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ゼロの輝き  作者: 遼明
序章
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第9話 模擬戦

 あれから1ヶ月ほど過ぎた。俊秀と健はお互いの技を鍛え上げるため、模擬戦を繰り返ししていた。

 前世で俊秀の十八番だった『百仙錬磨』も基本的な事は完璧に出来る様になっていたが、健も転生した為に未完成になってしまった『無の境地』を完成させたのである。

 以前、俊秀と健の戦いで見せた『無の境地』は、外からの敵の技を受けると無効化できず割れてしまうのであった。簡単に割れてしまう物ではないが、単純に俊秀の放った氣が大きく、健の技を潰してしまった為、起こった現象であり、ただ馬鹿力によるものが大きかった。

 つまり、健がこの技を完成させた今、現時点・・・では俊秀に対抗できる技はなく、模擬戦では悪戦苦闘を強いられていた。


「ちっ!! しょぱなから、無の境地かよ!!」

「俊秀よ、お前では私には勝てん!! はぁっはっはっはっはっーーーーーー!!」


 健の悪ノリが加速する。何処から取り出したのか分からないがマシンガンを俊秀に向けて引き金を引き、ぶっ放す。勿論、俊秀も避ける。それを近くで見ていた雅は、輝いた目で見ていた。


「いつ見ても凄いな……。藤林さん、私も出来るようになるか?」


 雅の横で座っていた藤林は激しい戦いを観戦しながら言う。


「そうだな。お前の両親とは会ったことはないが、ジーさん曰く、俺以上に強かったらしいから、十分可能性はある…………。まぁ鍛え方次第だな」


 雅は藤林の答えに満足したのか嬉しそうな顔をしていた。それに気付いた藤林は雅に話しかける。


「そういえば、お前は村一番の狙撃手になるのが夢ではなかったか? 少年達のような戦い方は必要無いと思うが?」

「狙撃手になるにしても、健並の格闘技を出来るようになっていた方が良いと思うし、俊秀並の判断能力もあった方が良いと思う」


 確かに俊秀と健の戦い方には目を見張るものがある。それを見極めていた雅を評価する藤林。そして、雅は小さく言う。


「それに私は俊秀の横で一緒に戦いたい」


 藤林は驚いた。どうやら雅の心境変化には俊秀が関わっているらしい。


(あのジーさん、少年落とせないから自分の孫をその気にさせたのか? 嫌ジーさんがそんなこと考える筈がねぇ…………。考えてもこんな巧い子と行く筈が無い。誰か一枚噛んでんのか?)


 藤林も考えているがまさか俊秀の親友が一枚噛んでいる事は思いもしないだろう。

 ちなみに健が半蔵に授けた策は、雅を落とすと言うものだった。その為に俊秀の行動を先読みして、態々雅の好感度を上げる裏工作を必死でやって来たのである。

 ある時はわざと雅の物を隠し俊秀に探さして、ある時は観に来ていた雅と2人っきりにさせる為、わざと体調不良になって退場するため下剤や毒草を飲んだり(これ位しないと仮病では俊秀にばれる)等々、自分の命を掛けて(勿論、安全の確保をした上で)作戦に挑んでいた。

 その甲斐あってか、見事雅は俊秀の方を向いたのだった。しかし、健は面白いからと言ってこの様な事をする人間ではない。半蔵に協力する事である事を依頼しに来ていたのだった。

 つまり依頼料をタダにする為、奮闘した訳である。そもそもこの作戦は本来の目的と摩り替っており、依然話し合った時、半蔵を話術で言い負かした健は、雅が俊秀に対する評価を上げる事を目的とした作戦にしている。これで万が一俊秀にばれても良い様に保険もかけているのであった。

 藤林考える事を止めて模擬戦を観戦する事にしたが、どうやら勝負は終わっていた様だった。


「前から言っているが、ケンさんは最後の一手が甘い」

「氣の練り方がまだ遅いんじゃないか? 前はもっと速くに出来ていたと思うが――――」


 俊秀と健はお互い気付いた事を言い合っている。こうする事で自分の弱点を知り克服する礎を築いていた。その話を割って入る雅は戦いを観て気になった事を聞く。


「俊秀、前も思ったんだが、あの弾丸の嵐をどうやって避けているんだ?」

「ん? 相手の狙う所をある程度予測する。その後は自分の目を頼りにしている」

「……見えているのか?」

「ああ、俺にはある程度止まって見える。俺は動体視力が良いんだ」

「見てない時はどうしていたんだ?」

「ん? それは――――勘だ」


 雅は唖然とする。勘であんな動きが出来るのかと。

 でも実際は勘で避けていたのではなく仙術を使っていたのだ。

 究極の肉体コントロールを可能とする仙術を使えば、飛んでくる弾の音を全て聞き分ける事は容易い、そこから軌道予測をして避ければいいのだ。

 他にも氣を流れを読み避けると言う方法もあるのだが、そうなってくると健の『無の境地』の影響でそれが出来ない為、最も『無の境界』の影響が出ないよう、ギリギリの肉体コントロール――――聴覚を極限にまで高め、音を聞き分ける事――――で避けていた。

 ただ、ある程度勘で避けている所もあるのであながち嘘ではない。攻め手に回れば、必然的に結界内に踏み込まなくてはならないからだ。

 『勘がなくては生き残れない』それは俊秀の持論だった。

 ちなみに、俊秀と健は仙術の事は伏せている為、言う訳にはいかないのだった。

 雅の質問を答えた後、俊秀と健は再び話し合いを始めるが、ふらっと半蔵がやってきたのだった。


「健はおるかのぉ?」

「おお!! 村長!! 何用ですかな」


 健はにやけた顔でふざけながら答える。あれから健と半蔵はかなり仲が良くなっていた為、良くこのやり取りがされる。


「依頼された物の調査結果じゃ。受け取れぃ」


 半蔵は左手に持っていたクリアファイルを健に投げる。手裏剣が飛んで来るような感じでクリアファイルが健に向かって来て、それを片手で健は取る。半蔵は健が受け取ったのを見てさっさと引き上げていった。


「どれどれ? ………………」


 健はクリアファイルを広げ中身を見た。少しずつだが表情が真剣になっていく。


「ケンさん、どうした?」

「…………。俊秀急がないと不味いかも知れない」

「はぁ!? どう言う事だ!?」

「詳しい事は後で話す。今日はここまでにしよう」

「そうだな。模擬戦はここでお開きにするか」

「え? 私はまだやってないぞ!!」


 終ろうとしていた俊秀と健は雅に突っ込まれる。


(そういえば、昨日から雅も参加してたっけ)

「ケンさん、すまん。先に帰ってくれ。俺は雅の相手をしてから帰るわ」

「そうか、じゃ俺は帰っとく」


 俊秀は手を振りながら去っていく健を見送ってから、雅と向き合う。


「俊秀、以前の私と思っていたら痛い目を見るぞ」

「くっくっくっ…………俺は昨日の健との模擬戦を見て、お前の実力は見切っている。はっきり言ってまだ不知火では勝てん!!」

「くっ!? 行くぞ、俊秀!!」


 俊秀と雅の戦いを観戦しながら藤林はどこまで成長するのか楽しみだった。








 夜、俊秀と健は藤林宅の客間にいた。


「一体何を依頼してたんだ?」


 俊秀は昼聞けなかった事を聞く。


「村長には、世界がどうなっているのか調べてもらった。俺だけでは情報を集めるのは限界があったしな」


 健は半蔵に貰ったクリアファイルを俊秀に見せる。俊秀は中身を見て一番に飛び込んできた文字に驚く。


「はぁ!? 大陸が割れる!?」

「それだけではない、謎の生命体の襲来、突然変異、自然災害が立て続きに世界で起こっている」


 俊秀は資料に目を通していく、この一ヶ月ほど新聞を読んでいたが聞いた事がない事ばかりが書いてあった。


「おいおい、これかなり不味いんじゃないか」

「ああ、だから世界各国はこの事を情報として流さない。パニックになるのが目に見えているからな。村長もここまで調べるにはかなり骨が折れたらしい」


 俊秀はここまで世界が不味い事になっているとは思っておらず、言葉が出なかった。そんな俊秀を見て健は口を開く。


「俺もここまで酷い事になっているとは思っていなかった。問題はここからどうするかなんだが…………」

「焦っても仕方がない。とりあえず今日は寝ようぜ、明日も早いしな」


 とりあえず布団に入って寝ようとしたが、俊秀と健は外の異変に気が付く。


「ん? なんか外が騒がしくないか? 妙に外も明るいし」

「そうだな。一体何が…………!!」


 俊秀が外の氣を読もうとしたら、まがまがしい気配を感じた。

 俊秀の顔色が一気に変わる。


(まさか…………!? あの時の気配!?)

「おい!! 待てよ、俊秀!!」


 俊秀は外に飛び出した。健も俊秀の後を追う。

 外に出ると村は火が上がり、以前俊秀の町を襲った怪物に良く似たのが群がっていた。

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