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ゼロの輝き  作者: 遼明
第Ⅰ章 変わる世界
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第6話 飛竜の巣

「あそこか・・・ドラゴンがたかっていると思われる場所は」


 俊秀達は空にポツンと浮かぶ島を見ていた。島の周りには浮く岩もあり、どこか神秘的な雰囲気があった。


「距離が結構あるけど、どうやってあそこに行くんだ? ないなら俺が変身してあそこまで連れて行くけど・・・」

「その心配はありません。これを使いますから」


 フィオーネは懐から青く透き通った玉を三つ取り出した。健は予想してなかった物が出てきたので少し驚く。


「何それ・・・何か力を感じるんだけど・・・」

「これは、マテリアルから作った長距離移動用具『箱舟』と言う物です」


 フィオーネは俊秀と健に1個ずつ、『箱舟』を渡した。俊秀は貰った玉を珍しそうにじっと見つめて口を開いた。


「フェオーネ、これどうやって使うんだ?」

「これの使い方は、転移したい場所を思い浮かべてキーワードを言えば、発動しますよ。今回は私がしますので、私の肩に手を乗せてください」


 俊秀と健はフィオーネに言われた通り、『箱舟』を持っていない手を肩に乗せた。するとフィオーネは俊秀と健に視線を1回合わせた。


「それでは、行きますよ。空間転移!!」


 フェオーネが叫んだ瞬間、俊秀達の持つ『箱舟』が強い光を放った。そして、視界が歪んだと思ったらすぐに収まった。俊秀は辺りを見渡すと少し離れたところにはさっきまでいた場所があり、一瞬で転移した事がわかった。


「おお、これが『箱舟』……!!」

「フィオーネ、これがドラゴンが住む島なのか」

「ええ、ここが飛竜の巣よ」


 俊秀達がいる島は木や草が乱雑に生え、生き物の侵入を防いでいるように見える。しかし、よく見てみるとあちこちに獣道があり低い姿勢で行けば通れないわけではなさそうだった。


「よし、とりあえず中に入るとするか……一体何匹いるのやら」


 俊秀達は獣道に入っていくのだった。




 俊秀達が獣道に入って10分ほど経過した。奥に進むほど獣道はだんだん狭くなり匍匐前進で進んでいた。周りを見ても竜の影一つないので俊秀は痺れを切らしていた。


「フィオーネ、ほんとにここにドラゴンがいるのか?」

「ええ、間違いない。ちゃんとここからここから出たのを確認しているし、煙が上がっているのも確認されている」

「煙? 何かあやし――おっ!? 広い所に出られそうだぜ」


 健は嬉しそうな声をさせて俊秀とフィオーネに知らせる。


「やっと出口か…………もうこの姿勢から開放される!!」


 こうして、俊秀達は突き進んでいくのだった。





「なんじゃこりゃ?」


 広い所に出た俊秀達の目の前に現れたのは巨大な大岩。そこにはとてつもなく大きな穴がぽっかりと空いていた。その穴からは煙のようなモノが常時出続けており天まで伸びている。あの煙は毒素を含んでいるのだろうか、少し不安になる。しかも、周りに比べると気温と湿度が高くなっているような気がした。

 果たして、これは飛竜の巣なのだろうか? 隠し温泉が湧き出る泉ではないのか?

 不安になった俊秀は恐る恐るフィオーネに聞く。


「これは……飛竜の巣か?」

「ええ、間違いない。ここが飛竜達の住処」


 どうやら飛竜の巣で間違いないらしい。だが俊秀と健は長年の修行で鍛え上げられた本能が危険信号を鳴らし続ける。

 正直、気が乗らない俊秀と健だが任務を達成しなければ美味い飯が食べられない。その事が脳裏に過ぎったのか2人とも強く頭を横に振った。


「結構やばそう洞窟だから、気をつけていこうぜ」


 健の発言に頷きながらゆっくりと彼等は洞窟に足を踏み入れのだった。






 洞窟内は、以外にも広く足元も整備されたようになだらかで非常に歩きやすいが、煙が視界を遮り行く手を阻んでいた。


「これがただの水蒸気なのはわかったが、前が全く見えない。本当にこれは一本道なのか?」

「うん、間違いないよ。俺が最近作った音波探索機がこの洞窟は一本道だと教えてくれている」


 そう言って健は手に持っていたアンテナが伸びた四角い機械を俊秀に渡した。それには、画面がついており、わかりやすく地図のようなものが描かれ今何処にいるのかもはっきりとわかる。


「へえ……最近の科学は目覚しいものだな」

「瑞浪殿は科学者でしたか、凄いですね」

「いやぁ、そんな事ないよ。俺にかかれば、オーバーテクノロジーなモノ、幾らでも作れる。ただ膨大な開発資金が必要とするけどね……」


 遠い目になりながら健は言う。やはり研究者というものは金が死活問題であり、健も例外にはならなかったようだった。


「ん? この先広い所に出るみたいだぜ。気を引き締めていこうぜ」


 画面を見ていた俊秀は健とフィオーネに警告した。すると自然に顔が引き締まる。ここまで飛竜と全く遭遇しなかったのだ。相手が出迎えている可能性がある。ゆっくりとそれぞれが持つ武器に手を伸ばすと同時に奇妙な声が聞こえる。


「三分待てば、凄く美味しい♪ 凄く美味しい♪ カッァァァァァァプ・ヌゥードゥゥゥウウウル!!」


 歌だ。それもかなり奇妙な歌だった。某CMに聞こえなくもないが歌詞部分の問題だろう。メロディーは明らかに違う。誰が歌っているのかと思い俊秀と健は走って広い場所までいくと、そこには一人の男がカップラーメンにお湯を注ぎながら奇妙に歌っている姿だ。ちなみに周りにはお湯を注がれたカップラーメンが大量に置かれているのだ。


「なっ何だぁ? アイツ?」

「あ、アイツは……カップラーメンのワタル!?」


 健は声を荒げる。そして、その表情は街中で有名人を見つけた時のあれだった。


「ケンさん、アイツ知ってんのか?」

「知っている? 何言っているんだ俊秀、今最高にナウい人だぞっ!? 自称だけど……」

「自称かよっ!?」

「そこに誰かいるのか?」

(あっマズ……)


 気づいた時には既に遅し、騒ぎ過ぎたと反省しつつも俊秀達は『カップラーメンのワタル』を見るのだった。

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