マゴッタ chapt 8 VIVA ソラノキ sec.2
こんにちは、kzfactryです。今回の『マゴッタ』sec.2は色々考えた挙句に結構長いセクションになってしまいました。読んで頂けると私の苦労もうかがえる(?)と思うのでのんびり読んで楽しんで頂ければ幸いです。
sec.2
『今日こそは、今日こそは!今日~~こそはSAYアジーンに勝って見せる!!』
ぐっ! ゴウッ!!
握りこぶしをして瞳の中に炎を燃やしているのはトノサマガエルの妖精さん。濃い緑色の和服にライムグリーン色の羽織を着ている。彼の名前はさくら家ToNOサマー。新進気鋭のクラッシックLaクーゴの名手だ。ここはASクワーサーHallの控室。巨大な炎をまとって立ち上がっている彼の目の前には三人の妖精さんが座布団の上に正座で座っていた。それぞれ橙色、白色、青色の羽織をまとっている。その中の橙色の羽織を着ているトノサマガエルの妖精さんが両手を拡声器の様に口に当ててToNOサマーに向かって
『よ♡!さすがはさくら家の真打ToNOサマー、カッコいいよ!兄弟子♡!』
…よいしょ芸?かどうかは解らないがToNOサマーと呼ばれた妖精さんはますます燃えたぎる。
『あんな”客イジリ”芸とコミカルな動きで笑わせるのは邪道も邪道!我等カエルの妖精が蛇などと、う~~ぶるる、縁起でもない!やはりクラッシックLaクーゴは原点にカエルって噺で勝負するべきだ!!』
うんうん うんうん
ToNOサマーの前にはトノサマガエルの妖精さんが三人座布団の上に正座をして座っている。感心しきりと大きくうなずいているのは橙色の羽織を着たToNOオータム。さくら家ではToNOサマーに続いて二番手の実力者。兄弟子のToNOサマーを尊敬し、同じくクラッシックLaクーゴを主芸として勉強中のさくら家のホープだ。その横に座っているのは一回り小さいトノサマガエルの妖精さん。白の羽織を着ているが本人も色がとっても白い。女の子の様だ。まつげが長く瞳はピンク色である。ToNOウインタ。まだ新弟子で自分の芸を模索中の妖精さんだ。…?何故か顔色が青い。冷や汗もかいているようだ。その隣にいるのはToNOスプリン。こちらの妖精さんも新弟子。ToNOウインタより更に一回り小さい。少し大き過ぎてダブダブの青い羽織を着ている。やはりToNOウインタと同じく芸を模索中の様。…??ToNOウインタと同じように顔色を青くして脂汗をかいている。
よく見るとToNOウインタの後ろにはフリルの付いたしゃれた白い傘が。それと黄色いテニスボールと表面に細かくきれいな模様が入っている木の箱。…?お噺に使うのかしら?ToNOスプリンの後ろにもちょっと変わったものが。Tの字型の杖?横になったバーの両側に握るところがあり、下に伸びた杖の部分の一番下にはコイル状のスプリングが付いていてその上に踏み版の様な物も。工具?遊具?
その間もしゃべり続けていたToNOサマーはますますヒートアップしている。なんなら目から火を噴いている。凄い。
『我々Laクーゴ家は噺こそが全て!さくら家の者は邪道な小手先笑いで芸をする事は許さん!見つけたら破門だからな!!』
ギクッ! パクンッ ふがふが
ギクギクッ! パク ふご ふごご
…?何か変な音が聞こえたが…。見るとToNOウインタは口の先からJの形を逆さにしたようなものが飛び出ていて、飲み込みきれないでバタバタしている。ToNOスプリンは口の外にグリップの付いた横笛の様な物を咥え、やはり飲み込みきれずに往生しているようだ。
『?!何だ?お前たち。まだ昼飯終わらせてなかったのか、早く終わらせてちゃんとアタシの噺芸を聞くんだよ!』
ToNOサマーはそう言うとぷりぷりと怒りながら部屋を出て行った。ToNOウインタとToNOスプリンの様子が違うのに気付かなかったようだ。カエルの妖精さんではこのくらいの食事シーンは日常茶飯事なのだろうか?
*
『あいっ!マゴッタちゃんやあらんやびーが?』
『はぁーや?あいっ!ふんとーやん、マゴッタちゃんやん。みーどぅーさん♡』
ASクワーサーHallの客席に入ってきたマゴッタ達三人に声をかけてきた妖精さん達がいた。…話しかけた内容は解らなかったが。よく見るとそれは、おや懐かしい、パパイヤの妖精のPAIパヤさんとゴーヤの妖精である04ゴヤさんだ。シーサーキングダムではご馳走になりました♡二人を見たWooちゃんは途端に上機嫌になった。Wooちゃんにとって食べ物をくれる人はとっても良い人なのだ。PAIパヤさんは続けて
『KB佐藤さんからちちょーいびーん♡アメイジングステイツでみーかんげーなたんってぃ♡』
WooちゃんはニッコニコしているがマゴッタとサーメNYANは解らない。とっても解らない。二人がオロオロしていると04ゴヤさんがはっとしたように
『あいや~!いげーぬ人は解らんさやー!』
それを聞いたPAIパヤさんが目を見開いて
『あんやたんっ!うぬくとぅむるわしとーいびたんっ!』
と大きな声で言うが勿論解らない。するとPAIパヤさんが
『んちゃ、ちゅーやこーたんみやげーあったさー♡』
そう言って自分の脇に置いといた紙袋の中をごそごそ。その紙袋にはサツマイモをオシャレに描いたイラストがあり、”おみや”と言う素敵な文字が書いてあった。
『んむまーさひんやたからこーてぃーどー…』
そう言いながらPAIパヤさんがオシャレな紙袋から出したのは、”ポテトナヨカン”と”イモキンカルテット”と書いてあるサツマイモのスイーツのお土産。一つは羊羹、もう一つは金つばのようだ。とっても美味しそう。わ、二つもある。今回こそはマゴッタも食べられるか?
『さーかめー……』
しゅ しゅるるるるる~~~~!
PAIパヤさんが三人におみやを渡そうとしたその刹那、Wooちゃんの口の中から何かが二本発射された?その物体はとてつもない高速で二つのおみやの袋をド真ん中からぶち抜く。気が付くとおみやの袋は両方とも真円状にくり貫かれていた。
『あぎじゃべ~~~!! 』
PAIパヤさんのまさに魂の絶叫。いつもは完熟パパイヤの黄色いお肌が未完熟の濃い青緑色に。余程怖かったのだろう。可哀想。それにしてもWooちゃんの口の中から射出されたモノとは…?サーメNYANに妨害された行為に対応するべくこの短い間に進化したのだろうか?さすがWooちゃん。しかしまだその能力の制御に習熟していないのかPAIパヤさんが持っているおみやの袋の手持ち部分が片方切れており、青緑色になって震えているPAIパヤさんの手元でぷらんぷらん揺れている。……本気でPAIパヤさんは生命の危機だったのかもしれない。
もっちゅもっちゅ♡
逆にWooちゃんはまさに至福、という表情で咀嚼している。いつもよりWooちゃんの体色のピンク色が濃いような?
『Wooooo~~~~!♡』
Wooちゃんはくるくる回って淡いピンクのオーラを放つ。すると…
『あわわ、ホントに寿命が半分になったよ~~』
PAIパヤさんは全身冷や汗をかいていたが、体色が本来の黄色に少しずつ戻ってきていた。…御迷惑おかけします。
『…ふう、やっと落ち着いた。マゴッタちゃんありがとね。この間KB佐藤さんがアメイジングステイツで凄くお世話になったってね♡まだ向こうから帰ってきてないけどマゴッタちゃんに会ったらお礼言っといてって言ってたよ♡』
さすがシーサーキングダムの妖精さんだ。とってもタフ。立ち直りが早い。04ゴヤさんと二人でニッコニコしている。
『二人してクニサンエンパイヤに遊びに来たんだけどやっぱり凄いね、クニサンエンパイヤは♡何食べても美味しいし♡』
すっかり体色がもとの完熟パパイヤの色に戻ったPAIパヤさんが嬉しそうに言うとそれを受けて04ゴヤさんも、
『そうそう、ここもASクワーサーHallって看板出ているからてっきり美味しい物がたくさんある所だと思って入ったんだけどねぇ、ソースキングダムの新世界花月の様な所みたいねぇ♡面白そうだからPAIパヤさんと見ていこうかって♡マゴッタちゃん達も見にきたの?』
PAIパヤさん04ゴヤさんともシーサーキングダムで見た時より完熟という感じで丸々としていたが、食への情熱はいささかも衰えてないらしい。それにエンターテイメントも大好きなようだ。マゴッタは自分と趣味の合うシーサーキングダムの妖精さん達が大好き♡……マゴッタはいつもスイーツを食べられないが。五人で並んでLaクーゴを見ることに。ASクワーサーHallは半分くらいの客入り。おや…
どんどんどんどどん どんどんどんどどん♫
Laクーゴの演目が始まるようだ。楽しみ楽しみ♡
*
<さくら家ToNOサマー> <Timeランメン>
演目にはそう書いてあり待っていると目の覚めるようなライムグリーンの羽織を着たカエルの妖精さんが入ってきた。ずんずんずんずん力強い足取りで目がファイヤーしている。情熱家さんのようだ。
どすんっ
中央に置かれた座布団の上に勢いよく正座すると熱く、熱~~~く語り出した。なんでもヤタイなるところでランメンなる物を食べるお噺らしい。
『ランメンてな~に?』
マゴッタがサーメNYANに尋ねるとサーメNYANはニッコニコしながら
『細長くておつゆに入っている食べ物にゃん♡でも甘くないにゃん』
『そうなんだぁ、じゃあ食べられないね…』
そこでPAIパヤさんが小首をかしげて
『シーサーキングダムのソーキンおそばみたいなものかねぇ?とっても美味しいおそばなのかしら?』
『タマサンフリーダムにも美味しいランメンあるにゃん♡でもこのクラッシックLaクーゴはおそばを褒めながらすする音を聞かせるお噺…』
ごっくん
…ToNOサマーはカエルの妖精さんなので食べ物は基本丸のみだった。
『にゃん!?』
サーメNYANもびっくり。切れ長のおめめを大きく開いている。それをみた04ゴヤさんも
『あらあら、さすがカエルの妖精さんねぇ、うつわも食べちゃった。大食いさんのお噺なのかねぇ?』
『にゃにゃにゃんっ?』
サーメNYANは困った顔をして右に左に首を捻っている。可愛い♡しかしサーメNYAN本人は渋目を閉じて考え中だ。
『あれあれ、15杯も器ごと食べちゃった。大食いさんのお噺なのかねぇ?』
『それを隣の人が真似をして?あら、数え間違えちゃった。隣の人は20杯も食べるのね』
妖精さんは皆心優しいので食べ過ぎでお腹を壊さないか心配している。笑うどころの話ではない。会場はハラハラして静まり返ってしまった。
『……にゃぁ~~ん…』
サーメNYANも細く長い溜息をつくと静かになってしまった。??
やがてToNOサマーはお噺を語り終えるとがっくり首を落としてとぼとぼとはけていった。
『あらら、やっぱりお腹壊しちゃったのねぇ、心配だわ』
04ゴヤさんもとっても優しい。…ただ、Laクーゴとしては……ToNOサマーの後姿はやけに寂しげだった。おっと、次の演目が始まるようだ。めくりがめくられ次の演目が現れる。
<くろうす亭 車車一穴> <闇夜の烏>
とことことこ
現れたのは如何にも新進気鋭と言う雰囲気の烏の妖精さん。紫色の羽織はかまを着ている。中央の座布団に正座をすると観客席にお辞儀をして話し出した。
『こんにちは。くろうす亭”かあかああほう”と申します。よろしくお見知りおき下さい』
それを聞いたサーメNYANはめくりの文字を見ながら上目遣いで考えていたが、ポン、と手を叩くと。
『なるほど、う~まにゃん♡』
とキラッキラしたおめめになった。とっても可愛い。そして車車一穴さんが喋り出す。
『昔々とある夜中の墓地にお爺さんの烏が一人いました…』
怪談話かしら?子供のマゴッタはキュッっとなってしまった。
『…おっと丁度零時レイフンになったねぇ。そそっかしいワシは昨日線香をあげてしまったよ。本当は今日が命日だったよね。ワシは鳥としては一本足りない様だ。許しておくれ』
ほっ、怪談話ではない様だ。マゴッタはほっとした。怪談話でない証拠にサーメNYANがつくづく
『うまいにゃぁん』
と感心している。サーメNYANを唸らせる車車一穴。達人か?
『昔はよく二人で本格の盗賊として暴れまわったものだねぇ。夜烏何て呼ばれたりして。二人して干し柿をたんまりため込んでいる業突なうちに忍び込んじゃあ…』
泥棒さんのお噺?いけない事だよ?すると車車一穴は立ち上がってパントマイムを始めた。
ぱあっ 羽を広げて干し柿を盗ろうとしてよろけて声を出しそうになる
しっ 仲間の烏が慌てて口を塞ぐ
二人して盗んだ干し柿を両脇一杯に抱え込むパントマイム。ホントお上手。すると相方が
もん 『から堂々と出て行ってやろうぜ、へへ』
そうやって堂々と出ていく様子を見事なパントマイムで表現する。素晴らしい芸だ。サーメNYANは感心しきり。しかし…しばらく聞いているうちにサーメNYANは困った顔になり出した。サーメNYANの百面相もかなりのエンターテイメントである。
『いつも窮地に陥りそうなときに助けてくれたね。ワシはドジであんたにゃ何時もネジが一本外れてるどころか歯車が一本外れてる…なんてからかわれたっけ。クロウをかけたねぇ。あれからずいぶん月日も経ってワシもすっかり年老いた。ヤタヤタ、今じゃすっかり身体も弱って杖をつくようになって三本足になっちまった』
サーメNYANの顔が困り顔からじれったい、の顔に。何ならハンカチを口に咥えて引っ張ってる。
『上手すぎにゃん…上手すぎて伝わって無いにゃん』
むしろサーメNYANの百面相の方を観客が見出した。その位サーメNYANの百面相は面白可愛かった。心なしか車車一穴に焦りの表情が。
『…あのまま行けば二人して天下に夜烏の名を轟かせることが出来たのに…
すみませんアホウなワシ、は車を一つ落としてしまいまして轟くことができませんでした…』
そう締めて観客にお辞儀をし、ToNOサマーと同じくして首と肩を落として帰り出す。するとサーメNYANが
『とっても上手だったにゃ~~~~ん!!』
そう言いながらサーメNYANはハンカチをふりふり見送ってくれる。それを見た観客が
『可愛い♡』 『猫の妖精さん?♡』 『ちょっと違うかな?巻貝の妖精さんじゃない?♡』
などとギャラリーのレディース妖精さんのハートをガッチリ掴んだ様だ。さすがサーメNYAN。それを見た車車一穴が
『しょせん”かあかあ”の私では”かあわいい”には勝てません。今イチな私はトリにはなれませんでした…あんまり上手くない、くっ!』
そう言うと車車一穴は羽で涙を押さえながら帰って行った。可哀想。
『食べ物のお噺だったのかねぇ?干し柿ってシーサーキングダムでは見たことないけど…』
04ゴヤさんが言うとPAIパヤさんも
『石垣の事をクニサンエンパイヤでは干し柿っていうのかねぇ?そう言えばシーサーキングダムには石垣が沢山あるけどクニサンエンパイヤにはあんまり無いねぇ。それにクニサンエンパイヤじゃ星が全然見えないし。シーサーキングダムが恋しくなっちゃったよ、ホシガキれいだからね♡』
あらら、PAIパヤさんはホームシックかしら。それにしてもPAIパヤさんもとってもお上手♡
なかなか難しい大人のお噺にWooちゃんはうとうとし出している。マゴッタもつられるようにうとうとと。やはり子供にはLaクーゴは早かったのかな?
<サンテン号 SAYアジーン> <こわ~いダ~イフク>
おっと、いよいよトリのLaクーゴが始まるようだ。ひときわオシャレな三味線と太鼓の音が。
ぺんぺんぺんぺん てんつくてん♫
おや?呼び出しのお囃子が鳴り出したのに誰も現れないぞ?ここぞとばかりに(?)お囃子のリズムに乗りながらマゴッタとWooちゃんがこっくりこっくり舟を漕ぎ出した。04ゴヤさんとPAIパヤさんは今度はオセンベを二人で食べだした。…この二人は無限に食べ物を持っているのだろうか?
ばりんばりんばりん♫ ぼりんぼりんばりん♫
二人の咀嚼音がお囃子のリズムとぴったり合ってセッションの様に音楽を奏でている。お二人とも流石です♡
すると、マゴッタとWooちゃんの真後ろから…
『あれあれ~?こんなところにとっても油断してお舟を漕いでいるタマゴの妖精さんがいるぞ~、ゆるせんど~、食べちゃおうかな♡』
何やら穏やかじゃないセリフが聞こえてきた。マゴッタとWooちゃんの生命の危機か?
『きゃっ!!』 『う~~~っ!!』
マゴッタとWooちゃんが慌てて飛び起きる。どきどき。04ゴヤさんとPAIパヤさんも目をぱちくりさせてオセンベを咥えたままピタッと止まる。四人がじ~っと見る視線の先には…
にこやかに笑っているカエルの妖精さんがいた。そのカエルの妖精さんは04ゴヤさんとPAIパヤさんの二人を見てオヤッと言う顔になり
『おやおや、これは失礼しました。こんなに素敵なレイディが二人も付いていらっしゃったなんて』
04ゴヤさんとPAIパヤさんは素敵なレイディと言われて嬉しそう。オセンベを咥えながらニコーっとしている。マゴッタとWooちゃんはドキドキ。とりあえず食べられてしまうピンチは脱したか?
『それでは皆さんお噺を聞く準備ができたようですねぇ、アタシもお噺の準備ができましたので始めさせてもらいますよ♡』
そう言ってカエルの妖精さんはてくてくと…と、この蛙の妖精さんは一本足の様だ。しかしとっても滑らかにぴょんこぴょんこ歩く。そして座布団に座り一礼すると…目を細めてひそひそ声で話し出した。怖い噺かしら?
『…皆さんはこわ~いダ~イフクと言うのをご存じですか…』
とっても恐ろしそうな喋り方にマゴッタはきゅっとしたが、ん?ダ~イフク?それってもしかしてもちっとしてて甘くて美味し~~い?ダ~イフクと聞いてWooちゃんセンサーが働いた。きゅるんとした可愛いおめめと緑の触覚センサーも使って(どう使うかは定かではないが)ダ~イフクを一生懸命探している。Wooちゃんのセンサーをフルに使ってもダ~イフクは発見できなかったようで、パントマイムだと気付いたようだ。ちょっと寂しげな顔をしている。可哀想。…それにマゴッタはSAYアジーンのパントマイムに興味を持ったようだ。ダンスとは違うがSAYアジーンの名人芸の動きに興味津々。目をキラキラさせながら自分も真似を始めた。…タマゴの妖精の子供なので手も小っちゃくて短いから何をやっているか良く解らないが。サーメNYANはSAYアジーンの名人芸に感心しきり。笑うというよりのめり込んで見ている。その間にもSAYアジーンのお噺とパントマイムは最高潮。お噺はやたらダ~イフクを怖がる妖精さんに意地悪な妖精さんがわざとダ~イフクを見せて怖がらせるというフクザツなお噺だったが、SAYアジーンの名調子のお喋りとパントマイムによって会場のギャラリーの心をガッチリと掴んでいた。さすが名人。
『…みかん、イチゴ、メロン、キウイ…全く、どんなフルーツが出るんだかわかりゃしない。あ~~嫌だ嫌だ』
SAYアジーンは両肩を抱えて大げさにぶるぶると震える。顔を背けながら怖そうにダ~イフクの場所を見て、
しゅるんっ パクッ
もぐもぐもぐ♫ もぐもぐもぐ♫
僅かに開いた口から下を高速で伸ばしてダ~イフクを食べ、とってもリズミカルにもぐもぐもぐ。これだけのパントマイムをまるでミュージカルの様に流れる様にこなす。さすが名人芸。
『ん、ん、ん~~?これはメロンダ~イフクですねぇ。さてはこの私をメロンメロンにしようとしてるんですね、なんて恐ろしい…』
SAYアジーンは本当に両肩を抱えてぶるぶると震えている。正に迫真の演技。ギャラリーの妖精さん達は思わず引き込まれる。
『なかのフルーツをこんなに自在に変えられるなんて…まるで魔術。ひゃ~怖い。忘れないように油性のペンでちゃんとメモをしないといけないです』
きゅきゅきゅ♫ きゅきゅきゅ♫
SAYアジーンは書く動作とタイミングを合わせてお尻をスイングする。とってもプリティ。
きゅきゅきゅっきゅ♫ きゅきゅきゅっきゅ♫
会場全体のギャラリー達がSAYアジーンの名調子につられてお尻をスイングし出す。思わずマゴッタのダンス魂に火が付き、席から下りてダンスを始めようと…したらSAYアジーンの動きがピタッと止まる。
『が~~ん、油性ペンのインクが無くなっちゃった。ああ、これではどれがどれだか覚えられない。怖い怖い、いっそみんな食べてしまうしまうか。パクパクパク♫パクパクパク♫……うむぅ、口の中で甘味とフルーツの酸味が絡み合って何と言うハーモニーを…ああ、怖い怖い。これで抹茶ラッテンまで出されたらそれはそれは…こんな怖い事があるでしょうか…これぞ最大の危機!』
SAYアジーンは両目を閉じて抹茶ラッテンをすする仕草を始めるが…おや?表情はとっても美味しそうで至福の表情に見えるぞ??
ズーズズズッズ♫ ズーズズズッズ♫
『ギャラリーのみんなが大好きなので怖い抹茶ラッテンも美味しくいただくことが出来ました…』
そうSAYアジーンは言葉を結ぶと深々とギャラリーの妖精さん達に頭を下げて高座を後にした。
わ~~~っ、パチパチパチッ
今日初めての満場の拍手。SAYアジーンは舞台の袖に向かいながらもしっかりとお辞儀。
(…ふうっ、今日は厳しい高座でしたねぇ。何故かダ~イフクを表現する最中にとてつもない殺気を感じたし、ダンサブルなタマゴの妖精さんはいるし、やたら芸を見る目が厳しいお客さんはいるし…)
SAYアジーンは三人のタマゴ達を見ながら一つ安堵のため息をつく。
(危うくあの元気で可愛いタマゴちゃん達に寄席の主導権を取られるところでしたねぇ…危ない危ない)
SAYアジーンはちょっと困り顔の様な、でもそれも悪くないという感じの苦笑いを浮かべ、
(ふふふ、お返しにちょっと意地悪な仕込みをしたけど気付いてくれたかねぇ?)
SAYアジーンはニッコニコしながらサーメNYANの方を見ると、
(それにしてもあのお客さんは猫の妖精さんかねぇ?それともアンモニャイトの妖精さんかな?)
そう首を捻りながら舞台袖にはけて行った。
テテテテテテテテテテテ♫ テン テテン♫ テン テテン♫ テケテケテケ♫
ギャラリー達は大満足顔で”追い出し”太鼓のリズムにお尻を振りながらホールを後にする。皆さんとっても楽しかったみたい。さすが名人。
タタタタタッ
『ああ、間に合わなかったか…くぅ~~、残念!』
息急き切ってASクワーサーHallに飛び込んできたのはズーメSuさん。よっぽど急いだみたいで大汗かいている。
『今日はこわ~いダ~イフクだったんですよね?このお噺の時は入口の売店でダ~イフクと抹茶ラッテンに行列が出来るからすぐ解るんですよ。みんなSAYアジーンさんの名人芸にあてられて両方とも欲しくなっちゃうから♡今も売店は大行列です。いやぁ、観たかったなぁ』
ホントにズーメSuさんは残念そう。
『あ、そうだ!いけないいけない。スミーダRivファイヤーフラワーフェスティバルがもうすぐ始まります。合同エアリアルショーの準備も出来ました♡皆さん移動してください♡』
マゴッタはそれを聞いてニコーっと笑顔になり。
『行きます行きます!すっごい楽しみ♡』
と満面の笑顔。しかしWooちゃんはダ~イフクの行列をじ~~っ、と見ている。じ~~~~~っと見ている。
『Wooちゃんさん、その行列は物凄く待ちますよ。私達の方でもスイーツを用意しています♡』
ニパ~~~ッ♡
その言葉を聞いたWooちゃんが一瞬で笑顔になった。ピタッとズーメSuさんの後ろにくっつく。Wooちゃんはとってもラブリーなくらい現金。後はサーメNYANだが…あれ?サーメNYANの様子がちょっと変だぞ?
(…凄かったにゃん。ギャラリーの好みを素早く見抜いてリズム芸からパントマイムに引き込んだにゃん。ワードプレイこそ少なかったけどなんと言うギャラリーコントロールの妙技。すっごく勉強になったにゃん。……でも、何か、それだけじゃあにゃいような……)
サーメNYANは考え込んでしまった。そして、おや?小さい両腕を目一杯伸ばして渦巻き状の頭を持ったぞ?
『NYANputerスイッチオン!』
そうサーメNYANは叫ぶといつも回転させる方向とは逆方向に渦巻き状の頭を回転させる。すると渦巻き状の頭はネジのように回りながら下降して丁度半回転したところで
カチッ
と言う音と共に止まった。サーメNYANの切れ長の目が半分隠れる格好になる。そしていつも丸っこいW型のお口がその半目と繋がった。すると
ピーッ カチャカチャカチャ カチャカチャカチャ
頭に散りばめられているヤクミが赤、白、黄色とランダムに光り出し、半目になった両目が回転し出す。お口がその両目を繋ぐテープの様な役割に。これがサーメNYANの奥義(?)NYANputer。サーメNYANが自身の表層意識では解析出来ないと判断した時だけに出す大技である。
ウィィィィ~~~~ン フォォォ~~~~
光の点滅も早くなり、テープで繋がった両目の回転も高速に。どこかに空冷ファンでも付いているのだろうか、熱気が頭のてっぺんから凄い勢いで上に向かって上がっている。猛烈な勢いで計算中の様だ。…ただ、サーメNYANはまだ子供なのでNYANputerも進化前。処理速度がとっても遅い様だ、残念…。
『あらら、サーメNYAN考えこんじゃった…。どうしよう、Wooちゃん』
マゴッタはちょっと困り顔でWooちゃんを見る。NYANputerモードで考え込んでしまったサーメNYANは動けなくなってしまうのだ。マゴッタはそれをよく知っているようだ。ズーメSuさんが迎えに来ているのでのんびり考え事が終わるのを待つのも…と思っていたら
しゅるん ぴとっ
Wooちゃんが緑の触手を伸ばしてサーメNYANの背中にくっつけた(持った?)。そのままずるずると引き摺って行く。あらWooちゃん力持ち。ちょっとサーメNYANが可哀想だが何となく大きなストラップの様にも見える。かくしてタマゴちゃん達はみんなおのぼりさん気分で楽しんでいるようですが、何かお忘れでは?
*
読んで頂けました?今回は展開を変えた事もありかなり苦労しました。色々考えて仕込んでいるうちに楽しくなってきちゃって(?)結構解り辛いのも仕込んであります。解った時にちょっとした喜びを感じていただけると幸いです。
kzfactry




