第五章 不落のヴェセア城
――――ヴェセア城・門前――――
「結構……いや、かなりのでかさだなぁ」
ここの敷地は、しいて言うなら東京○ィ○ニー○ーぐらいの大きさだ
それはさすがに……と思うだろうがほんとにそうだからしかたがない
「そうでもない、ここより大きい敷地は他にもあるからな」
他にもここよりでかい所があるのかぁ……
この世界どんだけ広いんだよ
「城も豪華だなぁ……」
ギフェアが門を開け中に入ると、城までの距離は1キロはあるだろう
城の入り口が見える程、道はまっすぐだった。目がかすむほど地面がピカピカとひかり
両脇にはある一定の距離に柱が置かれていて1つ1つに絵が描かれていた。
ほぼ白・水色で統一された庭……噴水は左右の花畑に1つずつかぁ…すげぇ~
「では、ブレイク。次は中庭のほうの案内を」
そう言われ俺は後でミシェルに話を聞かせてやろうとじっくり見て庭を後にした。
――――ヴェセア城・中庭――――
俺は城に囲まれた中庭のところまで来た
この城は紅色をベースに白と金で綺麗にそしてかっこよく彩られていた
この城の紋章はきっと金色の剣を2本持ったグリフォンだ。
今まで通ってきた道にはそんな垂幕がいくつもあったからという予想だが、きっとそうに違いない
周りを見渡せば噴水の所に水色の壺を抱えた女神像が立っていて
花壇には見たこともないような不思議な花を咲かせているし、いや~凄すぎるだろ……
「あ、そこの花はキュイートと呼ばれる花で、四季が変われば色も変わりますよ」
日本じゃ考えられないことだ、写真にとっておきたいのだが
第一俺は死んでるからとうぜんながら所持品は何ひとつ俺の部屋だ……
「中庭の紹介も終わりましたことだし姫様にでも挨拶に行かれたらどうですか?」
お姫様いるの!?ハッキリ言って、内心踊りまくりである
きっと、こんな綺麗なお城にお住みになっているから清楚で可憐でとても可愛いんだろうなぁ。
もちろん「はい」と返事をした
中庭を後にして城の赤絨毯の敷かれた階段を登っていくと、5階だろうか?
一際目立つ金に縁取られた赤色の扉があった
「ここが姫様の部屋でございます。まぁ正式には面会の場でもありますが……」
「えっと、それはどういう意味で?」
「姫様の部屋はここの他にももう1つあるので、姫様の許可が無いとそちらには誰も入ることの出来ない部屋になっています」
「そうなんですか」
そういうとガチャッ!!と扉を開けた
「失礼します姫様」
ギフェアが開けたその先には人影が見当たらない
「姫様?……」
そう言いながらギフェアさんは探し始めたがどこにもいない様子だった。
それよりか姫様の部屋にノックなしに入るとか……。良いんスかねぇ。
「ブレイク、ここらで座って待っていてはくれないか?」
「あ、はい。わかりました」
俺はひとまず座ると軽く礼をしてギフェア達は部屋から出て行ってしまった。
誰もいない空間にただ一人……
「そういえば、ここ最近一人になったことが無かったな」
そういいながら腕を組んだ
いままで忙しいことが数え切れないほどたくさんあった
俺はもう、元の世界に変えることは出来ないだろうけど、こちらの世界でもなんとかやっていけそうだな。そんな過去を振り返りながら周りを見渡すとこの部屋には、たくさんのお偉いさんだろうか?写真が飾られている。そのほかにはシャンデリアやよく見ると下は大理石で鳥のような絵が作られている
椅子から立ちしばらくの間いろいろな物を見て回った。、どれも不思議でとても美しかった。
「なにもかもが高そうな物だな~この部屋にある装飾品だけで数億はしそうだよな」
そんな感想を述べて再び椅子に座ると左側の扉に影が映り
ガチャリと扉の音を立ててかわいらしい女の子が出てきた
「ふぁ~ぁ、よく寝たぁ……っ!? どっ、どどどちら様でしょうかぁ!?」
とてもドレスが似合っている。肩ぐらいの長さの髪だろうか?綺麗な水色だ。
目は薄い緑色、年は15、6歳程度だろうか・・・
「あ、あのぅ……そんなにじっくり見ないで下さいな」
ボーっと眺めていたためか顔を真っ赤に染めていることに気づかなかった
「あ!すいません、ついつい見惚れちゃいまして……」
「私にですか!?」
その子はびっくりし目を見開いていた。
「はい、そうです。とてもお可愛いですね。ところで、もしかしたら貴女がこの城のお姫様ですか?出来ればお名前を……」
「とてもお可愛いだなんて……ポッ」
その言葉はこの静寂したこの部屋であってもブレイクには聞こえなかった
「あ、あの姫様?名前は?」
「は、はい!わわ私が、お、お姫様ですわ!」
えっと……名前聞いたんだけど……ってか、姫様の顔が真っ赤っ赤!!
え!?どうしたんだ!?急に熱でも!!?
「だ、大丈夫ですか!?熱でも!?」
「べ、べっ別に大丈夫です。お気になさらないで下さい」
「本当に大丈夫ですか?とりあえず横になられた方が……」
しかし、その女の子は首を振るだけだった
「本当に大丈夫ですから気になさらないで下さい」
「そ、そうですか……」
「あのぅ?あなたは一体……」
「あ、申し遅れました。俺はセル騎士団入団の手続きにここに来たブレイクと申します」
「ブレイクさん……ですね。それで……?どういったご用件で?」
「あ、えっと、ギフェア隊長に姫様にご挨拶に行かれたらどうだと言われまして……」
「ギフェアに…そうだったのですか。それにしても先程は取り乱してしまって大変申し訳ないことを……」
顔をうつむいてもじもじとしてしまったそして何かを振り切るように顔を上げ
「私の名前はアイシェス・ティーナと申します」
「いい名前ですね」
「え!?いい名前ですか……あ、ありがとうございます!」
顔を赤らめて上目ずかいで見てきた。かわいい奴だな……
断じて俺はロリコンじゃないがな……
「いえいえ。それよりもアイシェス姫・……でいいんですか?お座りになられたらどうですか?」
「は、はい、でも……出来ればティーナと呼んでくれると「アイシェス姫!もう、戻られていたのですね、お姿が見当たらないので心配しましたよ」……あ、ギフェア」
ギフェアの声で後半部分がよく聞こえなかった……出来れば?って俺に何をお願いしようと思ったんだ?
なんかアイシェス姫はとても落ち込んでるみたいだけど……
「どうですか?アイシェス姫は?」
「どうですか……ですか?とても綺麗な人だと思いました。なんか、さすがこの城の姫様だなと……はい」
姫様にまた異変が起きたみたいだがほんとに大丈夫かなぁ~
「そうですか。ではアイシェス姫。失礼いたしました。また3時ごろにお伺いしますので……」
そういって部屋を出ようとすると
「あ!あの……私もご一緒したいのですけど……」
「アイシェス姫がですか!?それは何故でしょうか?滅多に騎士団の見学なんてなさらないのに……」
「いえ……何故といわれましても……たまにはこういうのも良いのではないかと思いまして」
ふぅ~ん滅多に見に行かないんだ。
まあ、こんな子が騎士団の練習風景を見ていてもつまらないだけだろうしな。
でもなぜ今回はこんなにも行きたがってんだろ?
「そうですか。なら、ご一緒に」
そういって歩き出すとアイシェス姫は俺の隣に来た軽い会釈付きで。
先頭にギフェア次にアイシェス姫と俺、といった感じになって歩いている
姫様はなんだかにこにこしてるみたいだけど……
「あ、あの……アイシェス姫?」
「はい!なんでしょう?」
なんだかとても元気な返事をしてくれたのだが、その元気さがとても輝いて見える……。
「なんでそんなに元気なんですか?」
「へ?そ、それは……嬉しいからです」
「嬉しい?何かあったんですか?」
「嬉しいから嬉しいのです。」
少し頬を染めながらそういった。何が嬉しいのか、ちゃんとした理由は言ってくれなそうだ。
姫様の部屋から出てから、階段で下に降りた廊下をずっと進んだ先に薔薇や女神が描かれているステンドガラス張りの部屋にたどり着いた。
「ブレイク、こちらが我等騎士団員だ」
そういって手を向けたほうには大体30人程の騎士団が剣術や魔法の練習を行っていた
「ギフェア?ブレイクさんとはどうやって知り合ったのですか?」
「それはですね、アイシェス姫。私が本気でブレイクと戦って完敗させられたためこれは必ずや我が騎士団に入れなくてはと思いまして、必死の交渉により仲間になってくれることになりました」
口に手を当てて目を見開いていたがとても嬉しそうだった
「それはほんとですか!?ギフェアも強いですけど、ブレイクさんもそんなにも強いのですか?」
それはもう強くて強くて私では歯が立ちませんでしたよ。
あの完璧な攻守は誰にも破られないと思わせるようなもので、敵に回したらどんなに恐ろしいことか……
などと俺についての話を長々と姫様に聞かせていた。
姫様も退屈することなくそれで?それで?などとギフェアの話に没頭している。
「ギフェア隊長……この男は一体?」
と俺を見ながら言ってきたが男が一人……
そいつが言い出した一言により周りがガヤガヤと騒々しくなった
「……え?……アイシェス姫ですか!!?」
どうやら先ほど声をかけたがたいの良い騎士団はアイシェス姫に気づいていなかったらしい
俺の肩を押しどけてアイシェス姫に跪く。
「アイシェス姫が我等の頑張りを見に来て下さったぞ!」
などと言い始めたから困ったもんだ。
なんだか物凄く騒がしくなったけど肝心の姫様はビクビクッ!として、俺の後ろに隠れてしまっていた。
「大丈夫ですかアイシェス姫?」
「あ、はい、大丈夫です、心配しないで下さい」
「ギフェアさん、アイシェス姫は人前が苦手なんですか?」
少し困ったような顔をしながら髪を掻き
「あぁ……。1人2人程度なら姫様も平気なんだが3人目あたりから怪しくなってしまってな。部屋からなかなか出ないのも騎士団のグループに会うことを少し恐れているようなんだ……」
それってとちょっとした引きこもりじゃ……ってことは黙っておいて
アイシェス王妃は立場からして大勢の人たちの前で話すこともあるだろうに大変そうだ。
……?なにやらゴツイ男が俺の前まで歩いてきて
「おい!貴様、気にくわない奴だな、姫様と親しくなってるのも気にくわん。俺と勝負しろ!」
おいおい、いきなりなんですかぁー!?
こんな奴と戦ったら骨を粉砕されそうだ……
「ダロット、お前にはこいつは倒せないぞ。なぜなら「こんなヒョロヒョロの奴になんかにこの俺が負けるわけが無いですよ!!」おい、訊いてるのか?」
ダロットという奴はなにやら、ウォー!とか騒いでいて、まったくギフェアの話を聞いていない。こいつはアイシェス姫とは永遠に仲良くなれないだろう。このようにアイシェス姫は脅えきってるからだ。
「大丈夫ですか?アイシェス姫」
「あ…はい大丈夫です……あの…ブレイクさん、気をつけてくださいね。怪我、しないで下さいね」
そんな優しい言葉をかけられるととてもやる気が出るのだが
こいつのオーラが凄くて……いやいや。アイシェス姫のためにも頑張らなくちゃならないな
「おい、ヒョロヒョロ、覚悟はいいか、クククッ」
こんな奴になど負けるはずが無いとでも言うような微笑が聞こえてくる
「少なくとも俺はヒョロヒョロじゃないからな!」
俺の言葉を訊くなり「フッ」と鼻で笑い。走ってきた
「コラ!ダロットいい加減にしろ!」
「ギフェア隊長!こんな奴なんかには絶対に負けませんから見ててください」
ギフェアは「はぁ~」とため息をつきでこに手を当てた
「まぁ……そういうことだそうだ頑張ってくれ。ブレイク」
「えぇ!?」
説得を諦めたのか俺に任せられた。
「いくぞコラァ!!」