第6話 弾丸の嵐
あの後、俊秀は1人で山の中に入っていた。彼も血の雪事件の事で色々と思う事があったらしく、ここの村の村長、半蔵の言う事を聞く事にした。
(……この辺でいいか)
俊秀は立ち止まり大きく深呼吸をした。そして、最近また使える様になった前世の技を磨くための練習を始める。
先程、彼が見せた技は仙術の基本技である。氣の操作をする事で、肉体コントロールも可能になるのだった。
この技のおかげで大人相手でも暴れ回れたのだが、久しく使えなかった技でもあったので長続きしないのであった。
その事に対して危機感を覚えた俊秀はすぐさま錆び落としを始めるのだが、思うように氣を操作する事はできず、地面に座り込んでしまった。
「――――っ、はぁはぁはぁ…………くそっ、だいぶ落ちてんな…………」
俊秀は、呼吸を整えながら空を見上げる。そこには雲1つ無く、さんさんと太陽の光が差し込んでいた。
(…………もっと、強くなんないとな)
彼は、立ち上がる。本来の使命を達成するために…………。
練習を始めてしばらく経って近くから銃声が聞こえた。その方向に行って見ると、そこでは二丁の拳銃を持った子供がいた。
「うーん……もうちょっとカスタムした方がいいな」
「何やってんだ?」
俊秀は声をかけるとあわててこっちに振り向いた。年齢は俊秀と同じ位であろうか。着ている服は男物で、顔は泥と汗でドロドロであるため、性別がイマイチわからなかったが、長い黒髪を後ろで一本にまとめられている事から、恐らく彼女が女の子である事はわかった。
「あれ? 見ない顔だな。最近引っ越してきたのか?」
「ん? …………ああ、そんな感じだ。俺の名前は出雲俊秀だ。よろしく」
「私は、不知火雅だ、こちらこそよろしく」
「で、何してんだ見た感じ拳銃の調整をしているようだが、連射を上げようとしてんのか?」
「ん? わかるのか?」
「ちょっとはな、親友がやたらとそんなモン作っては改造してたからな、俺も少しは解るんだ」
俊秀は懐かしそうに言った。一方、雅は目を見開いて俊秀を見た。
「本当か!? なら折角だ。ちょっと見てくれないか?」
「ああ、もちろんだ」
俊秀は雅から受け取った拳銃を見た。拳銃の種類はわからないが良く手入れされている。そして、何より前世で見覚えがある。コレと同じようなものを改造した事があると。
「そうだな……。ここをこうしたらどうだ?」
ならば俊秀に出来る事は前世の記憶を引きだして作業を始めるだけだ。
久しぶりの細かい作業の為、不慣れの手付きであったが思いのほか早く終わった。
「これでいいかな? 不知火、試しに撃ってくれ」
「もう調整が終わったのか……。早いな」
雅は少し遠めの木に向かって銃口を向けて弾を何発か撃った。
「不知火どうだ? 感じは?」
「凄い、凄く速くなっている!? 何でだ?」
「んー、秘密だ」
俊秀は笑いながら誤魔化す、雅はとても知りたそうな顔をしているがあえてスルーすることにした俊秀は空を見上げた。
(そういえば、俺の親友達は今頃天界に居るんかな…………)
俊秀が雅と話をしていた頃、大きな荷物を背負い1人で山道を歩いている少年がいた。
「今日は結構歩いたなー。そろそろ昼にするか!!」
少年は荷物から御握りを取り出し食べ始めた。しかし、直に食べるのを止めて辺りを見始めた。
(おや、少し辺りの氣の流れがおかしいな……?)
少年は辺りを散策し始めた。そして、不自然に木が折れていたり、地面が凹んでしたりしている場所を見つけたのであった。
(これは、誰かが戦った後か? ……ふーん、なるほどねぇー)
少年は笑みを浮かべながら荷物の所に戻って再び御握りを食べ始めた。
(さて、この後どうするか……)
俊秀と雅は睨み合いをしていた。と言うよりも一方的に雅が睨んで来ている。
(ああ、何故こうなった?)
軽く遡ると拳銃の連射を上げた俊秀にどうして速くなったのか知りたい一身で聞く雅だが、俊秀は秘密の一点張りと言うよりも俊秀も実際、何故速くなるのかは知らなかった。
親友のする事を見よう身真似して良く手伝っていたが、理由までは知らなかった。俊秀も親友にもちろん聞いたが、教えてくれなかったのだった。その時は、そこまで知りたい事でもなかった為、手を引いたが雅はその時の俊秀とは違うのであった。
「何故教えてくれない。…………ぐすっ」
雅は怒りを通り越して泣きに入りかけていた。俊秀の顔が青くなっていく。明らかに言葉の選択をミスったみたいな顔をしていた。
(マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ…………今から本当の事を言えば間に合うか?)
恐る恐る口を開けて俊秀は言った。
「いやー、俺も実は詳しい事はわかんないんだ――――」
「………………だ」
「えっ?」
さらに俊秀の顔が青くなる。
「何故教えてくれないんだーーーーーーー!!!!」
手に持っていた拳銃でぶっ放してくる雅、撃ってくる弾丸を避ける俊秀。
「落ち着けーーー!! 俺がちゃんと言わなかったのが悪かったー!! 本当に知らないんだー!!」
「そんな言葉、信じられるかーーー!!」
涙を浮かべながら撃ってくる雅を止める事が出来なかった俊秀は昼になったので俊秀を呼びに藤林が来るまで弾を避け続けたのであった。
「今日は本当にすまなかった」
「いやいや、俺がちゃんと言わなかったのが悪いだろ。すまん」
呆れながら藤林が言った。
「仲直り出来たのは良いと思うが、以後喧嘩で拳銃を使うなよ。危なすぎる」
「はい、すいませんでした」
「後少年も発言には気を付けろよ」
「はい、モウシワケアリマセン」
「……よし、もう帰るか!腹も減ったし」
藤林が家の方向に歩き始め、俊秀が着いて行こうとした時、俊秀は気配を感じた。
(!? この気配は……)
俊秀は藤林と雅に気付かれないように抜け出した。
「おう、少年今日の昼何が――――っていねぇ!?」
「何か、忘れ物をしたんじゃないのかな」
「そうだな、少し心配だがまぁ大丈夫だな」
俊秀は山の中を走っていた。
(確か、この辺からだと思うんだが――――)
俊秀は辺りを見渡す、するとすぐに倒れた木に座っている少年を見つけた。後姿なので顔はわからないが恐らく自分と同じぐらいの年齢だろうと思った。声を掛け様とした時、先に少年の方が声を掛けてきた。
「よー、俊秀!! 元気だった?」
笑いながら少年は振り返ってきた。すると俊秀は笑いながら答えた。
「ああ、もちろんだ!!ケンさんも元気か?」
「ふっ、もちろんだぜ!!」
今、俊秀が話している人物は前世での親友、竹内健であった。
少し修正しました。 誤字があったら、報告お願いします。次回の投稿も未定です。