【慰め】
改めて話をするといろいろな思いがこみ上げてきて、ボーは一度だけ鼻の奥がつんとしました。
でもダンクさんたちに泣き顔は見せずに話せました。
「そんな事があったのか。なるほどね、昨日の今日じゃどこへ行くのか決まってないのも当然か」
ダンクさんは大きく頷いて納得しました。
一方のカグーはボーよりも泣き出しそうな顔です。
「私も十歳の時に父を亡くしました」
カグーは親がいないのはボーだけじゃないと教えてくれました。
そして不思議な慰め方をしました。
「でも元気を出してくださいね。あんまり悲しんでいると、それを見たご両親も悲しみますから」
「死んだ両親が僕を見るの?」
ボーは驚きました。
「ああ、ごめんなさい。突然そんな事を言われてもわけがわかりませんよね」
カグーは勘違いさせたことを謝りました。
「昔マーサから聞いた話なんです」
「マーサって誰?」
「マーサは私の家で家事をしてくれている女性です」
「そうなんだ」
「今では孫もいるおばさんなのですが、マーサは朝自分の家の朝食とお弁当を作ってから私の家にやって来て朝食を作り、夜は私の家で夕食を作ってから自分の家に帰ってまた夕食を作るんです。もう二十年間も一日に五回もご飯を作っているんです」
「毎日五回も?」
「ええ、そのマーサから聞いたのです」
カグーは鼻から息を吸って泣きべそを引っ込めてからマーサの話を続けました。