第二十八章 緑眼の子供
「…シルク姫様」
「なんじゃ、カラゾネス」
豪勢な椅子にちょこんと座っているシルクシャシャはそっぽを向いていた。
「請謁ながら面会にはちゃんと出てほしいのですが……」
「嫌じゃ」腕を組みキッパリと言う
「とりあえず出るだけでも良いのでお願いします」
「嫌じゃと言ったら嫌じゃ。とくに今回の面会相手もあやつじゃろうに」
「まぁ、確かにそうらしいですけど…」
よくは見ていないが多分そうだろう。
結構頻繁に来てるし……
にしても懲りないよなぁ~あの人も。
「なんとかして追い返せ。カラゾネスなら出来るじゃろ」
「そんな無理を申されましても……」
「とにかくじゃ。私は面会には出ん」
このまま話しても埒が明かないので部屋から出た。
ガチャリ。
「どうだったカラゾネス?」
外で待っていたセルウェンが問う
「シルク姫の性格上予想はつくのでは?」
「あはは、そうだな。
んで、どうすんだ?ハイシャルとミャーゼルの時間稼ぎもそう長くは続かないぞ?」
「うーん。」
とりあえず姫様の気分が優れないから後にしてくれとでも言っといてくれ。と言い
了解したカラゾネスはハイシャルとミャーゼルの待つ謁見の間に向かった。
「どうやら行った様じゃな?」
足音が遠ざかっていく音を聞いたシルクシャシャは椅子から立ち上がった。
「さて、ブレイクの頼みごとの事もあることじゃし、抜け出そうかと思ったんじゃが……」
1つ数千万するテーブル(シルク姫にとってはどうでもいい高級品)にポンと置かれている小包を手に取った。
「これは一体なんなんじゃ……と中身は写真か?」
ガサゴソと少し大きい封筒を空けてみると写真と手紙が入っていた。
肩までかかった茶色でストレートの髪の少女は2人の子供と一緒に笑っていた。
なんだか自分にとても似ている気がして気持ち悪い……
「……誰じゃこやつは?―――手紙には、なになに……」
『久しぶりだなぁ。今はシルクシャシャ、だっけか?まぁ、それはいいとしてまたお前に働いてもらう時が来た。既に記憶が無いから意味が分からないかもしれないが、黙って言う事をきいていればそれでいい。んじゃまた一週間後に……』
「ななななななんじゃ!なんなんじゃこれはっ!喧嘩売りまくりではないか!」
しかも、書いた日が今からちょうど一週間前であり会う日は今日となっていた。
写真もろとも手紙を床にベシンと叩きつける。
「大丈夫ですか?シルク姫」と部屋に入って来たセルウェン
「いっぺん死ね!」
「ぐはっ!!」と壁に叩きつけられるセルウェン
「なにすんだよ、ちびっ子野郎!」と反射的に禁句を言ってしまった。
「ち、ちびじゃと……お主、いまさっきチビと言ったな?」
「ふっ、チビがどうした。ったくいきなり蹴り入れんなよなぁ意味わかんないぜ……あ、やべぇチビって言っちまった……」
床に突っ伏しながら火に油を注ぐ。
プチっ
そしてアイシェスの頭の中で何かが切れた。
GAMESTART!
「貴様!行ってはいけない事を!」
「え。何この表示?…ゲームスタートってなんだよっ」
猛烈にダッシュしたシルク姫はセルウェンに左ストレートを喰らわし華麗に回転しながら右足で蹴りを入れる
2 Chain!
「かはっ」
『相手は真面に攻撃をくらいよろめいている』と何処からともなくナレーションの声が聞こえてきた
「わ、わたしの一番のコンプレックスを……」
と右足を振った力で空中に浮き上がった自分の体を、かかと落としとともに地面に着地。その後、バック中とともに空中に相手を蹴り上げさらに右フック
5Chain!!
『いや~二段ジャンプも華麗ですねぇ』またナレーションの声が聞こえる
『ジャンプで魅せてくるとはレベルが高い』ともう一人のナレーションが答える
「ぐがっ!!」
こんな動き…雑技団かよ……
「まだじゃ!まだ終わらんのじゃ!!」と溜め攻撃を繰り出そうとした。
「ふっ、遅い!」セルウェンはそれでもギリギリのガードだったが何とか防げそうだった
「コメットパンチ!」
Guard Clash!!
という表示が出た後セルウェンは無防備になってしまった。
なんだよこのシステムっ!?
『出ましたー!!シルク姫のガードクラッシュ!!!!』と熱い声で叫ぶナレーション
直後、右と左の猛烈パンチを繰り出し強烈な左キックで壁に叩きつける
20 Chain!!!
「っ!?」
声にもならないうめき声をあげ地面にへたり込んだセルウェンはもはやなぜ自分がこうなっているのかが分からなかった。
「なんだ、このシルク姫の戦闘能力の高さは……」
「鉄○5で鍛えたからに決まっておるじゃろ」
しなやかに地面下りポーズを決める。
YOUWIN!(シルク姫視点)
「そんなもの一体どこから……」
「国を回っていたら面白そうなものがあったからな、買って来たんじゃ」
この姫にはちゃんと準備をしたうえで喧嘩を売るべきだと判断したセルウェンだった。
「っと、それよりセルウェン、この手紙はどうしたのだ?」
「手紙ですか?」不思議そうにそれを手に取る。
開けても良いですか?ととりあえず許可を得てから中身を覗く
どうやらセルウェンが持ってきたわけでは無いらしい
「こっこれはっ!シルク姫そっくりじゃありませんか!」
目を大きく見開いて驚いていた。
「なぜそんなに驚く!」
「いやいや、こんな清楚な女の子がシルク姫だとしたら合わないなーと思いまして、しかもお花の冠もかぶっているじゃありませんか…ププッ」
「なーにーがーププッじゃ!何故だか私ではないのにムカムカする」
まぁ。と一言いうと魔法で光のロープを取り出した。
「うわっなにすんだよ!」
「お前はしばらく黙っていろ!私は少し出かける」
セルウェンの体を縛り口をテープで留める。そして窓を開けて
「私にはこの城は小さすぎる」と言いながら消えて行った。
(…いやいや、この城にしたいと言ったのはあんたじゃないか……)
――――――――――――――――――
キーンコーンカーンコーン……
「んじゃ、授業はこれで終わりだ。
今日は凄い雷雨だから帰るのは少し待った方が良さそうだな」
担任の先生はそう告げると教室から出て行った。
「ったく、こんな雨じゃどこにもいけねぇじゃねぇかよ……なぁ新神」
「…………」
「新神。聞いてるかぁー?」
「あ、悪い悪い。んじゃまた明日な」俺は机の横に引っ掛けていた鞄を取る。
「おいおい、俺の話聞いてたかっての?外を見ろ!外を。雷雨だぞ!」
窓の方に手を広げ雷雨を強調する。
「そうだな。まるで台風が来てるみたいだよな」
「なのに外に出るのか?」と不思議そうな目で俺を見てくる。
「そう。病院に行かないとな、妹が待ってる」
「妹さん……そんなに容体が悪いのか?」
「ん、あぁー大丈夫だよ。大丈夫。心配するなって」
妹に頼まれた物。それをなんとしても届けなければならなかった。
「なぁ新神」と真剣な目で俺を見てくる
「どうした手嶋?」
「もしかして妹属性か?」
「んなわけねぇーだろ!!」
何を言ってるんだコイツは……
「あはは、冗談だよっ。…まぁ気をつけていけよ?」
ザザー。という地面に叩きつけられる雨音、それとともに鳴り響く雷。
幸い風が無かった事だけ助かった。
目的地は自転車で15分前後の成島総合病院。
自転車置き場で合羽を着て準備を整える。
「止む気配は無し」
という当然のことを口にしながら校門を出た。
雨は弱まるどころかより一層強さを増していった。
「さすがにやばいよなーこれ……」
しばらく一本道を走行していた俺の頭には妹の事で一杯一杯だった。
ザザー
降り続く雨、俺は赤信号で横断歩道に止まっていた。
「ここの信号長いんだよなー」
車通りは少ないけど交通ルールは守っていた。
そしてしばらくし青になり少しだけスピードを上げた。
ゴロゴロゴロ……
灰色の雲の上で黄色い稲妻が走っていた。
そして、運命が狂う……
物凄い光とともに7階建てのビルに雷が落ちた。
余りの眩しさに俺はその場に止まっていた。
何かの崩れる音……
「なっ!!?」
俺は一瞬にして目の前が真っ暗になった。
どれくらい時間が経ったのだろうか……
早く病院に行かないと妹に頼まれたものを届けないと……
朦朧とする意識の中、自分の身に起きている状況を把握する。
「つっ……!」
体が動かない。そして腹部と足が痛い……
痛みを感じる場所に視線を向けようとするが何かでがっちり固定されていて頭が動かない。
「これは…岩か?」
いや、コンクリートだ。痛みを感じながらも冷静に考える俺
「俺は、建物の倒壊に巻き込まれたのか?」
まったく動かすことのできない体。
しかし必死にもがいていると左手だけが動かせるようになった。
「よしっ」
とりあえず痛むところを軽く触ってみる
「んぁっ!」
とてつもない激痛が走った。
声にもならないうめき声をあげた俺は左手を顔の前まで持ってきた。
「……血か」
やっぱりなと思った。きっと足もそうなんだろう、見なくても分かった。
その時、ふとある言葉が頭に浮かんだ。
『俺はもう助からない』
この雨だ。人通りも少ない…いや、1人も見なかった。車だって通らない。
そんな中この雷雨、助けも来る筈が無い。自分で何とかしようったってもう体を動かす力も無い。どうやら出血の量が半端じゃないらしい……
「なにやってんだよ俺……今日には必ず届けてやるって言ったのに」
妹が大事にしていた黒いフリルの付いているドレスを着た人形。家のどこかで無くしたというあまりに少ないヒントを頼りにひたすら探して見つけ出した西洋風の人形。これが無いと眠れないと言っていた。
急に容体が悪化した妹には探すことも出来なかった。だから代わりに探し出した。
それなのに……
「俺はこんなことも出来ないのか…こんな簡単な事も……」
何も力になってはやれなかった。
「こんな役立たずな兄を許してくれ」
そう言葉を残し俺は今までにない瞼の重みに眼を閉じた。
――――――――――――――――――――――――
「はっ!!」
ベッドからがばっと起きた俺は汗だくになっていた。
「何だったんだ、あの夢は……」
記憶にあるようでない記憶
覚えているようで覚えていない
妹が病院?俺が瓦礫の下に?
そこであることに気づく
「俺の妹が病院にいるっていうのは昨日の夢でも見たな…天気予報は確か……」
全く興味のない情報を必死に思い出そうと頑張っているとなんとか思い出した。
「明後日に大量の雷雨だったはず」
そしてその明後日の学校帰りに俺は……
考えただけでも恐ろしい
「ん?」
またしても疑問が浮かんできた。
「瓦礫の下で俺は死んだ?」
考えただけでも恐ろしい事を簡単に口に出した俺
しかしこれには大きな矛盾があった。
俺がこの天超地に初めて来た時キルティは何て言っていた?
「あなたは死んだのよ、だからここに来たの、雷でズドォーンって感じで」
ってなことを言ってたはず。自分がどのように死んだかってのはよぉーく覚えている。
「俺は瓦礫の下で死んだ。けどキルティは雷で死んだと言っていた」
ただの見間違えなのか?
それを確認する手段は俺にはない。
それはともあれ…今俺がしなくちゃならないことは
「ミゼル・キートン・リエラの3人を探し出すこと」
これに協力してくれそうな人は……
ミヴィはデュナメイス国のヘゼラル地方にいるから連絡の取りようがないし
シルクシャシャでも探しに行くか
といつもの服に着替え部屋から出た。
「おはよう。ブレイク、今日のこの天気を見ると昨日の事が嘘のようだ」
と窓の外を見る。確かに、昨日の雷雨はあっという間に去ったらしい。
今は小鳥のさえずりも良く聞こえて空は快晴だった。
朝食でも食べに行かないかと誘われたので、食堂に足を運んだ。
「今日はいつも以上に賑やかだな」
「そうですね。新たに加わった騎士団たちが来ているからですね」
と賑やかなテーブルの端でパンと牛乳を食べていた一人の少女が立ち上がる。
「ブレイクさm……いやブレイクさん」
何を言い留まったのだろうかと思いながらもエクシアに手を上げる。
「おはようエクシア」
「おはようございますっ」と笑顔で元気にあいさつをする。
「元気が良くて良い子じゃないか?」とギフェア
「少しおっちょこちょいなところもありますが良い腕を持っています」
そうかと一言いうと俺の方を見てしばらく黙る。
「な、なんですか?」
「あの子と食べなくていいのか?…俺は気にするな。大事な話が合ったわけでも無いしな」
「で、でも…」
「ほら、あの子の目を見てみろ?こっちに来てくれないかなぁという目で見ているではないか」
ほんとだ。あの目は確かにそうだ。目の奥をキラキラさせてるっていうかなんというか…
「確かにそうですけど…」
「まぁ。部下との交流は深めておくものだぞ」
そういってギフェアは目じりに涙を溜めながら去って行った。
別に永遠の別れってわけでもないじゃありませんか……
「ブ、ブレイクさん!?」
とビックリしつつも願いがかなってとても嬉しそうだった。
「えっと、ご飯。一緒に食べないか?」
「ももももちろんです!ぜひともご一緒に!!」
それから俺はベーコンタマゴサンドとミチャンドリンクを頼んだ。
ベーコンタマゴに使われている材料の1つのベーコンはトンキングから
もう1つのタマゴはオストリッチかららしい。
トンキングとは野生モンスターで主にタイアルク・マロハス地方で生息しているらしい。
オストリッチはダチョウのことらしいからダチョウの卵みたいだし
「あ!そのジュース美味しいですよね!」
ミチャンドリンクを指で指しながら話しかけてきた。
「え、そんなに美味しいのか?」
「もしかしてブレイクさm……ブレイクさんって飲んだこと無いんですか?」
またなぜそこでどもる?
「飲んだこと無いんだよ。んで今日は新メニューとして出てたから頼んでみたんだけど」
「きっとはまりますよぉー」
「コクンコクン……ってこれはっ!」
「なんですかっ!いきなり声を荒げて!?」
「色といい味といいみかんの味そっくりだ!」
愛媛のみかん並みに甘い。これは凄い飲み物を発見してしまった。
「んで…、そうだそうだ。早速だけど手伝ってもらいたいことがあるんだけど」
「そっそんなぁ。い、いきなり御一緒でですかぁ!?」と手で顔を覆う。
「そ、そうだが?…まぁ他にも連れてくかな」
「そうですかぁ」物凄い勢いでテンションが下がった。
「最初の手伝いにしてはかなり重要なんだ」
「そんなに重要なんですか?」
「世界規模だな」
「えええええええええええええええ!!」
一斉に視線が俺なんかに集まる。
「しっ!静かにしろよ。なるべく秘密にしてんだから」
「あ、はい。すいません。それにしても世界規模だなんてそんなことに私が関わってもお役にたてるかどうか……」
「大丈夫だ。今は人探し中だし魔王と戦うとかそういうんじゃないからな」
「はぁ~それなら良かったです。それで人探しと言うのは?」
「ミゼル、キートン、リエラっていう子たちを探すんだ」
「リエラ?」と何か知ってそうな顔をする
俺が知ってるのかと訊くと妹の友達にそのような名前の子がいるのだとか……
間違ってる可能性は大いにあるけど行ってみる価値はありそうだ。
「んじゃ早速食べ終わったら行くか」
「早いですね。さすがですブレイクさm……ブレイクさん」
「なぁなぁ。ずっと訊きたかったんだけどいいか?」
「えっ。は、はい?」
「なんで俺の名前呼ぶときいつもどもるんだ?」
「あっとそれは……えぇーとですねぇ。なんでもありません」
何でも無いはずが無いのだが言いたくないのであれば無理に訊く必要も無いな
「そっか。んじゃ今から一時間後で良いか?」と俺は食器を片づけながら確認する。
「よ、よろしくお願いします!」
☆一時間後☆
食堂に呼び寄せたのはエクシア、ギフェアさん、そしてなぜかアイシェス姫
「いやぁどうしても行きたいってうるさくてね。別にいいだろう?」と耳打ちしてくる。
「まぁ別にいいですが……」しかしあいつの姿が見えない。
「どうしたブレイク?……シルクシャシャ姫のことか?」
「そうです。いつもついてくるはずなのに姿が見えないので」まぁ、いないだけ苦労しないか。
「そうですね。んじゃもう行きましょうか!」とアイシェス姫。
あれ?最近仲が良かった風に見えたのは俺の目の錯覚か?
いや……そうみえるだけか?
「あ、あのぅ私なんかがご一緒しても平気なんでしょうか?」
弱々しく話すエクシアに向かって元気さえあれば大丈夫だと言ってやった。
「本当ですか!?」
こんな適当な事を言っても疑いもせず、すっかり安心しきっていた。
既にみんな準備は整っていたので城から出た後
誰かの勘を頼りに進もうというとんでもないことをギフェアが言い出した。
「そんな適当すぎます」
「んじゃなにか良い案でも?」
「えっとですね。それは……」
ここぞとばかりに発言したエクシアは何も考えずの発言だったため撃沈
「まぁ。まずは動かない事には始まりませんよギフェアさん」
「そうだ。その通りだな」
とボルテキア地方に歩き出して数十分さっそくある子供に会った。
「ねぇ。もしかして迷子?」
「そんなことない。わたしは迷子なんかじゃない」
と答えた目は緑色だった。
(見つけた!?)
「えっと君の名前は?」
「普通はあなたがたから名乗るのが当然ではないの?」
「あぁ悪い悪い。私の名はギフェア。ギフェア・リザクスト」
「私はアイシェス・ティーナです」
「私はエクシア・フェイナといいます」
「俺はブレイク。よろしく」
「ブレイクという者。下の名も言うのが当然なんだけど」
「俺はブレイクという名前しか覚えてないんだ。悪いな」
「覚えてないだけで無いと言う事ではないんだね?」
「まぁそうかな」
「分かった。私の名前はリエラだ」
「君がリエラ?」
「なんだ?その探していた人を見つけたみたいな顔は」
「いや、探していたんだよ実際に」と俺は手を握る
「そうですか。ここ最近のストーカーはあなたでしたか…」
「えっと。今日初めて会ったはずだけど、探し始めたのも今日だったし」
「そうか。ならいいか。んで私に何か用か?」
「ファンベル爺から魔人の倒し方を聞いてくれと」
「んな大声で魔人と言うんじゃない!!」
と思いっきりぶっ叩かれた。
「いてててぇ。すいません」
「まったく。 ファンベル爺は元気か?」
「元気でしたよ。それはもうとても」
魔法が当たっても無傷だったあの人なら全然余裕なはず。
「そうか。ならよかった」
「それで分かったんですか?」
「まぁついてこい」
そう言われていついていくと森の中へと入って行った。
「ボルテキア地方の森。サルザ森林か」
周りの様子を見ながらギフェアが言う
「そうだ。この奥に我らの隠れ家があり、そこでほかのみなたちと研究している」
「研究の成果は出たのですか?」とアイシェスが訊く
「どれだけ研究を続けてきたと思っている?この今まで使ってきた時間は無駄にはしない」
「今は何人隠れ家に?」
「私を混ぜて3人だ。他の2人はミゼル・キートンという奴らだ」
ミゼルとキートンはファンベル爺が話していた子と同じだった。
手間が省け多分とても助かった。
「さて、ここが我らの隠れ家だが…」
「…ここが? というかどこに?」ギフェアが周りを見渡しながらリエラに確認する
「ないようであるんだよ。ほら、こっちに来い」
そう呼ばれてリエラの隣まで来るとあら不思議。地下へと続く階段を発見した。
「こ、これはどういう仕組みなんだ!?」当然ながらギフェアが驚く
「これについてはいくらファンベル爺さんの仲間であろうと黙秘なんだ」
確かにいくら仲間であっても易々教える人はいないだろう。
「この階段はどこまで?」
「ざっと100mだ」
「ひゃ、ひゃくめーとるですか!?」アイシェス姫がそんなに歩けませんというような口調で言う。
「まったく。姫というのはめんどくさい奴だ」
「アイシェス姫。疲れたなら私がおぶっていきますが?」
「大丈夫です。もし必要なときは…ブ、ブレイクさんに、お、お願いしたいと思います」
「そ、そうですか…」ギフェアにクリティカルダメージ
「え、俺ですか?」
「だめですか?」
涙目の上目使いは一撃必殺に値する。
「い、いや……」
「だめ…ですか?」
「も、もちろん駄目じゃないですけど」
「じゃ、じゃあ。いいんですね!?」
「は、はい」
「まったく付き合ってられないな。 ほら着いたぞ」
すでに抜け殻のギフェアと上機嫌の姫様の対処に困り果てた俺はすでにHP0状態だった。
「お帰りが早いです……ね えっと誰ですか?」
「ファンベル爺の仲間と言ったところかな」
「おじいちゃんの仲間!?」
一番にお帰りと言ったのは女の子…ミゼルと言う子だろうか
緑色のショートカットで白と水色のワンピースを着ていた。
「それで、おじいちゃんの様子はどうだった?」
「こいつらから聞くに元気らしい。良かったなキートン」
「そっか。元気なのが分かってよかったよ」
次に話してきたのはキートンという男の子。
金髪のストレートがギリギリ目にかかっている。
みんなの容姿は完璧であってなぜこの子たちがこんな目に合わなければならないのかと思った。
「それで…だ。こいつらはファンベル爺から魔人に関するデータ教えてもらってくれと頼まれたらしい」
「おじいちゃんに頼まれたならしょうがないね」
「そうだね。さっそく用意しないと。みなさん、こちらへどうぞ」
小さいのに対応の早い子で偉い。
俺がこんなに小さかったころ何ていったら親に迷惑かけてばっかりだったような気がする。
「何か飲むか?」
「テルトナールはあるかな?」とギフェア。何とか復活したみたいだ。
ちなみにテルトナールとはコーヒーみたいなものである。
「私はミチャンジュースとかあれば嬉しいです」とアイシェス姫
「俺も同じものがあればそれで」と俺が答えるが、さっきから何を黙っているのかエクシアは口を開かない
「なぁエクシアは何か飲むのか?」
「…………かわいい……」
「エクシア?」
「っ!? あ、はい。すいません。何か言いましたか?」
「大丈夫か? 俺は何か飲みたいものは無いかって訊いたんだけど?」
「わ、私は大丈夫です」
一体何を考えていたのだか少し気になって話しかけようとしたその時
テーブルの上にどさっと紙が置かれた。
「これは?」
「これがその魔人のデータだ」
ざっと300枚くらいだろうか
「こ、こんなにたくさんあるんですかっ!?」と目を大きく開けるアイシェス姫
「まぁ良く聞いてくれ、これの9割以上は嘘のデータだ。この中から本当のデータを抜き出すのは大変だった。そして―――」
と上にある数枚を手に取り残りを横にどけた。
「本当のデータはこれらのデータだけ」
「えぇ3枚だけですかぁ!?」とアイシェス姫
なんかとてもやる気なアイシェス姫なんだが一体どうしてなのだか……
「んじゃまず1つ。魔人の魔法関係についての話なんだが……」
魔法……。そういえばあの時、魔法破壊計画で戦った魔人。俺らの魔法なんか足止めくらいにしか使えなかったな。
「魔人はMFの他に特殊な防御シールドを張っているから普通に攻撃したんじゃ歯が立たない。そこでその防御シールドを強制解除する薬品の研究が成功したんだ。これについてはオクマーサ・テゴレス錬金合成師に協力してもらったんだが…知ってるか?」
「あぁ。もちろんだ。俺の仲の良い友達だからな」
「そうだったか。なら話は早い。オクマーサの家でその薬品を貰ってくればいい」
「家に行けばあるんだな?」
「私に頼まれたことを言えば渡してくれるだろう。そして次に速さ。スピードだな。ラファーガを使ったんじゃ上位の魔人には勝てない。その魔法の鍛錬についてはファンベル爺に訊くのが良いのかもしれないが、その魔法についてはそれ以上の者がいる」
「ファンベル爺より高い魔法が使える人がいるのか」
「ミーラルク・イナミ魔導師 聞いたことはあるか?」
「ミーラルク?」
「最初にブレイクが参加したヴェセア城での会議。覚えているか?」
「なんとなく覚えています」
「その時に欠席した人がミーラルク・イナミ魔導師だ」
おぼえてねぇ~~
「そんな人がいたんですか」
「そうなんだ。実はその魔導師には過去に消えたという噂が広がっていた」
「過去に消えた?」
「まぁ今でも消息は不明。でも生きていることは確からしい。なんたって魔法学校の校長だったからな」
「魔法学校の校長だったんですか。そんな凄い人が何故消えたんですか?」
「そこについては俺もよく分からないんだが生徒との衝突があったらしい」
「どうやらお前は知ってるみたいだな。まぁそいつに教えてもらってくれ。んで最後、魔人には片方の名前しかない。たとえば私の名前がオルフェス・リエラのように魔人にはフェイルとかセゼリーなどという名前しかない」
「コードネームとかじゃなくて?」
「いや、相手がそう言ってたという実際の証言もある。まぁこのデータにもそう出ているがな」
「そうなんだ」
「もしかしたら片方の名前しかない裏切り者がいるかもな?」
と俺の方を見てにやりと笑う
「お、俺はそんなんじゃないぞ」
「まぁ冗談だ。お前はそんな奴には見えないし、なにより決定的な証拠が無い」
「決定的な証拠?」
「それは教えないがな」
「そうですか」
まぁ疑われなくてよかった。
「ってな感じだな。どうだ?少しは役に立ったか?」
「いや、少しどころじゃない。かなり助かった。ありがとう」
「そうか。ならよかった。たまには来てくれよ? こいつらも久しぶりの来客がうれしかっただろうし」
「あ、はいもちろんです」
んじゃまたなと見送られ俺らはそこの隠れ家から外へ出た。
「さて。んじゃこれからどうするか」と、ギフェア
「オクマーサ・テゴレスさんの所に行きましょうか」
「そうか。ならそこから行くか」
そして魔人を倒す為まずは薬を取りに行くブレイクたちであった。