EXⅠ 退屈
今回はブレイクの話ではなく
ブレイクにとっては危険な人物が動き出します。
――――魔王城・王部屋――――
今日も戦いの無い退屈な時が流れた。これを人間どもは平和というのだろうな
部屋の大きさはどこかのホテルのスウィートクラスなのだが装飾品は一切無い、あるといったらベッドの横にある花瓶に飾られた花くらいだ。今はテラスに出て空を眺めているのだが
「つまらんな………」
ボソッとそういった。普段、城の中を歩き回るのも飽きたからテラスに来たが、ここも何度目だろうか………。
「なにか面白いことは無いですかね………」
隣にいる金髪のツインテールに赤い目をしているエルウェールが言った。着ている服は動きやすい生地にガーターベルトをしている。魔神王は何も言わなかったが、そういう性格なのはよく分かってる。簡単に感情を表に出さないし、ここに初めて入隊した頃から冷徹な性格だったし、規則を破るものは即刻首を刎ねた。しかし、心底悪い人ではない気はした。あの時は私に優しくしてくれた………
その時、いつもの日常に機転が訪れた。
ガチャ!
「ギーヴァ様!問題が起きました」
「入るときには礼儀ぐらいあるだろう。ツァツェ」
特に表情を変えることなく口調も随分落ち着いていた
急いで入ってきたツァツェは方目を覆うほど長い銀髪形で美青年であり、上も下も青黒い色の清楚な紳士服を着ている
「ご無礼を失礼しました」
片膝をつき低頭した。
「それで。用は何だ?」
「はっ!ハイエント地方に謎の少年を感知しました。そこの見張りを担当していた者が、空中に次元を歪めいきなり出現したと言うことです。」
魔神王は滅多に笑うような人ではなかったが、それでもほんの僅かだったが笑った
「次元を歪めた? ……ククッ。これは調べてみる価値がありそうだな……」
エルウェールは久しぶりに見たギーヴァ様の笑みに少し嬉しくなった。その笑みはすぐに消えてしまったが、それでもしっかり見ていないと分からないほどほんの少しの笑いだったのは確かだ。こんなこと、何年ぶりだろうか………
「ツァツェ、今後もそいつについて詳しく調査を続けてくれ」
「はっ!分かりました。」
失礼しましたと告げ、その場を後にした………
――――魔王城・最上階廊下――――
ツァツェにとってギーヴァ様は憧れの存在でありどんなに頑張っても追いつけない力を持つお人……いや、魔人様である。この人が魔人だと知るものは、この城で俺か、エルウェールくらいだ。
他の兵はギーヴァ様が魔人であることなど知りもしないだろうし、魔人という存在は、恐れられている存在である。
昔話や神話・言伝えなど魔人の強さは誰一人として知らないものはいないだろう。
「あの少年に興味を持ってくれたおかげで、しばらくはギーヴァ様を退屈にさせることは無くなりそうだ」
ツァツェも軽く笑みをこぼし階段を下りていった………
「必ずやあの少年の情報を徹底的に調べ上げギーヴァ様にお伝えしなくては」