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非現実的な人生  作者: ゆうさん
黄劣血の少女
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EX XI    宣告


この間は申し訳ありませんでした。



「ツァツェ、どういうつもりだ」


ギーヴァはある場所に足を運びツァツェと対峙していた。


「どういうつもりとはなんでしょうか。あ、そうですそうです。アメルークの調達に」


「茶番はもうよせ。まさかな、ツァツェに出し抜かれるなど臆に一つないだろうと思っていたのだが。これも俺の未熟さうえだということなのだろうな」


「何を言っているのですかギーヴァ様。私は茶番なんて」


「しつこいぞツァツェ! こんなことになるということがわかっていれば、あの時生き返らせる必要もなかったのだがな」


そこまで言うとツァツェは低い声で笑い出した。


「本当ですよ。あの少女には油断しました。まさかあれほどの力を持っているとは気付かなかったんですよ」


「まあいい。俺の記憶を操作したのはお前か?」


「ばれてしまいましたか。いつかは来るだろうと思ってはいましたが、少々早いですね」


「やはりそうだったか、お前には死んでもらうぞ」


「ちょっとちょっと!待ってください!その剣を鞘にしまってください」


「それは無理だ。お前を倒さなければ、やけに大掛かりな結界も解けないからな」


「はぁ~。そこまでお分かりでしたか。さすがは魔族の王と呼ばれるだけはありますね」


「殺す前に聞いておくが、魔法破壊計画などという紛い物の機械はお前が仕組んだということだな。そしてあの計画を実行するかなり前から不覚にもお前の魔法かなにかで俺の記憶が書き換えられた」


「ふむふむ。さすがはギーヴァ様。探偵にでもなられたらどうです?」


「こんなときでも戯言か、お前が行く場所は牢獄ではないぞ。覚悟しろ」


ギーヴァは軽く手を振るとツァツェを取り囲むようにいくつもの剣の先を向けた。


「な、なぜだ! シオラ石を持たずにこんなこと出来るはずが!!?」


「死ね」


ツァツェの言葉を最後まで聞かず手を振りかざした途端数え切れない無数の剣がツァツェを串刺しにした。


「なんとも呆気ないものだな」


ギーヴァは踵を返し自室へと戻ろうとしたが若干の気の乱れを感じ振り向きざまに剣を取り出した。


「気配を消した上でさらに背後から襲ったというのにこれでは歯が立ちませんよ」


「諦めの悪い奴だ。今宵はいろいろと忙しい。なるべく手短に終わらせたい」


地面から突き破り出現する漆黒の剣はツァツェの胴体を掻っ捌くように襲い掛かった。


「これは少し面倒なことになったかもしれないですね」


「もう解ってはいると思うが、その剣1つ1つには自我がある。俺に操られているわけではない」


「エゴイストの剣ですか……どうやら一旦退かざる負えないようですね」


「俺に背を向けるか、いいだろう。しかし、1つ言っておきたい事がある」


「なんですか、ギーヴァ様」


「お前は俺の記憶を改変したようだが、俺がお前に何もしてないと思ったか?」


「……? それはどういう意味でしょうか」


「俺の配下にはある物を仕組ませている。正直、これは最終手段という奴でな、それは俺の任意の時間で発動させることが出来る」


「は……はは、今更脅しですか、そんなことを聞いたところで怯むとでも?」


「脅しというのは相手に直接危害を加えることはない、しかし俺が今していることは別れの挨拶だ。短い間だったが悪くはなかったぞ」


「じょ、冗談きついですよ。まさかそんなわけが………かはっ!げほっげほっ!?」


ツァツェは地面に倒れ伏せ喉を手で掻きむしる

徐々に顔色が変化していき、手の動きも時間とともに遅くなっていった。


「お前には相応しい最後だな。 さて、いつまで隠れているつもりだ?」


塵になり風に飛んでいく魔人の姿を見届けたギーヴァはある人物の名を出す。


「同族の死を見届けるのはやはり辛いものがある」


やけに高い声、しかしその声には貫禄があり、何事にも動じない気迫を備える少女

もとい、若くして800歳を超える淑女が姿を現した。

名をシルディス・トリステッツァという。


「なんだ? 同窓会でもやるつもりか? やけに珍しい奴らを最近はよく見る」


体のラインが透けて見えるほど薄いレースを着た彼女はテラスの椅子にそっと腰を掛けた。


「同窓会? わかって言ってるだろ。それにここに来た理由としては顔を見に来てやっただけだ。たまたま通りかかったからな。だが、何上あのようなことになったのだ」


「配下が1人裏切ったというところだな。俺直々に始末してやった」


「ほぉ。ギーヴァらしいな。私なら自らの手でそんなことは出来んからな」


「まあ、これでひとまず魔法の件については解決した。もうひとつの問題もツァツェを始末する前に解決したようだ。あの頃と比べるとだいぶ成長したものだ」


「だいぶ成長? 一体誰の事だ?」


「こちらの話だ、気にするな。それよりシルディス、そっちはどうだ?」


「私の方はまあまあといったところだな。金銭面や政治的な意味でも奴隷制度が役に立っている。私の周りも華やかになってきたところだ」


「お前のやることは相変わらず恐ろしいな。趣味に関してはもはや理解不能だ」


「ふふふ。それはそうと部屋の中で可愛い女の子が寝ていたが、ギーヴァはいつからそんな趣味になったのだ」


「あーあれか、やる気はあるが集中力が無い奴で扱いに困る」


「それなら、私が貰っても構わないか?」


「お前の趣味を深追いするわけでもないが、同じ性別だぞ、何がいい?」


その返しを了承だと勝手に受け取ったシルディスはギーヴァの部屋に入りキルスをお姫様抱っこした。


「可愛ければ問題ない。ゆっくりと調教するのは格別だぞ? 白い首筋を舌でなぞる感触といったらたまらんのでな。もちろんその後も……フフフッ」


「それは良かったな」


「まあ、暇があれば遊びにでも来い。それではまたなギーヴァ」


「あぁ。そいつの力は特別だ。力を借りたい時はお前の城にじゃましに行こう」


黒い翼を広げ飛び去ろうとしたところでシルディスはギーヴァに歩み寄った。


「近いうちに大陸全土に雪が降る。もちろんこの場所も例外ではない。何かやり残したことがあるなら今のうちにな」


「そうか、雪か………100年ぶりだな」


「魔人ともあろう者が風邪を引くなよ」


「それについては俺がお前に問いたいな」


魔人同士が静かに笑いあった。



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