EXⅨ 画策
――――――――――???地域・研究室――――――――――
「はぁ~。なにが魔法破壊計画ですか、こっちにも迷惑が掛かってることがわからないんですかねあの人は」
溜息を吐きながら薬品を調合する魔人。しかしその顔は薄ら笑みを浮かべていた。
「魔人をも凌駕する狂騎士さえいればあの男もひとたまりもないでしょう。それにはうまく制御しなければならない。暴走と破壊しか能の無い狂騎士のままじゃ目的だけに集中できないですし私も死にかねない」
血のように真っ赤な液体を完成させた魔人は小瓶の中に注いだ。
それから捕らえた彼女に飲ませ眠らせた後、研究室の外にでて空を見上げた。
「いつしかこの世界が私のものに、昔に栄えていた魔人界を必ずや復活させなければ、……しかし、さすがに二度も騎士化させたあの少女は役目を果たしたあたりで体が朽ち果ててしまうか。でもまぁ死んでしまっても代わりはいるし、上手くいけばより強い誰かに伝染するかもしれない」
「魔人界の復活か……」
まるでさっきまで空気に溶けていたかのように静かに姿を現したその男は
肩まで灰色の髪を伸ばしぼろぼろになった衣服を纏っている。
ドスのきいた声でしゃべるその風貌はどんなことにも動じないオーラを感じる。
「ベルゲゾールですか、気配は感じてはいましたが私に何のようです?」
ベルゲゾールは少し間をあけてからゆっくりと口をあけた。
「そこまでして昔の魔人界を復活させたいのか?」
「あたりまえですよ。今の魔人界トップのギーヴァとやらは何をしたいのかわからないですからね」
「昔といえば、前は仲が良かったじゃないか、そこまであいつを恨む原因はなんだ?」
「恨む?なにも彼を恨んだりはしてませんよ、ですが魔法が使えなくなったのはイラっとしましたがね、それでも恨んだりはしていませんよ……ただ、本来の魔人界の姿を教えて差し上げたいだけです」
薄ら笑みを浮かべたジュビアは研究室に鍵をかけた。
「そうか。ファンベルもなにか考えているようだしこれはいつか衝突するかもしれんな」
「ファンベルもギーヴァと同じだ何をしているかさっぱりわかりません。噴水の水を集めて何をするのやら」
「…………噴水の水か」
それは小さい声でつぶやく声だったためジュビアにはほとんど聞こえていなかった
「何か言いましたかベルゲゾール?」
「こっちの話だ気にするな。それよりへまして狂騎士に殺されるなよ?」
「ご忠告感謝しますよ。それよりあなたは他の者たち同様、何か考えているのですか」
「魔人界のことには興味がない、ただこの世の動きが見れればそれでいい」
そういうとまた空気に溶け込むように今度はその場から姿を消した。
「そうですか、さっぱりわかりませんね。面白くないことは嫌いですよ、まったく……」
―――――――――魔王城・テラス――――――――――
「あの気配……やはり潰しておくべきだったか」
魔界へと戻ったツァツェはヒプノシスが誰かの妨害によって邪魔され心底イラついていた。
しかし、イラついていたのは邪魔をされただけではなかった。
ツァツェが得意中の得意であった素敵魔法を使ったのに相手の位置を特定することができなかった。
今まで本気を出して探った相手は必ず見つけることができたのになぜか見つけられなかった。
「相手は魔人だったのか?……いや、魔人なら魔人特有のオーラを感じられるはず、それがなかったということは」
心当たりはあるもののツァツェは答えを出せずにいた。
「なにはともあれ俺は魔人界のトップを狙う」
強く静かな口調で告げたその言葉を言い終えた後、彼はその場から姿を消した。