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ボー  作者: RENPOO
13/61

【お茶】

「面白かった」

ボーは幌の向こうのボルドさんに言いました。

「ええ。私、何回もどきどきしたわ」

カグーも言いました。

「面白かったです。ヘケーの祭りがでてきましたね。ただ私は少し似た話を聞いたことがありますね。その話では頭から生えたのが豆の木で頭にかぶるのは植木鉢でした」

ダンクさんがそう言うとボルドさんは答えました。

「それは興味深いね。元の一つのお話が形を変えて広まったのかもしれないですね」

するとカグーも言いました。

「似たお話なら私は頭に鍋をかぶった女の子の話を聞きました。でも似ているのは少しだけ。お祭りは出てきませんでしたから」

「おや、それもどれほど似ているのか、いつか聞き比べてみたいですね」

ボルドさんは幌の向こうで大きく息をついてから、

「さて、」

馬車を停めて幌を後ろ手にめくりました。

「少し休憩しよう」

開いた幌の隙間から見えるボルドさんのわき腹が言いました。

馬車が停まったのは街道が河にとても近づいている場所でした。

河原は見通しよくひらけていて草が青々と生えていました。

ボルドさんは馬車を降りると馬を休ませました。

ダンクさんとカグーは馬車を降りるなり何も言わずに草むらに姿を消しました。

最初何事かわからなかったボーも、「ああ、そうか」と気付いて、自分も用を足しました。

特に差し迫ってはいなかったのですが、馬車が動いている時にもよおしてしまったら、わざわざ馬車を停めることになるからです。


ボーが手を洗ってから戻って来た時、カグーは大河を眺めていました。

大河はとうとうと水をたたえて緩やかに流れています。

対岸はあまりにも遠いので緑が霞んでいます。

「一年の半分も河に水が無いなんてどんな世界かしら」

「うん、木が全部枯れて地面がひび割れるなんてまるで世界の終わりみたいだ」

ダンクさんは二人の話を聞きつけました。

「おや、人食いの国の話かな?こんな河を見て育った君たちには水や緑の無い乾いた国なんか想像もできないだろうね。でも逆に乾いた国に住む人にはこんなに雄大な河があるなんて想像もつかないだろうな」


ボルドさんは薪を集めて戻ってくると、簡単な風除けのかまどを作り、湯を沸かし始めました。

ダンクさんはボルドさんの隣に立って言いました。

「嵐をしのげそうな場所は無いですね」

見晴らしの良い河原からはどちらを向いても茂みと木立とぐらいしか見当たりませんでした。

「そうだね」

ボルドさんは答えながら体を伸ばしました。


お湯が沸くとボルドさんは皆にお茶を淹れてくれました。

辺りには良い場所が無かったので、皆で荷台に座りました。

四人で入ると荷台は狭くてお互いの足の先がくっつく程です。

ボルドさんのお茶は初めて嗅ぐとても良い香りでした。

久しぶりの暖かい物にボーの全身はやすらぎました。


「今朝茹でたやつなんだけど」

ダンクさんは皆に皮付きのじゃがいもを一つずつ配ってくれました。

ボーはお礼を言うや夢中でかぶりつきました。

小ぶりのじゃがいもはあっという間に無くなりました。

飲み込んでしまってからもっとゆっくり食べればよかったと後悔したくらいです。

あんまりおなかがすいていたので食べ物を目の前にしたとたんに止まらなってしまったのです。


ボーの向かい側ではカグーが夢中に食べています。

あんまり一生懸命に食べているのでボーは見とれてしまいました。

「いつから食べていないんだろう、きっと僕と同じくらいお腹をすかせていたんだろうな」

そして、できることなら食べ物を分けてあげたいと思いました。

でも、もう自分の分は指先に付いたざらざらした粉しかありません。

ボーはをそれを舐めました。

「夕飯は早いほど喜んでもらえそうですね」

ボルドさんはやさしい顔で言いました。

ダンクさんも眉毛を下げてボーに言いました。

「ははは、よっぽどおなかがすいていたんだなあ。食べ物も無しにこんな所を旅をするなんて無茶だよ」

「うん、そうだね。食べ物が無くなって困っていたんだ」

「ボー君はお金は何に使ってしまったんだい?ほら、農場主にもらった路銀だよ」

ダンクさんは訊きました。

「食べ物を買ったけど、全部食べちゃったんだよ」

「あ、そうか。無駄遣いをしたわけじゃなくて金額が小さかったんだね」

「うん、そうだと思う。アーララ銀貨っていうやつだよ」

「えっ、アーララ銀貨?」

カグーは顔を上げました。

ダンクさんも怪訝な顔をしました。

「ちょっと怪しい話だな、そのお金をどう使ったのかを聞かせてくれるかい?」

「何か変だったかな、えーとね」

ボーは数日前の事を思い起こして話しました。

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