【ぼったくり】
「いいようにやられてしまったな」
「そうですね」
「ひどいわ」
話を聞き終わった皆はそれぞれに感想を言いました。
「どこかおかしかった?」
ボーにはまだ皆が何を不審に思っているのかわかりませんでした。
「ボーさんが思うよりアーララ銀貨の価値はずっと高いんですよ」
カグーはまるでお母さんかお姉さんのような言い方でさとしました。
「そのおばさんは君がお金の価値を知らないのを良い事に、ぼったくったんだよ」
ダンクさんは憤懣やるかたない顔でボーに説明をしました。
「ぼったくる?」
ボーはぽかんとしました。
「わかり易く言えば、とても高く売りつけたんだよ。君はものすごく損をしたんだ」
「そうだったの?」
「ボー君、アーララ銀貨にどのくらいの価値があるかわかるかい?」
ダンクさんは訊きました。
「うんとね、五千って数字が書いてあったから五千モリン?六枚だと三万モリンかな?」
「あら、計算も上手にできるのね」
カグーは言いました。
「本当だ。そこまでわかっているなら何で・・・」
ダンクさんはますます納得がいかない様子です。
「ダンクさん、ボー君が知らな無かったのは物価ですよ、買い物をした経験が無かったのですから」
「ああ、なるほど」
ボルドさんの説明でダンクさんは納得をしました。
カグーはボーにわかり易く説明をしました。
「ボーさんの買った食料はアーララ銀貨一枚でもお釣りが来るくらいだったんですよ。もちろんクッキーを込みにしてもです」
「その通り。三万モリンなら、その気になればひと月だって食べられる。持ちきれないくらいの食料と交換でなければおかしいんだ」
ダンクさんはカグーよりも熱っぽく言い聞かせ、ぴんと来ていないボーの代わりに怒りました。
「ようし、その農家を通りかかったら取り返してやるか。そんな法外な値段で売りつけるなんて」
でも、全てがわかった上でもボーは腹を立てませんでした。
「そうだったんだ。きっとおばさんはお金に困っていたんだね。うん、そういえばちょっと貧乏そうな家だったよ」
カグーとボルドさんは目じりを下げてもうそれ以上は言いませんでした。
ダンクさんは眉を下げて、一言だけ言いました。
「お人よしなんだなあ」
「アーララの出てくる神話を聞いたことがありますか」
カグーは訊きました。
「どうだったかな、覚えてないな」
ダンクさんが答えました。
「知らない」
ボーは言いました。
ボルドさんは何も言わずににこにこしていました。
「最も古い十三の神話のうちの一つで第三話と呼ばれているものです」
カグーは一つの神話を語りだしました。