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こうして彼は少女と出会った。

勢いで書いたやつ、気が向いた時しか書かないと思う。

 霧式秋久は現在、上空一万メートルの大空にいる。といっても、生身で空を飛んでいる訳ではなく、貨物飛行機の中に居るからだ。彼の見た目は十五ほどの少年で、黒髪から日本人だろうと予想できる。身長は一五六センチ、厚手の長袖を着こんでおり、少し暑そうに見えるが、貨物室は飛行機の高度の上昇と共に気圧や温度が低下するので、これだけ着ても寒いくらいだ。

 彼はポケットの多いズボンから携帯型端末『インフォン』を取出し、現在この飛行機が日本上空を抜け出したことを確認する。

「よし」

 秋久は小さく言って、行動を開始した。

 この飛行機は、アメリカ行きの無人機で、『秘密の荷物』を載せているらしく、秋久の目的はその『秘密の荷物』の回収だ。

 時限式のウィルスのおかげで、機内に取り付けられているカメラは秋久を映しても警報を鳴らさない。これで心置きなく作業ができる。

「ええっと、秘密の荷物は……多分この先か」

 秋久は貨物庫の奥の方に歩み出した。

 格納庫の荷物はロープなどで固定されており、ダンボール箱の中身はなんなのか見当がつかない、秋久が思うことは奥の方に行くにつれ重要なものが乗せられているのかな? くらいだ。実際、秋久の目当ての荷物は見つけられていないので、奥の扉の向こう側にあるだろうと予想する。

「このスピードだと、あと五分以内でやらなくちゃなあ」

 脱出はパラシュートによるスカイダイビングだ、荷物も同様にパラシュートを付けて落とす。落下地点には仲間が待機しており、クルーザーで回収後日本内に戻る算段だ。

「よっと」

 ハンドル式のロックを外して、鉄のドアを開いた。

 ドアの向こうは奥行十メートルほどの重要な貨物室は、秋久の目当ての荷物だけポツンとあってガランとした寂しい空間だった。

「あった、これだな」

 荷物は縦が一メートル、横が五十センチほどの長方の形黒い箱だった。

 秋久は長方形の箱にパラシュートを取り付ける。

「これをこうして、ここに付けて、よし、あとは……」

 と、最後の仕上げをしようとしていた所、秋久が出てきた方とは逆の方向から誰か人が出てきた。

「あー、やっぱり侵入者か」

 中華服と編み込んだ長髪が特徴の男がいた。見た目以上の武装は見えず、危険度はそこまで高くなさそうに見える。

「君、どうやってここに? 検問官は無能なのかな、まあ、でもこうやって僕みたいに直接の検査する人を配置するだけ救いはあるのかな?」

 あくまで自然体、体の力を入れずにダランとしている節すらある。

「これは無人貨物機じゃなかったのか?」

 秋久は悪態をついた。

「うん、そうだねぇ、普通の重要な荷物だったら無人だっただろうけど、今回の荷物は重要度が違うんだよ」

 中華服の男は余裕綽々そうに答えてあげる。

 ここで秋久は頭の中で計算する。ここでこの男と戦った場合に発生する時間を、そして結論付ける、戦わずとも荷物さえ運べばいいと。

「荷物の中身は何か知らないけど――」

 秋久はポケットから爆弾を取り出して、壁側に投げた。

「――運び出せれば何でもいいや」

「げ、お前ここ上空いくらだと思ってるんだよ。そんなの使ったら飛行機落ちるよ?」

「計算の内だよ」

 爆発して内壁に穴が開く、外の空気が入ってきて機内の温度が一気に下がる。

 男の方も立ち尽くしているだけじゃなかった。秋久が狙っている荷物に走り跳び寄り、パラシュートを引き千切る。

(パラシュートがなければ落とせないだろ)

 その行動を見た秋久は、

(ジャンプでアクロバティックにパラシュート千切りやがった! 肉体の改造人間か?)

 そう思い、中華服の男の危険レベルを上げた。と、同時に着地を狙って蹴り飛ばしをかました。男の方も何かしてくると予想はしていたので、腕でブロックしたうえで体を後ろに流すことで更にダメージを流す。

 ガン!

「あ」

 男は先ほど荷物の上を飛び越えてきたので、下がれば背中から荷物にぶつかるのは当然と言えよう。そして更にその衝撃か、荷物の装甲が外れた。

「やべ……」

「うぉおお荷物がぁあああ!」

「ぼ、僕じゃないからね? 僕を蹴った君が悪いんだからね?」

 二人して、荷物の安否を心配して、男は荷物の方を振り返り、秋久は駆け寄る。

 剥がれた装甲の中には、ガラス容器が入っていた。その中には、培養水と、涼しげな髪色の少女が裸で眠っていた。

「んな!」

「おお、かわいい子だな、あと十年したらきっと美人さんになるね。ん、どうした少年、顔赤いぞ?」

 男はニヤニヤと意地の悪い顔をする。

「お、お前はなんでそんな平気なんだよ!」

「おいおい、僕にとってはこの子はまだ子供だよ、まあ、君くらいだったら歳も近いし、まあ、いいんじゃない?」

「お前――うぐ!」

 秋久が完全に油断していた隙を突いて、男の拳が秋久の顔面を捉えた。

(顎を捉えた! これでしばらくオネムしてもらって、この穴のせいで高度が下がってきてるからどうにかしないとねぇ――ゲェ!)

 男は、足元に転がっている爆弾を発見してしまった。

(あかんですわー!)

 光の速さで爆弾を風穴に蹴り飛ばす。

 ボン!

 爆弾は外で爆発したものの、貨物機にダメージは入ったようで、目に見えて高度が落ちていくのを感じた。

「あいちゃー、本格的にあかんですわー」

 男は踵を返して元来た道を走り去る。おそらく機体のコントロールを自動から手動に切り替えてどうにかしようとするためだろう。

 脳震盪を起こしたふりをしていた秋久は、男が出て行ったことを確認すると跳ね起きた。

(ヤベェエエ! 時間ぎりぎり! てか、少し過ぎてるし! 荷物用のパラシュートないし! とにかく、今できることをやろう)

 まず『インフォン』でトラブルが起きたことを報告する、返事を待たずに一本のナイフをポケットから取り出して培養器のコントロールキーに突き刺す。ナイフはキーの下の基盤まで届いた。

 秋久が今突き刺したナイフは、いうなれば解析機のような物で、システムの一番単純な命令――つまり、ドアの開閉などのハッキングとして使用している。しばらく待って、培養器は開いた。



 自分の周りにある液体は培養水。知識として知っている。

 培養水越しに伝わる音は曇って聞こえるので断定はできないが、聞こえる声は二人分、十代中盤と二十代前半ほどだと推測する。

 どん、と何かが装甲へぶつかった音が聞こえた。

(この装甲は、内側からの攻撃に対して作られたので、外からの衝撃には脆い。わたしはそれを知っている)

 けれど、わざわざ培養器の中から出ようとは思わなかった。昏眠する意識の中、外の状況はなんとなく掴めている、けれども、その事には何も興味が持てなかった。

 けど、それも培養器の水が流れ出すまでだった。



「よし、開いた」

 ハッキングナイフを突き立てられた培養器は、縦二つに分かれて培養水をこぼしながら開いた。秋久はハッキングナイフを引き抜き、しまう。

「……ケホ、ケホ」

 薄蒼の髪の少女は、周りの状況が培養水から空気へと変化したことにより、咳き込む。秋久は、まさか意識があったとは思ってもみなかったので、少し戸惑った。

「起きてるのか?」

 銀髪の少女は、秋久を視野に捉えた。

「……あなたは、敵ですか?」

「え、敵?」

 少女の眼は、眠たそうな半開きの眼で、なかなか感情は読みずらい。

「いや、むしろ君を解放しに来た?」

「解放?」

「詳しい事情なんかは分かんないけど、俺は君の味方だ。とりあえず、その格好だと目のやり場に困るからコレ着てて」

 秋久は着ていたジャケットを脱いで少女に手渡す。

「……ありがとう」

 少女は秋久からジャケットを受け取り、上から羽織る。

「ちょっと待ってて、すぐに脱出の準備をするから」

「わかった」

 言われた通り、少女は培養器から出ずに、待機している。

(まあ、いい風よけになるし、うろちょろされても目のやり場に困るしね)

 秋久はナイフ――ハッキングナイフとは別の、電気の伝導率が低い特殊ナイフ――で、使えなくなった荷物用のパラシュートを引き裂く。手ごろな長さに引き裂くと、予定にはなかったもうひとつを切り取り始める。

「よし、あとはパラシュートだ」

 秋久は自分用の脱出に使うパラシュートを着こんだ。次に、予定にはなかった物、パラシュートをマントの大きさに切り裂いた物を少女に渡す。

「付焼刃でしかないけど、体にまとって」

「はい」

 少女は培養器から出て、マントを受け取る。培養器から出た時に、ブルリと体が震えたのが分かった。開いていたとはいえ、培養器が壁の代わりになって風よけになっていたのだ。

「いい、説明する時間はないから俺を信じてほしい。無茶なことを言っているのは承知の上だけど、どうか了承してほしい」

「あなたを信じればいいんですね?」

「ああ、そうだ。そして、ごめん」

 秋久は少女を抱き寄せた。

 といっても、秋久が欲情したわけではない。先ほどパラシュートから手ごろな長さに引き裂いた、即席のロープを自分と少女に巻き付けているのだ。

「これは?」

「固定してるの」

「それは分かります」

「いいから、今に分かるよ」

 次に秋久は少女を持ち上げ、先ほど爆弾で開けた穴へ走り跳んだ。

 貨物機から外に飛び出した秋久たちは、当然重力に引かれて落下する。

「なるほど、空中で離れてしまわないように固定したのですね」

「そう」

 少女は説明なしのスカイダイビングに驚いた様子はなく、冷静なようだ。

(それに俺の体温で少しは寒さを減らしたかったからな)

 貨物機からはさっきの男がいつの間にか戻ってきて、秋久たちを指さして何か言っているが、落下するときのゴオオという音のせいで何を言っているのか聞こえなかった。

(それにしても寒い、俺はまだ服を着ているが、この子は大丈夫だろうか)

 落下先は一面海だが、その一点にクルーザーが見える。秋久の仲間だ。秋久から連絡を受けて、落下地点の変更を知った仲間が再回収地点へと移動している所である。

(そろそろか)

 秋久はパラシュートを展開した。ぐん! と、上に引っ張られたような感覚を一瞬感じて、緩やかに落下していく。

「上空からの攻撃、来ます」

「え?」

 パラシュートを開いた後なので、貨物機を見ることはできない。

「貨物機の中の荷物を落としたようですね。大丈夫です、どうせ外れます。ついでですのでその荷物も回収しましょう」

 少女が言ったように、その二秒後に秋久たちの隣に数十メートルの所を、コンテナが一つ通過した。空気抵抗で減速しているこちらよりも早く、海面に到達しそうだ。

 クルーザーは既に落下地点を予想して、スピードを緩めている。あの人なら気を効かせて、荷物の回収準備をしている頃合いだろう。

「そろそろ着水するから、心の準備しておいて」

「はい」

 その三分後、秋久たちは海面に着水した。

 決して弱くはない衝撃で海面に叩き付けられ、海中に沈む。春先のまだ寒い日、海水の冷たさでガンガン体力と体温を奪われていく。

 秋久はロープを外して少女を抱え、海面へ浮上する。

「プハッ、ゲホゲホ」

「ケホ、ケホ」

 咳き込む二人の所にクルーザーから浮き輪が投げられる。

「お疲れ秋久、なんで時間に間に合わなかったとか、その子は誰なのか、荷物にパラシュートが付いてないのは何故なのかとか、色々聞きたいことはあるけれど、まずは上がって体を温めな」

 秋久の仲間の女性はそう言った。


続けるか分からんなぁ

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