、久しぶり。約6年ぶりくらいだからな。成長くらいするさ。紅葉たちは元気だったか?」
「はい、それはもう。主様に少しでも近づけるよう、毎日修行しておりました。」
「すごいな。ステータス見ても良いか?」
「はい、ご自由に。」
そう、僕が喚び出したのは、従魔である紅葉と三足烏の皆だ。僕もある程度は成長したとは言え、まだ7歳。体長3ⅿもある紅葉や2ⅿ近い三足烏達は威圧感が半端ない。とはいえ、皆、姿を現した時は頭を下げてくれていたので、少し目線を上げるだけで済んだのだが。おっと、そんなことよりも皆のステータスチェックだな。「〖鑑定Ⅹ〗」
[名前] 紅葉
[年齢] 5258
[種族] 瑞獣鳳凰
[職業・称号] 鳥類の長
[Lv] 326
[HP] 80865
[MP] 110005
[ATK] 143316
[DEF] 68562
[SP] 93
[加護] 天空神アイテールの加護
[魔法適性]
火属性 水属性 光属性 闇属性 雷属性
神聖魔法
[固有ユニークスキル]
絶対忠誠
[スキル]
〖翼刃撃Ⅷ〗〖魔法無詠唱化Ⅹ〗〖脳内情報伝達Ⅷ〗
[名前] 黒烏・白烏・赤烏・青烏・黄烏
[年齢] 1647
[種族] 三足烏
[職業・称号] 瑞獣鳳凰の眷属
[Lv] 264
[HP] 69122
[MP] 90087
[ATK] 75439
[DEF] 59721
[SP] 355
[加護] 瑞獣鳳凰の加護
[魔法適性]
土属性 闇属性 無属性
[スキル]
〖翼刃撃Ⅵ〗〖魔法無詠唱化Ⅶ〗〖補助技術高上Ⅷ〗〖敵意感知Ⅷ〗
うおッ、大分上がってるな。ものすごい修行してたんだろうな。どんな修行をしていいたのかと、考えていると紅葉が訝しげに尋ねてきた。
「ところで主様、初めてお会いした時よりもオーラが減っていて...というか、普通の人間程度のものになっているのですが、制御できるようになられたのですか?」
「あぁ、そのことか。それもあるけど、この【制御腕輪】の効果だよ。」
「この腕輪がですか?」
僕が説明すると、紅葉が驚いた様子で、僕が左腕に装着している【制御腕輪】を眺めている。
よし、よし。驚いているようだな。なんせ、自分でわざわざスキルを取得してまで作ったんだ。これで無反応だったら、さすがに...おっと、質問に答えてなかったな。
「あぁ、この腕輪は僕が作ったからね。」
「主様が!」
おぉ、びっくりした。そこまで驚かなくても。まぁ、嬉しいけど。そういえば、エリスが中級魔法が使えるようになった時に、自分のものと似た【制御腕輪】をプレゼントしたな。まだ、使ってくれているかな。
「まぁ、それは置いといて、今日皆を喚んだのは、腕試しのためなんだ。」
「腕試し...ですか?」
「あぁ。僕、結局君たちの能力知らないんだよね。天蝎は一度戦ったからわかってるんだけど。」
「なるほど。そういうことでしたか。だから白虎がいなかったのですか。」
「そういうこと。じゃあ、始めようか。」
僕がそう言うと、全員気を引き締めたのか、場の雰囲気がキリキリとした感じに変わった。ちょっと、殺気立ってるよー。狩りするだけのつもりだったんだけどな...