【奉公】
僕は九歳の時に農場に奉公に出されました。
家が貧乏だったんです。
六年分の給料は前払いで親に渡されました。
慣れない頃は農場での暮らしは辛いばかりだったし、まだ子供だった僕は夜に母が恋しくて泣くこともありました。
でもじきに一緒に働く農夫たちとも仲良くなれたし、へまをしながらも家畜の世話や畑仕事を覚えました。
農場には休みのたびに町へ遊びに行く事を楽しみにしている人が大勢居ました。
お酒や賭け事をする者も居ました。
給金のない僕の一番の楽しみは何ヶ月かごとに届く親からの手紙でした。
それにはいつも母の優しい言葉が書いてありました。
でも四年が過ぎた頃にその手紙は届かなくなりました。
やがて、農場の中で一番のちびでなくなった頃には大抵の仕事は任せてもらえるようになったし、最初は怖いだけだった牧童頭にもさぼらないのがとりえだななどといくらか目をかけてもらえるようにもなりました。
そして、六日前の事です。
農場主の主人が僕を呼び出して、年季が明けたからこれからは毎月給料を出すと言いました。
でも僕は親と相談してから決めたいと言いました。
主人はいくらかの旅費をくれ、僕は生まれた家へと向かいました。