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非現実的な人生  作者: ゆうさん
危険度7の刺客
42/69

第二十七章  開校!ブレイク魔法短期学校



窓の外に広がる青空――快晴だ。


しかし俺の気分は曇りまくりだった。

良く寝られなかったとか、朝になっても尚扉をガチャガチャしていた猥褻姫のことでじゃない

不思議な夢を見た為である。


その夢の中、俺は都会のど真ん中に立っていた。

高層ビル、マンションが立ち並ぶ都市、懐かしい風景だと周りを見渡した。



『明後日には大量の雨や雷を伴う雲が接近してると思われ……』



天気予報だろうか?何処からともなく聞こえてくる。

ふと携帯で日付を確認していた。6月27日


パサッ


手から何かが落ちた物を拾うために地面を見る。

どうやらメモらしく、買い物の途中だったらしい、野菜の名前とか飲み物とか調味料だとかいろいろ書かれていたのだったが、一番最後に俺の知らない名前が書いてあった。



『稲美に雑誌を買ってやる』



……稲美って誰だ?ってか、俺はなんでここにいる?とにかく疑問ばかりが残っていた。


その下にも人形を探すがどうたらこうたらと書いてあったが

目の前から走ってきた少女に驚いて呑気に読んでいるどころではなかった……


現れた少女は限りなく漆黒の少女と瓜2つだったのだが、

それは顔だけであり服は普通の私服と黒一色では無かった。

杖も持って無いしな。―――どうやら何かを言っているようだが、何を言っているかはわからない、音はなんにも聞こえないらしい、俺は、聞こえないとジェスチャーで伝えるとその少女は俯いてしまった。


可哀そうだが聞こえないのだから仕方がない。

しばらく何もせずただ突っ立っているとなぜか手を引っ張られた。

どうやら着いて来てほしいみたいだったので黙ってついていくとある病院に着いた。



「……病院?」



当然身に覚えのない場所。何食わぬ顔で入っていく少女。黙ってついていく俺。

173号室という場所で少女の歩みが止まり躊躇なく扉を開ける。

部屋のベッドの所には幼い少女が寝ていた。少女はテーブルの上に置いてあった、ペンと紙を使い俺にメッセージを伝えようとしたのだが、俺は信じられなかった。



『この子はあなたの妹』



たった1行の言葉。俺は疑った。俺には妹なんていないし1人っ子のはずだ。

お父さんは世界旅行に行ってるし、お母さんは地元を離れて長い間働いている。

今まで暮らしてきた中ではそんな記憶……あれ?思い出せない。

3人家族では無かったのか?俺は急いで部屋番号の下に書いてある名前を見に行った。



【竜崎稲美】



どこかで見たことのあるような名前だったが、思い出すことは出来なかった。

だが、1つだけ分かったことがある。

本当にこの子が俺の妹だとしたら俺の名字は竜崎だ。

ひとまず部屋へと戻るとまた少女が紙に何かを書いていた。



『この子は私によく似ている。助けてと語ってくる。私もそう願う。』



この子はお前に似ている?しかもこいつはこの子と会話が出来るのか?



『もう一つの世界にいるこの子は闇の中。全身真っ黒。服も髪もロッドもすべてが真っ黒』



服も髪もロッドも?



『そんな子をあなたは助けることが出来ますか?守ってあげることは出来ますか?記憶を思い出すことが出来ますか?』


いやいや、俺を殺そうと襲って来た奴だろ?

そんな奴を助ける?守る?どういうことなんだ?



『そう、全てはあなた次第なのです。』



俺次第……



何を言おうとしても口がパクパク動くだけでその少女には何1つ伝わらない。

そしてその幼い少女。俺の妹に近づいて顔をみようとした瞬間に目が覚めた。



朝から気分が悪いのも当然だ。

超顔が似てる漆黒の少女は出てくるし、俺に妹がいるとか知ったし……

俺は買い物に出かけてる途中で、手紙に書いた文字が確かに俺の文字だった。


だとしたら俺はあの子を知っている?


あ~もう!全然分かんねぇ……深く考えても何1ついいことも無いし

記憶喪失という可能性もあるがまだわからないし、魔王ギーヴァの仕業なのかもしれない。

そんなこんなで自分の部屋にある窓から空を見ていたというわけだ。



「はぁ~。いくら魔法が使えたって教える側って結構難しいよなぁ~」と無理矢理頭を切り替える



とくに準備するものも無いし、

夢の事も忘れようと俺はとりあえず外に出て魔法の確認をすることにした。

それにしてもあの夢は一体……っていきなり何考えてんだよ俺は。


自室から出るとミヴィに会った。

おはようございますと一言告げるミヴィ。

あいかわらず無表情だがその無表情から何かを感じ取った。



「どこかへいくのか?」



「はい。ヘゼラル地方の友達の所へ少しだけ」

魔法授業、見に行けなくてすいませんと後付けで言った。

それはそれで構わないのだが……



「デュナメイス国にミヴィの友達?…え、だって、封印解いたのつい最近のことだったし俺とずっと一緒だったろ?いつそんな場所に行く暇があったんだ?」


「剣仲間と言うべきでしょうか?私が剣に宿っていた時、主人はもう1つ剣を持っていました。とてもおしゃべりで話に付き合うととても疲れてしまう子でした。」



「ミヴィはあんまり喋らないからな」最近はだいぶ変わって来たけど……



それにしても剣仲間だなんて、なんか凄いなぁ~。

俺の身近な物にも精霊が宿っていて絶えず話をしてたりな

って、さすがにそれは無いか……



「それでもってあの子はとても感情が豊かで、泣いたり笑ったり怒ったり心配したり私とは違って喜怒哀楽がしっかりとあります。とくに寂しがり屋で数時間私と離れただけで泣きじゃくっていました」



「いろいろと大変なんだな」


「はい。でも私と私の友達は離れ離れになってしまった。」


「心配なんだな。そこで十字架の奴に会ったのか?」


コクリと頷くと「もう泣かないと約束はしていましたが久しぶりに見に行こうかと」


たぶんその子もミヴィと同じく置いて行かれたのだろうか……

俺は「気をつけてな」と言って空へと飛び立つミヴィを見送った。






「何事じゃ?」


異様に外ががやがやするので嫌々目を覚ましたシルクシャシャ。

いつのまにかヴェセア城の一角にシルクシャシャ専用の部屋が出来たのは少し前から実行してきたシルクシャシャのちょっとした策略が上手くいったからである。



「うるさいんじゃが……」



いつまでたっても止まない声にだんだん腹が立ってきた


「うぬぬぅ~。うるさい!うるさい!うるさーい!!」


怒った勢いで扉を思いっきり開ける


「何じゃまったくっ!」


独り言をぶつぶつ吐きながら廊下をドスドス歩いているとアイシェス姫がトコトコ歩ってきた。



「あ!シルクちゃん」



バリバリ機嫌が悪いシルクシャシャに声をかけたアイシェス姫

なんと空気の読めない子でしょう……



「アイシェスではないか。あと、その名で呼ぶなと言ったろう」



敵対していたアイシェス姫とシルクシャシャ姫はいつの間にか結構仲良くなっていた。

そして機嫌の悪いシルクシャシャに話しかけてもブチ切れることなく事は進む…



「どこかへ行かれるのですか?」



「ん? 特に要は無いが不満解消のためにあいつらに何か言ってやろうと思ってな」


「あいつら?……あいつらとは誰ですか?」



外を睨み付け腕を組むシルクシャシャ


「外にいる連中じゃ!」



燃えるように赤い髪が今にも燃えそうなのではないかと心配になったアイシェス姫は消火栓の位置を把握する。そして、シルクちゃんが何か仕出かす前に早急に今の状況を説明した。



「ふむふむ……。そうじゃったか。

魔法の授業をするのか、それで、そのぅ~いわゆる生徒たちが騒いでいたと……」



その時ある考えがふと浮かんだ。当然悪いことだ。

完璧に悪巧みの顔になったシルクシャシャは口の端を釣り上げてアイシェス姫に話しかける



「なあなあ、アイシェス? 少しだけ私に付き合ってはくれぬか?」


「えっと……、大丈夫ですけど、どんな用事ですか?」


「魔法授業の見学……と、いったところじゃな」



シルクちゃんが見学だなんて…



「ま、まさか、まさかとは思いますが、

見学ついでに自分の不満をぶつけようなどと言うお考えはお持ちではないでしょうか?」


「お! アイシェスの勘も鋭くなったな。

その通り、まぁ違うといえば違うんじゃが、あながち間違っておらん」



「だ、駄目ですよ! ブレイクさんが悲しみますよ」



「うっ! 痛手をついてきたな……。

じゃ、じゃが、私の眠りを妨げた輩は許せんのじゃ。

それにアイシェスも、もはや共犯なんじゃからな!」



「ふぇ!? な、なんでそうなるんですかぁ!」


「まぁまぁ。とりあえず眠りを妨げた輩をぶったおすのじゃ!」


「わ、私には無理です。無理ですぅ!」



アイシェスの事だからすぐにボロがでそうじゃからな、ここは慎重に…



「う~ん……。アイシェスにはブレイクの気を引いてもらおう。

本当なら私がやりたかったんじゃが、私の手で罰を与えたいという事とこの作戦の成功のためにもこれが一番の得策じゃからな。よろしく頼むぞ!」



「えっ、あ、はい……」



しぶしぶ了解するアイシェス姫をこれで仲間じゃな!という、なんとも身勝手な

同盟を結ばれ、とりあえず作戦を共にすることになってしまったのであった……







誰からも見られることの無い死角で、心地よい風に当りながら俺はシオラ石を手に取った。

シオラ石の色はいろいろあるが、炎魔法は赤いシオラ石。水・氷魔法は青いシオラ石。雷魔法は黄色いシオラ石。大地魔法は茶色いシオラ石。暗黒魔法は黒いシオラ石。回復魔法は白いシオラ石。と、まあ代表的なものだけを挙げてみたけどこれって結合魔法は2結合が限界だよな?左手と右手で一個ずつ。タコやイカじゃあるまいし、そんなにたくさん持てない。んじゃどうやろうか……。

試しに片手に2個ずつ持ってみた。いや…持てなかった。



「やっぱ、無理だよなぁ~。片手に2個ずつ持つなんて」



と、そこにシルクシャシャが近くの通りを歩いているのを発見した。


「シルクシャシャじゃないか?」


「どっどうしたんじゃブレイク?なっ何か悩み事か?」



このときシルクシャシャは物凄く焦っていた。

自分の考えている策がバレてしまうのではないかと

いや、既にバレているかも知れないとさえ思っていた。



「悩み事?んまぁ、確かにそうかな……。ちょっとこっちに来てくれ」


「なっなんじゃ?何用じゃ?」


心臓をバクバクさせながらブレイクの元へと歩いて行った。






―――――ヴェセア城・門前―――――



すでに、魔法を学ぼうと待つ三大学園(マギア学園・メイジ学園・ウィザード学園)

の生徒たちがずらりと並んでいた。そして、その中で将来の夢に胸膨らます少女がいた。



「よし! 今までの魔法の復習は完璧。段取りもちゃんと確認してきたから、失敗することないよね。私の得意分野の防御魔法を見てもらって、今回のこの魔法授業を経て、いつかはこのヴェセア城の騎士団として仕事して、妹・弟たちに楽させてあげなくちゃ!」



私の夢の第一歩!



と、門をくぐり視界がとらえた光景は強靭な肉体を持つ大柄な人やどこからどうみても天才と名乗りそうな人柄だったり、とにかく、私が居られるような場所じゃなかった……



「あ、あはは……やっぱり、止めよっかなぁ~」



『人数が揃いましたので門を閉めます。門の近くは危険ですので離れていてください』



古びた機械のようなキキィという音をたてガシャンと閉まる門

もう、引き返すことは出来ない



「うっわ~。どうしよう……」



と1人おどおどしていると自分の隣にいる丸坊主の男が何やら言い始めた。



「おい、聞け!お前ら!俺は、マギア学園一の魔法使いだ!

今回の魔法授業を経て、三大学園一の魔法使いになってやる!」



こんな暴言男をほっとくわけもなく、もう一人の男もその男に対し言い始めた



「んあぁ? おめぇなんかより俺の方がよっぽど上手く扱えるってんだよ!ハゲは黙ってろ!」


んだとぉ!?と、仕舞には、けんかを始めた



「うわっ!?ち、ちょっと!押さないでよ!!」



そんな私の声も届かず二人のけんかはどんどんひどくなっていった


「きゃっ!」



なんかもう、最悪な状況だ……。

傍杖を食うとはこの事なのかなぁ~。と、その時



「真っ黒黒に焦げるのじゃ!『ライトスピーニング』(高速電撃砲)」



眩い閃光とともに高圧電撃が二人に落ちた



「ウギギギギギギギッ!!」



言葉通り真っ黒に焦げた二人を見てある少女が高笑いをしていた

あの子は誰なのかな?もっもしかしてっ!恋人っ!?……いや、それは考え過ぎか。



「ざまーみろなのじゃ!神聖なるこの城を汚す者は、この私が許さないのじゃ」



真っ赤な髪に真っ赤な服、まるでリンゴみたいな子だなぁというのが私の第一印象。

そして、次に水色の髪をした綺麗な緑の目をしている少女が歩いてきた。

その隣にいるのは……。ブ、ブレイクさん!?

こっち!?もしかしてこっちなのブレイクさん!?それとも2人とも!?

私もあそこへ行きたい……



ブレイクが出てきたとたんざわざわし始める会場の人々。

なにせ、あの刺客を倒したという話だ。あっという間に話は広がって行った。

そんなことがありながらも、城で暇していたブレイクには全く関係ないが如くのんびり生活していたということもあって、自分の名前が出された時には驚いた。



「なんで、俺の名前を知ってるんだ?」


「当然、ブレイクは人気者じゃからのぅ。知らない筈がないのじゃ!」



胸を張って言うシルクシャシャ。

さっきのセリフやら、授業には出てくるわ、ここはお前の城じゃない。

んまぁ、とにかく



「大丈夫か?そこの……水色のワンピースの……」



俺が声をかけるとその子はびくぅとして周りをキョロキョロ見渡す。



「わ、わたしですか?」


「あぁ。そうだけど?怪我は無い?」


「だ、大丈夫です。ありがとうございます」


「名前は何ていうんだ?」


「なっ名前ですか!!え…っと、エクシアです。エクシア・フェイナです。」


「そうか、んじゃエクシア。今回のテストを上手く合格してまた会えることを楽しみにしているよ」


「本当ですか!はい。頑張ります」



とは言ったものの……テストかぁ…ってテスト!?

あれ?授業だけかと思ってたけど、さすがにこの人数じゃ無理ってことかぁ

倍率高いなぁ……。でもっ

私はこの時、ブレイクさんというお方の呼び名を変えた

こんな私を助けてくれて、心配なさってくれて、なんて優しい人なのだろうと。

だからブレイク様の気持ちにお応えして必ず合格しなくては!

この時、すでにシルクシャシャが助けてくれた事なんて頭にまったく無かった。



「ブレイク様……私は必ずここの騎士団に入団することを誓います」


小さな声で私は心に誓った。


「んじゃ、手始めに、この授業を受けることが出来る実力を持つかどうかテストをする」


「ブレイクさん?」


いきなりアイシェスが話してきたものだからどうしたものかと振り向いた。


「なんですかアイシェス姫?」


みんなの前ってこともあるし当然言葉を変える。


「あのぅ。このテストが終わったらちょっと……」


「ちょっと?何か用があるのですか?」


「……はい。少しだけでいいので」



一体なんなのか?まぁ、テストが終わった後は少し休憩時間を取るとして

とりあえず了解した。



「お主。なかなかやるなぁ」


「はい。まぁこんな感じでよろしいですか?」



尚もシルクシャシャの悪巧みは進んでいくのであった。



「それじゃ、試しに防御魔法を使ってみろ。数秒後に空からサンダーボルトを突き落すからそれを防ぎきったら合格だ。しかし、防御魔法を唱えた後、魔法を防ぐまでは魔法を解かない事だ。それが出来なければ、即刻失格!いいな?」



「サ、サンダーボルト!?幸い防御魔法は私の得意分野だけど、そんな高レベルな魔法を防げるとは思えない、…でっでも、やらなきゃ、やらなきゃ合格しない……。もーう!こうなったら自棄だ!『エナジーリフレクション』」



両手を空に広げ、虹色の光を放たせ頭上に魔法を展開させる。

ブーーンという魔法特有の音を鳴らし空から降ってくる魔法を待ち構えた。



「これでよし!集中を切らさないように頑張らなくちゃ!」



死なないよね?という心配をしつつ

ブレイク様が、数秒後、どんなすごい魔法が降ってくるのか楽しみでもあった。



「でも、やっぱり怖いな…」



恐怖を感じながらも必ず防がなくちゃならないというさっき心に誓ったことを思いだす。



しかし、ブレイク様が言っていた数秒はとっくに過ぎているのにいっこうに落ちてくる気配が無い。数秒で落とすと言っていたのにどういうことだろうか?周りを確認したいけど、視線を逸らせば防御魔法が解けてしまう。それほどこの魔法は集中しなければならない。その代わりその集中は蓄積されていって唱える時間が長ければ長いほど強力な防御魔法が出来ると教えてもらった。今、この状況なら魔法を防げるかもしれない。



「でも……」



もうどのくらい時間が経ったろうか……

時間が見れないから確認すらできない

そんなことを考えていると、しびれを切らしたのか、とうとうある男が声を荒げた。



「あ~もうやってらんねェよ!数秒後じゃねぇじゃん!ったくいつまで俺らを待たせる気だ!」


それでも魔法は降って来ず、だんだん魔法を唱えていた人がいなくなってきたその時


「無数のいかずちよ降り注げ!『マジックソーブ』(魔法解放)」



みんなが慌てて防御魔法を張るも虚しく簡単に破壊されていった。

ブレイクは放った魔法を空で止め、数秒では無く、5分程度待ってから降らした。

5分近く魔法防御を唱えていたものは当然余裕に防げる魔法も不意に来た魔法を即座に防ごうとした奴は簡単に壊される。実際敵の魔法はいつ来るかなんて分からない。それが普通だ。気を抜いていると痛い目に合うということがテスト内容だ。



「うわー眩しィ!!」



猛スピードで振ってきた魔法は私の防御魔法で防ぐことが出来た。

5分も待ったかいがあった。魔法の楯も傷1つ付いてない。



「やった!我慢しててよかった♪」


ホッと一息吐くとヘナヘナ~と地面に座る



「合格者は30名程か、他の奴は残念ながら失格だ受ける権利は無い。

不満がある者はそこにいる林檎ちゃんに言ってくれ」



「なっなんじゃ!林檎ちゃんとはっ!!……いや、特別な愛称で呼ばれるという事はもしかして気があるってことか?そうなのか……そうだったのかブレイク!?」



勝手に脳内妄想爆発中の姫様はほっといて


「おい待て!こんなんで結果を決めるんかよ!!納得いかねぇぞ!?今すぐ俺と勝負しろ!」


そうだ!そうだー!と不満の声が上がる。


「ちっ。しょうがないな。俺に勝ったら合格にしてやるよ。」


「言ったなぁ?」


「あぁ、言ったよ。 んじゃ、いつでもどうぞ」


「それじゃ遠慮なくいかしてもらうぜ!『エアロスラッシュ』(真空斬り)」


「そんな魔法で勝てるとでも思っているのか?『バーストクエイク』(岩石飛ばし)」


「岩っころで俺の技が……って!きっ効かないだと!!」


同じ魔法でもレベルが違うってもんだ。

どんなに鋭くしたって鋼並みの方さを誇る岩の前じゃあどうすることも出来ないだろう。

そして、男はと言うと岩石に埋もれうめき声をあげている。



「どうした?他に相手してほしい奴はいないか?」



しーんとなる一同。

何も言わずゾロゾロと帰って行った。



んで、ブレイクの魔法を見ていたエリシアはと言うと


「素敵!なんて素敵なのかしら。はぁ~ブレイク様と一緒にいられるあの二人が羨ましい」



そんな風にブレイクを思っているとは見ず知らず

アイシェス姫はブレイクの気を引き付けようと名前を呼んだ。



「こっちへ来てください」


「ん。あ、あぁわかった。

とりあえず合格者も広場の休憩所に移動させたことだし大丈夫かな?」


「大丈夫ですよ。なのでこちらへ」



何をそんなに催促するのか……と思いつつ着いて言った俺。

そのころシルクシャシャというと



「待て!お前ら!!」



城から出て行こうとする生徒たちを止める


「なんだ?ってかあんた誰?」


「何を隠そうこの私はじゃなぁ。ガルヘント城の姫なのじゃ!!」


「城違うじゃん、ちびっこちゃんは帰った帰った」


「なっ!何じゃとぉ。んもう怒った。

ただでさえ眠気を妨げられてむかむかしていたっていうのに!」



少しずつ長い詠唱を始めるシルクシャシャ



「どうした?ほら、危ないから高い所から降りないと、足が滑って落ちちゃうぞ?」


「うぬぬぬぬぅ~~言わせておけばぁ~『モンス・イグニフルース』(噴火)」



地面から物凄い勢いで飛び出すマグマ



「うおっ!アチッ!」


「あはははははー!ざまぁーみろなのじゃ!!」


やられゆく生徒たちを見て嘲笑うシルクシャシャ、とその時。


「いました!!『コンゲラート』(氷結)」


何人かの声が混ざった詠唱によりマグマがカチンコチンに凍ってしまった。


「なんじゃ!?何事じゃ!!ってお主らは!」


「はい。やっと見つけましたよ。シルク姫」


久しぶりに聞くその呼び方。よく見てみれば懐かしの4人達。



「セルウェン、カラゾネス、ハイシャル、ミャーゼル。どうしてここにいるのじゃ!?」



「はぁ、そりゃもう大変でしたよ。いつまで城を空けておくおつもりですか?偉い人たちが話があるっていうのに長く待たせて、だいぶ前から姫様が自分の部屋から出てこない理由も分かりましたよ。何とか鍵を開けて部屋に入った時窓のかぎが閉まってなかったんですから。こちらとしてはどんなに心配したことか……」



あきれたようにセルウェンが言う。


「さぁシルク姫、帰りますよ!やっとこの長旅も終わる」


ミャーゼルがシルクシャシャの腕をつかむ


「なっなんじゃ何をする!」


「こうでもしないと帰りませんからね。帰ったら会見ですよ!

一国の姫だっていう事忘れないで下さい」



カラゾネスは魔法(もちろんシオラ石使用)で移動系魔法陣を形成した。



「何じゃお主ら!いつからそんな高度な魔法が使えるようになったんじゃ!」


「そうですね。ギフェアさんのおかげですかね。なかなか捕まえられない人をどうやって城に連れて帰るべきかって相談したらこんな凄い魔法の指導をして下さったんですよ。」



「ギフェア……あいつめぇ…」



「姫様護衛隊、役目を果たしました!今日はパーティーだ!」



なぜパーティーになるのか分からないが、ハイシャルが元気よく言う

数日前の元気の無さとは打って変わってテンションが全然違った。



「やめろ!やめるんじゃ!!やめろと言っておるじゃろ!!」



無理やり引っ張られたシルクシャシャはあっけなく魔法陣に入れられた。








―――――ヴェセア城・広場前通路―――――



シルクシャシャがどんなことになっているかまったくわからないアイシェス姫。

どのくらい惹き付けておけばいいのか分からないのでこのまま会場に行ってしまおうという作戦に出た。



「なにか話があるんじゃなかったのか?」


「い、いえ。そんな深い意味はありません。ただ一緒にいたかっただけです。」



この言葉は本当の事であるのだが、同時に作戦を悟られないためでもあった。

しばらく歩いていると授業が行われる広場に着いた。



「ブレイクさん。私は一緒にいても大丈夫なのでしょうか?」


なんか、いろいろと困っているアイシェス姫は先程からそわそわしている


「ん? 別に大丈夫だけど居心地悪いか?」


「い、いえ、大丈夫なんですけど。」



なんか言いたそうなのは分かるが何を言いたいのか分からない



「どうした? 言いたいことは言っておかないと後で後悔するぞ?」



俺は足を止め、アイシェス姫の前に立つ、広場までは後、数メートルで到着するのだが、こっちとて、話の途中じゃ気になってしょうがない。



「い、一緒にいてもなんとも思われませんよね!?」


「…………………………」



なんだ、そんなことか。でも、そんな事で良かった。


「だ、大丈夫なんでしょうか?」


「あぁ。大丈夫だ。そのくらいのこと俺は気にしない。

そばにいてくれていた方が、俺も落ち着くだろうし、なにしろそうしてもらいたい」


「あ…はい……わ、分かりました……」



まるで機械人形のようにぎこちなく体を動かしながら俺の後についてきた。

なんか煙出てるけど頭大丈夫かな……。







―――――ヴェセア城・広場内休憩所―――――




「ふぅ~。私でも受かれたなんてなんか凄いなぁ~」


自分が受かったことの嬉しさに浸りながら休憩所で休んでいる少女は、ついに授業をうけれるんだと、うきうきしていた。



「どんな授業をしてくれるんだろ。楽しみだなぁ~」


と、その休憩所に一人の若い騎士団が入って来た。


「え~と。次の組の人たち……準備が出来ましたので、どうぞこちらへ」



彼女は目を魅かれた。彼にではなく、彼が来ている服に。

私好みの騎士団服のデザインはここに入りたいと思った1つのきっかけでもある

本当の理由はそうではないけど……



「うっわ~、なんか緊張するぅ……」


そんなこんなで授業開始。


「えーと、魔法を使う前にこの広場に特殊なフィールドを作り上げたから、シオラ石無しで授業を行っていくよ」



特殊なフィールド?

いままでいろんな知識を積んできたけど、このことに関しては全く聞いてない

本で見たことも無ければ、誰かが使っている所も見たことが無い



「ふぅ…(さすがに、10組を休憩15分程度でやり続けると体がやばい……)」



この特殊フィールドはこの授業試験を行う前に丁度暇してたシルクシャシャから教わったことだ。なんだか話してる最中ずっと緊張している様子だったけど、どうしたものか……。それについて聞いてみたが、なななな何でもない何でもないんじゃ気にせんでくれ!と、いかにも何かありますよ的な発言を残してどこかへ行ってしまった。何か話せない理由でもあったのか?後で、相談に乗ってやるか。

とにかくシルクシャシャのおかげでいちいちシオラ石を使わなくても魔法が使える。



「“とくしゅふぃーるど”って何ですか?」

首をかしげながら唇に人差し指を当てる



「え~っとな。特殊フィールドってのは―――」



ギフェアさんから聞いたことだけど、現在、サンツエルク大聖堂というところで特殊フィールド、大聖堂にいる人達、俺が知っている人で言えば、ダケストル・フォナン老師、レスター・ダランさん、ロトフェイ・マルトレスさんなどは『Sフィールド』と呼んでいるらしく、この特殊フィールドの全世界化を目指しているらしい。そもそも特殊フィールドにはシオラ石が無くても魔法が使える力がある。魔法破壊計画が成功に終わってしまった今、この不安定な世の中をどう変えるべきか話しあっている。そのことを知るのは俺とギフェアさん、そして、その他の騎士団リーダー格の人達だけである。あまり外に知られると危険が及ぶという考えから一部の人にしか話さなかった。



まぁ。これを簡潔化してアイシェス姫に教えてあげた。



「マホウハカイケイカク?」

俺の袖をクイクイ引っ張ってきて教えてと目で訴えかける



「あぁ~、え~っと……。それについては、後でじっくり好きなだけ話してやるから。」



「本当ですか!?後で。じっくりと。好きなだけですね!」

輝かしい笑顔を見せられてはどうしようもない



「ほどほどにな……」


「はい!ほどほどですね!」



分かってないな。こりゃ……

まぁ。とりあえずこの組が最後の組。早いとこ終わらせて寝よ



「んじゃ、まずは、全ての属性の初期魔法を唱えてみろ」


「初期魔法ですか?」



先ほどのテストにいた少女、エクシアが聞いてきた



「全てにおいて土台がしっかりしてないと魔法のレベルを上げても魔法は完璧にはならないんだよ」


とてつもなく感心したようでメモ用紙を取り出し何かを書き始めた。



とりあえずみんなが魔法を唱えた。



授業の様子も最初のテストを通ってるだけあってみんなしっかりした魔法を唱えている。

と思ったのだが……



「あれ?あれぇ!?」



俺の言葉をいちいち書き留めていたエクシアは魔法をうまく制御できていなかった。

どうやらかなりテンパっている様子で、普段は上手く出来ているのだろうとうかがえる。



「大丈夫か?少し落ち着けって」


「ま、魔法が制御できないっ!!」



なにがどうしたんだか、魔法が暴走し始めた。



「うわっ!」「きゃっ!!」「っ!『エナジーリフレクション』」



それぞれが魔法の対処を行っていたがいくつかの飛び散った魔法が城の外に出てしまった



「あっ!おじいさん危ない!!」



散歩でもしていたのか、のろのろと歩く老人に今に魔法がぶつかりそうだった。

いや……、ぶつかった。 ぶつかったけど微動だにせず何事もなったように手から落ちてしまった筒を拾った。俺はすぐさま駆け寄り頭を下げた。



「す、すいません!お怪我はありませんか?」


その老人はこちらに顔を向けると、まるでやっと会えたかのような友人のような顔をしてきた。


「君がブレイク君だね。」



その言葉は疑問では無く断言に近かった。

目と目が合った瞬間俺は驚いた。

……金色!?



「あなたは……」


「あぁ、すまんすまん。君が私の事を知っている筈が無いよな。

私の名前はファンベル・ラックポート以後よろしく願う」



丁重な挨拶にあたふたしているといきなり目の色を変えてしわを寄せた

それよりも……ファンベル爺だってぇ!!?



「ブレイク君。どうやら君に思いを寄せている者が沢山いるようだね」


え~っといきなりそんなこと言われても……



「ファッファッファ。いきなりそんなこと言われてもって顔しておるな。私は心眼という物を備えていてね、人の目を見ると友情関係やら悩み・力量なんかを知ることが出来るんだよ」



「そ、そうなんですか」



まっさかファンベル爺にここで会うとは思わなかった。うわ~なんという対面。俺のミスで危険を及ぼしてしまった事がきっかけで会うことが出来たなんて…良いんだか悪いんだか……



「そう困らんでもよい。私はその程度の魔法ならバリアを張らなくても平気なんだよ」



エクシアに向いたファンベルはとても落ち着いた声で話していた。



「バリアを張らなくても!?」



どんだけこの人のMFフィールド凄いんだ……

急にこの原因を作った張本人が大声を上げた



「そう焦らんでもよい。君が魔法を使ったことなど私にはわかってる。」


「えぇ!? な、なぜですか!?」


「目を見ればわかる」



手をポンっとして、そうか!と一言。

ファンベル爺も気にせんでいいともう一度落ち着かせるように言った。



「そしてブレイク君。君には後で話があるんだが良いかね?」


「あ、はい。大丈夫です。えーっと1時間ぐらいかかりますが平気ですか?」


「時間の事は気にせんでいい。良い部下を見つけることが出来れば良いのぅ」


この人はそんなことも分かってしまうのか……


「ぶ、部下!?」といきなり声を上げたのはエクシアだった。



「あー言ってなかったな。

今回二度目の試験で合格すれば俺の部下として協力してもらうことになっているんだ」



「えっ、えぇー!!」あたふたとし始める。



どうしよう。どうしましょう。どうかしてしまいますよ私。ブレイク様の部下に就けるなんてこれほど嬉しい事なんて……嬉しい事なんてっ!!



「おいおい、大丈夫か?もしかして俺の部下じゃ嫌か?」



「そっそんな事ありません!もうガンガン働きますよ!!」とまだ決まったわけじゃないのに異様にはしゃぐエクシアだった。



そしてファンベル爺はカフェ・オルリオという場所で先に待っているらしい。

俺もなるべく急ぎますと言い魔法授業の会場・広場へと戻った。



「よし、ちょっとした事故で中断していたけど、再開する。」



初期魔法からの発展魔法そして応用魔法とレベルを上げていき、精神統一・フォースを注ぐペースなどなどいろいろな事を教えて行った。とくにエクシアには丁寧に、こんな魔法を乱した時にはかなりの被害が出るだろうからこちらとて怖ろしい。

そしてテストの時が来た。



「よし、今までやってきたことのテストをする。もちろん合格すれば俺の部下としてセル騎士団に入団だ。合格人数は関係なくしっかりとついていける奴だけを選んでいくからそのつもりでいてくれ。」




そして数時間後……


「ブレイク君、ずいぶんと早かったんじゃないかね?」


「いえ、大丈夫です。テストは終わったので」


ファンベル爺の肩には黄色い鳥がとまっていた。


「ほうほう。その様子だとさっきのメンバーは全員合格だったのかな?」


「よくお分かりで、脱落者はいたんですが合計で7人が合格しました。」


「ふむふむ。力になってくれるといいのぅ。…それにしても雲行きが怪しくなってきたのぅ」


「キィ、キュイィ」と黄色い鳥の鳴き声が聞こえた。


「そうかそうか、もうじき雨か……」


確かに雲行きが怪しくなってきた。


「えっと言葉がわかるんですか?」


「わしは動物と会話ができるんじゃよ」


「凄いですね。私も話してみたいものです」


とそこへ、この店のマスターと思われる人が来た。



「ご来店ありがとうございます。何か注文する者はありますか?」


髭を生やしたツルッ禿でがたいの良いマスターはとてもにこやかで愛想が良かった。


「では、コーヒーと…ブレイク君は何を頼むかな?レモンティー?分かった。あとレモンティーを1つ」


「コーヒーとレモンティーですね?ご注文は以上でしょうか?」


「特には無いですな」


「分かりました。只今お持ちいたしますので少々お待ちください」



と頭を下げると店の奥の方まで歩いて行った。

どうやらあの人1人でこの店を経営しているらしい。結構繁盛してるみたいだけど忙しそうだ、アルバイトとかそういうの募集しないのかな?と思っているとファンベル爺の「どうかしたのかね?」という言葉にハッとする。



「いえ、1人で経営するのは大変だなと思いまして」


「確かに、愛想も良いから人気なんだろうね」


「そうですね。」



「そしてだ。ブレイク君。今日は話があると言ったけどもあまり周りに聞こえるのもまずいから少し小さい声で話すけどもいいかな?」



「あ、はい。大丈夫です」とは言ったもののまずいってなんだ?



そしてその頃、やっと目を覚ました魔人エルウェール


「う、うぅ~ん。私、どのくらい寝てて……って、あぁ!」



今まさにエルウェールの目の前には目標人物ファンベル爺が居た



「うわっ」とすぐにテーブルの下に身を隠すエルウェール。自分、何してんだろと思いながらとっさにとってしまった行動。自分の姿が知られているわけでも無いのに……



そして、敵にこの話が聞かれているとは全く知らないブレイクはファンベル爺の話を聞く。


「長年の調査の結果、魔人に勝てる方法が見つかった。と言われたら聞きたいかね?」



もちろんです。と首を縦に振った俺。それは今まで知りたかった情報だ、仲間たちを無駄死にさせないためにも必ず仇討ちをしなくてはならないため、あの頑丈魔法防御。あれが何とかできないと話にならない。ところで魔人には精霊魔法は通用するのだろうか……



「10年前の話になるのじゃが、とは言っても最近じゃがな」


「……最近?」少しの間理解できなかったが、この人、500年は生きてるんだっけと苦笑する。


「確かに、あなたにとっては最近の出来事ですよね。それで、どうしたんですか?」



「その頃のわしには可愛い子供たちが沢山いた。なぜかと言えばセントレリアーク地方のヴィズマルクという街である噂が広がっていてな、緑色の眼、それは呪いの目と呼ばれて恐れられていたんじゃ。」



そもそもその、セントレリアーク地方という場所が全く分からないのだが

世界は広いんだなーとだけ思って引き続き話を聞いた。



「そして、捨てられてしまった子供たちをわしは引き取った。小屋にはわしの他にもイーゼルという15歳の少年。10歳の女の子のエクア、まだまだ幼い7歳のピロクという少年で引き取った子の世話をしていた。もちろんその子たちも緑の眼を持つ子供たち。」



「ピロク?」


「そう。ピロクじゃ。今頃は17になっとるんじゃろうなぁ」


「会ってないんですか?」


「10歳くらいに名魔法学校に入れたんじゃよ。それから一度も会ったことがない」


「その子、ギフェアさんのところで騎士団やってますよ?」


「ほほぅ。そんなに成長したのか……それは良かった。」


「会わないんですか?」


「いいんじゃいいんじゃ。元気だと分かっただけでも十分じゃ」


とマスターが持ってきたコーヒーを一口飲み一息つくと

「話は戻るが、わしは噂の事は迷信だと知っていた。」と深くため息をついた。



「なぜですか?」なぜファンベル爺だけが知っていたのか



「緑の眼と言うのはとても貴重な合成の材料として使われていた。その貴重な合成材料を使うために街中で迷信を流し子供をかっさらっていったんじゃ。そして、わしはその合成法を知っていた。だからこそ守らなくてはならなかった、成人してしまうと眼に宿る魔力が消えてしまうらしく、まだ加減の知らない小さい子だけを狙っていた。」



「なんてひどい事を……一体誰が」


「あらゆる人間、魔人たちがやっていた。未知なる合成を求めて」


「合成のために命を奪うなんてっ」



「だから、わしは緑の眼だと悟られないよう魔法をかけ各地方へとバラバラに散らせた。もうわしにも居場所は分からなくなってしまったのだが、一方的に何人かの子たちから手紙が届いていた」



「そこに魔人に関する情報が?」


「そういうことなんだ。探してきてはくれないか?」


「もちろんです。任せて下さい」


「それは助かる。名前はミゼル・キートン・リエラの3人情報はこれだけなんだが大丈夫かね」



俺はハイと言うとファンベル爺は微笑みながらマスターにコーヒー代を払い「またどこかでな」と言うと店から出て行った。



「あんなこと言っちゃったけど手がかりも無しにどうすればいいものか」



ポツポツ……



雨が降り始めた。と同時に



ピシャー!!

ゴロゴロゴロ!!!!



雷の音も聞こえてきた。


俺もマスターに代金を払って城へと向かった。



「この感じ、あの時と似てるな……」



その日の夜、物凄い疲労感とともに俺は倒れるように眠った。








「いっぺん死ね!」

「なにすんだよ、ちびっ子野郎!」

「貴様!行ってはいけない事を!」



「ったく、こんな雨じゃどこにもいけねぇじゃねぇかよ……なぁ新神」

「そうだな。まるで台風が来てるみたいだよな」

「なのに外に出るのか?」

「そう。病院に行かないとな、妹が待ってる」



「えっと、ご飯。一緒に食べないか?」

「ももももちろんです!ぜひともご一緒に!!」



「君がリエラ?」

「何故私の名を?あぁ。ここ最近のストーカーはあなたですか…」



次回『緑眼の子供』

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