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『狂犬お市様』 〜転生八回目、戦国を生活で支配した姫〜   作者: イサクララツカ


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36話 赤塚の戦い その5 ――白目むく山口――

西暦一五五二年(天文二十一年)五月下旬 初夏 尾張・赤塚

――狂犬記/作者:桃(お市様祐筆)

 敵一二〇〇と織田八百が、真正面からぶつかった。

 ぶつかった、というより――

叩き潰した。

「うおおおおおお!!」

「姫様ぁぁぁ!!」

「俺たちの尾張ぃぃぃ!!」

 織田家臣団の突撃力が、明らかにおかしい。

 歌いながら、叫びながら、拳を突き上げて、前に進む。

「士気が……高すぎる……!」

「誰だこんな戦い方考えたのは!?」

 ――誰だと思う。

 そのど真ん中、深紅の鎧。

 豊臣号を駆る、お市様がいた。

「……ふむ」

 お市様は、退屈そうに前方を眺める。

「割れたの」

「姫様! 敵陣、割れてます!」

「うむ、見えておる」

「では指示を――」

「指示?」

「作戦とか……」

 お市様は、にやりと笑った。

「山口を潰す」

「短い!!」

 軍が割れた隙間を、お市様は気合い一発で突き進んだ。

 豊臣号が地を蹴る。

「行くぞ、藤吉郎!」

「はい!!」

「さくら!」

「はいっ!」

「あやめ!」

「はい!」

「せつな!」

「はいはい!」

 四人が即応する。

「右の山口はお前たちじゃ!」

「了解!」

「わらわは左じゃ!!」

「姫様、それ一番危ないやつです!」(桃)

「危なくない戦は退屈じゃ」(お市)

「退屈で戦うなぁぁ!!」

◆左――山口親父

 馬上の男が見えた。

 山口親父。

 槍をしごき、狙いを定める。

「狂犬姫ィ!!」

「ほう、名を知っておるか」

「貴様を討てば、尾張は――」

 ビュッ!!

 槍が突き出された。

「姫様っ!!」

 私の叫びと同時に――

「ぬるいぞ、貴様!!」

 お市様は叫び、

 左手で槍を弾き上げた。

「なっ――!?」

 その瞬間、お市様は距離を詰めた。

 豊臣号ごと、飛び込む。

「は!?」

「遅い」

 ドンッ!!

 馬上から飛びかかり、組み付いた。

「ぐっ――!」

 二人はもつれ合いながら地面へ転がる。

「姫様ぁぁ!!」

「落ちた!?」

「いや――」

 次の瞬間。

 お市様が、山口親父の上に馬乗りになっていた。

「は……?」

「……終わりじゃ」

 バゴッ!!

「ぐっ!!」

 顎に一撃。

バゴッ!!

バゴッ!!

「ま、待――」

「待たぬ」

バゴッ!!

 顔面がみるみる腫れ上がる。

「姫様! もう白目――」

「まだ」

バゴッ!!

 ――白目。

「……白目むいたぁ!!」

「気絶したな」

「“な”じゃないです!!」

 お市様は、山口親父の足を掴み、手際よく縄を巻いた。

「縛っとくか」

「手際が良すぎる!!」

 そして――

 ずるずるずる!!

「姫様!? 引きずってます!!」

「運んでおる」

「運び方ぁ!!」

 気絶した山口親父は、

 縄で縛られ、豊臣号に引きずられ、

 全力疾走で信長様の方へ運ばれていった。

 無残である。

 実に無残である。

(※狂犬式)

◆右――山口息子

「父上ぇぇ!!」

 山口息子が叫んだ瞬間、

 四人に囲まれた。

「はい、終了」

「逃げ道なし」

「初陣、行くよー!」

「くっ、木下藤吉郎ォ!!」

「恨むな」

「何を――」

 ガンッ!!

 藤吉郎の槍が、脚を正確に打つ。

「ぐあっ!!」

「致命傷なし」

「動けないね」

「捕縛する」

 あやめが腕を極め、

 さくらが体勢を崩し、

 せつなが縄を投げた。

「はい、伊賀流縛り!」

「やめろぉぉ!!」

 ――捕縛完了。

「姫様! こちらも完了です!」

「うむ、よい」

「……山口親父は?」

「運んでおる」

「運び方が狂犬です!」

◆戦の終わり

 大将二人を失い、

 山口勢は完全に崩れた。

「逃げろ!!」

「もう無理だ!!」

 敵兵は散り、逃げ、武器を捨てた。

 戦は――終わった。

 お市様は、引きずってきた山口親父を、

 信長様の前にどさっと落とした。

「兄上、贈り物じゃ」

「……白目?」

「白目」

「……生きてる?」

「生きておる。不殺じゃ」

「殴り方が不殺に見えん……」

 藤吉郎たちも、山口息子を連れてくる。

「こちらも」

「……親子揃って?」

「揃えた」

 信長様は、胃を押さえた。

「……市よ」

「なんじゃ兄上」

「お前は戦を何だと思っている」

「舞台じゃ」

「……そうか」

桃の感想(祐筆)

 不殺とは、殺さないだけで、優しいとは限らない。

 白目をむかせ、引きずり回し、捕縛する。

 それを笑顔でやる姫様は、やはり狂犬である。

 私は筆を握りながら、胃を押さえた。

桃の日記(狂犬記)

 ・山口親父:白目、気絶、縄、引きずられる

 ・山口息子:捕縛、生存

 ・織田軍:勝利

 ・姫様:無傷、上機嫌

 ・私:胃が痛い

 今日も尾張は平和である(錯乱)。

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