第5話
「直久君、ありがとう」
「良いって! それにしても、あのオッサンは何で愛理に執着するんだよ…」
煉華と仁絡が出て行って、2人だけになった愛理と直久は、ゆっくりと時間を過ごしていた。
愛理と直久は互いに相思相愛だ。しかし、2人の間に海斗が割って入ってきたのだ。
海斗は直久から愛理を手放させようと色々と悪巧みをしたが全て失敗。それどころか2人の相思相愛が深くなっている。
「煉華ちゃん、心配してたぞ?」
「煉華には心配させてごめんなさいって謝っておくわ」
「じゃあ、また明日来るから。 元気でな」
「うん、ありがとう直久君」
そう言うと直久は愛理の病室から出て行った。
「…ありがとう、直久君…」
所変わって1階女子トイレ
「直久さんが…」
《そうじゃ、尤も、何故かは分からぬが…》
半透明のイリネスが煉華に言った衝撃的な言葉。
『榊原直久は特殊な能力を持っている』
ファーストコンタクトはそれほどの力が無く、イリネスも見向きもしなかった。しかし、途中から不思議な何かが直久から出ていることが、イリネスは不思議に思えたからだ。
「でも直久さん、今まで何も起こらなかったから…」
《うむ。 多分だが、余が見えたのだろうな》
「見えてたって…」
それは、病室で色々と世間話をしていた時のこと…。
「煉華ちゃん。 最近は何もないのか?」
「えっ? そうですね…最近は何も起こってないですね」
煉華はコクリと縦に頷いた。しかし、直久はずっと煉華の後ろにいた半透明の煉華に似ている少女をジッと見ていた。
「………そうか、何かがあったら何時でも言ってくれよ?」
「ありがとう、直久さん」
《………あの男、余が見えていた…!? 何者なのだろうな…》
「………」
後ろ姿を見ていた直久は、ずっと煉華を見ていた。否、煉華の事ではなく、別の何かを見ていたような気がしていた。
「直久さんとはずっと一緒に遊んでたけど、そんな事は全然無かったよ?」
《ふむ…気のせいだと信じたい。まあそれはさて置き、今日の晩ご飯は何かな?》
「今日はシチューだよ!」
煉華が晩御飯の献立を考えようとした直後だった…!
ドーン!ドーン!と大きな爆発音が外で響いてきたのだ!
「きゃっ!な、なに!?」
《外から爆発音が…!レンカ、外に出るぞ!》
「う、うん!」
煉華はすぐさま病院の外に飛び出した!そこに居たのは…!
「ククク…来たか、イリネス・バレッタ」
そこに居たのは学校を襲った男だった。その男は巨大な斧を持ち、煉華にジリジリと詰め寄る。
「貴方は…」
「ククク…今回はお前を殺すために、連れてきてやったぜ!」
男はそう叫ぶと辺りがゴゴゴと地震が揺れてきた。煉華は懸命に立とうと必死だ。
その時、地面から巨大なモンスターが現れた。それはゴーレムと言われるモンスターだった。
《思い出した…!あいつ等の国はモンスターを生み出す研究が多い国だぞ!》
「えっ!?も、モンスターって…架空の生物じゃないの!?」
《だが、余の世界ではモンスターが幾度となく現れるが、あいつ等はモンスターと人間を融合させて、新しいモンスターを生み出している!だから父上はあいつ等の国に攻め込んだのだ!》
そして、相手の国を制圧した後にそのモンスター研究所を爆破させ、二度と使えないように施した。
「そうだ…お前達のお陰で俺達の苦労が水の泡になったのだ…その報いを死を持って償え!」
そう言うと男は魔法を使い、モンスター達を呼び出した。スライム、ウルフ、虫やドラゴンなど凡そでも100は居るだろう。
《レンカ!身体を貸すのじゃ!余が戦う!》
「でも…でも!」
《まだお主は力を自在に扱えない!余に任せてもらいたい!》
そう言ったイリネスに煉華は少しだけ考え…、首を縦に振った。承諾したのだ。
「貴方を信じる…。だから、皆を護って…」
《すまない…ありがとう》
そう言ったイリネスは煉華の身体の中に入り徐々に煉華の周りから魔力が溢れ出す。
「貴様の相手は余が引き受ける!」
イリネスは魔力で創った光の剣を錬成し敵陣に向かっていった。
そして、其処で見ていた人物が1人…。
《あれは…イリネス、いいえ…違うわね…。でも、魔力はイリネスそのもの…》
「どうする?助太刀しておく?」
《ええ、当たり前!イリネスだとすれば…『友達』はほおってはおけないから!》
「それじゃ…行くわよ!」
少女は高い所から降りれば走って病院に向かっていった…。果たして、彼女の目的は、更にイリネスと少女の関係は!