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日出る国の革命  作者: てん


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第1話――秋田を出る日

 朝の空気は、まだ冷たかった。

 春に近づいているはずなのに、秋田の朝は簡単に人を現実へ引き戻す。


 少年は駅のホームに立っていた。


 十五歳。

 学生服の上に、少し大きめのコート。

 肩には、使い込まれたリュック一つ。


 周囲には、いつもと変わらない光景がある。

 通学の高校生。

 出張らしいサラリーマン。

 観光客らしき家族連れ。


 平和だった。


 ――だからこそ、違和感がある。


 ニュースモニターに映る字幕が、また流れる。


「追加税制改正案、可決」

「財源確保のため、地方負担を強化」


 地方。

 その言葉は、いつも都合よく使われる。


 秋田。

 ここは、いつも後回しだ。


 少年は画面から目を逸らした。


(この国は……

 いつから、こんなだった)


 誰が決めているのか分からない。

 でも、決定権を持つ人間の顔ぶれが、

 いつの間にか“変わっている”ことだけは、皆が知っている。


 名前は日本名。

 言葉も日本語。

 けれど、

 どこか、この国の痛みに興味がない。


「……行くか」


 誰に言うでもなく呟き、

 少年は改札を抜けた。



 秋田新幹線・こまちの車内は、静かだった。


 指定席。

 窓側。


 座席に深く腰を下ろし、リュックを足元に置く。

 ドアが閉まり、低い振動が走る。


 ――東京。


 急進派の中心。

 能力を「抑える」より、「使う」ことを選んだ場所。

 能力を磨ける高校がある街。


 少年は、ポケットから駅弁を取り出した。


 花善の鶏めし弁当。


 秋田では、当たり前すぎる味。

 それでも、今日は少し特別だった。


 蓋を開けると、

 鶏の旨味が染み込んだ鶏そぼろとご飯の絶妙な素朴で、

 誤魔化しのない少し甘めの味。


 一口、食べる。


「……うまい」


 声に出して、そう思った。


(こういうものまで、

 守れなくなる国には……)


 なってほしくない。


 それだけは、はっきりしている。


 能力があるから、戦う。

 正義だから、戦う。


 そんな立派な理由は、まだない。


 ただ――


(勝手に決められて、

 勝手に搾り取られて、

 気づいたら、乗っ取られてる)


 そんな国を、

 黙って見ている気はなかった。


 新幹線が加速する。

 景色が、ゆっくりと後ろへ流れていく。


 秋田の田畑。

 古い家並み。

 見慣れた景色。


 少年は窓に映る自分を見た。


「革命、なんて言葉は……

 まだ、似合わないな」


 そう言って、もう一口、鶏めしを食べる。


 だが、胸の奥には、確かな予感があった。


 東京で、何かが始まる。

 能力を磨くだけじゃ、終わらない。


 この国の“裏側”に、

 必ず辿り着く。


 新幹線は南へ走る。


 ――

 それは、

 静かな出発だった。


 だが後に、この日が

 「日出る国の革命の始点」

 だったと、語られることになる。


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