【第三話】
昔々、最初の人が生まれるよりもさらにはるかな昔、
大地の女神ダリアとテイアは透き通る美しさを持つ姉妹でした。
ですからこの頃、透明な大地が二つありました。
二人には双子の妹の月の女神アーララとウーララがおりました。
アーララとウーララは大変幼く、二つの月は今よりも小さく輝いていました。
ある日闇の神ロバがテイアをたった一言そそのかしました。
「お前はダリアと同じくらい美しいがダリアより貧弱だな」
たった一言で充分でした。
ダリアよりも強大になりたいという欲がテイアの心の中でふくらみました。
テイアはダリアが出かけた隙に幼いウーララを捕えて食べました。
テイアはウーララを食べた分だけ一回り大きく強くなりました。
テイアはアーララも捕まえようとしました。
アーララは逃げ出して裁縫箱の針に姿を変えました。
テイアは泣き声を頼りに耳を澄まして探しました。
テイアが裁縫箱に近づくと、アーララはテイアの親指を刺して再び逃げだし、川原の石に姿を変えました。
テイアは今度は匂いを頼りに手を伸ばして探しました。
アーララが捕まる前にダリアは家に帰りました。
そしてテイアのしたことに気が付くと火の如く怒ってテイアに襲い掛かりました。
姉妹は激しく戦いついにはダリアはテイアを食べてしまいました。
その争いの結果、大地も月も一つずつになりました。
アーララは今でも変身を繰り返しテイアから逃げ続けています。
ダリアは以前の透明な輝きを失い、以前よりもかたくなになりました。