第十六章 悲しみを乗り越えて
ブレイクはこの世界には絶対にない物を発見した
そしてそれはどういう意味を表すのか……
「……ここは?」
目が覚めた場所は天超地だった
「俺……また、死んだのか?」
死ぬ前の記憶が無い……
確か誰だか分からないテレパシーが問いかけてきて……
う~ん……その先が思い出せない。
「あら。ブレイクじゃない♪……ん?」
「どうした?」
キルティは俺をじっと見たまま固まっていた。
「俺の顔になんかついてるか?」
「ブレイク。あなた、死んでここに来たわけじゃないわね?」
「俺が死んでない?」
「そう、体の色が通常より全然濃いし、あっちの世界でなんかあったの?」
「分からない……記憶が無いんだ…………」
どうやっても思い出せない
その記憶だけを切り取られたような感じだ……
「なぁんだ。コーチできると思ったのに……」
「あはは。キルティはスパルタだからなぁ……」
「うふふ♪……そういえば、ブレイクの世界は大変なことになっているわね」
「俺の世界?日本の事か?」
「あ、ごめんごめん……パロバッセのことよ。私はこっちで定着してるから……ついね」
「そうか……。日本は今更戻れないし、関係無いか。んで、何が起こってるんだ?」
「凶悪な何かの力が働いているのよ、詳しいことは分からないけどとりあえず注意して」
「分かった。ありがとな」
「んじゃ、また頑張ってきてね」
「おう!………………どうやって戻るんだ?」
「その状態なら目を閉じるだけで大丈夫かな?」
「了解!」
「あ! 待っ―――!」
キルティがそう言った時には目の前から俺の姿は消えていた。
そして俺は天超地からパロバッセへと戻っていった
どのくらい気を失っていただろうか…………
夢を見た感じがするんだが、あまり覚えていない……
俺が目を覚ました時にはギフェアはすでにそこら辺を探索していた。
そしてあるものを見つけた
「これはなんだ?」
ギフェアがとったものは一枚の紙だった
「う~ん……なんて読んだらいいのかさっぱり分からない」
ブレイクなら分かるのでは?と判断したギフェアはそれを俺のところまで持ってきた
「お!起きたか。早速だがブレイクはこのぐちゃぐちゃした字が読めるか?」
分かりましたと受け取りそれを見た瞬間にびっくりした。
「っ!?」
それは名刺だった。しかし、意図的のように消された文字と顔写真。
読めたのは名刺の説明やらあまり関係ないものだったが……
「竜崎幸次……?」
名前だけは残してあった…………
この世界に来たのは俺だけじゃなかったってことか……
一体誰なんだ。
「ブレイク?読めたか?」
「分かりましたよ。この人は俺と同じ世界に住んでいた人です」
「ブレイクがいた……?日本というところか?」
「そうです。しかし、一体誰なんかが全く分かりません……誰かによって意図的に大切な情報が消されています」
「そうか、それは残念だ。なにか大事なことが書かれていたかもしれないのにな……」
「そうですね」
でも、俺以外にこの世界に来た人が居たというのは知っておいた方がいい情報だよな?
「今回は2人の犠牲を出してしまった。俺の親友も命を落とすということになってしまって、結果も失敗に終わってしまった。魔法もこのように出すことが出来ない」
そういって炎のスペルを唱えても少したりとも燃えることは無かった
「これでは魔法も使い物にならない……」
「この先どうなるんでしょうか……」
「いったん、基地に戻るしかないでしょ!」
そう言ってきたのはとても元気そうなアイナだった
「あ……あのぅ。大丈夫ですか?」
「ん? 心配してくれたの?ありがとね。私は大丈夫よ。大体、いつまでも悲しんでたらテペバロクも困るでしょ?」
騎士団のリーダーが命を落とすことは
アイナさんが次にこの騎士団を支えていくことになるのか
「そうですよね。」
「そうよん!私も、いつまでもクヨクヨしてたら怒られちゃうわよね。空の上まで行ってまでも心配はかけられないわ」
みんな。強いんだな……
「んじゃ、ここを一気に脱出するか」
ギフェアは魔法を唱えた。
「『オールエスケープ』(範囲内脱出)」
…………………………………………?
「???」
「…………? あ!魔法、使えないんだっけ?」
「どうしたんですかギフェアさん?」
「そうだった。私としたことが……」
そういって頭を押さえるギフェア……
今さっき、魔法が使えないからどうするかとか、悩んでなかったっけ?
……天然か?
「でも、どうやって脱出すれば……」
確かに。なんか持って無かったかな?
って持ってるはず無いよなぁ~――ん!?
コツッ!
「ん?……なんだ?この箱」
開けた箱にはシオラ石の形によく似た石がたくさん入っていた。
「ギフェアさん。この石でなんとかできませんかね?」
これが、普通の石っころなら馬鹿げてる話だが、これはきっと使えるはず……
だってこんなにキラキラして綺麗だから!
って言ってもただそれだけだが……
「こ!これは!?シオラ石じゃないか!……しかも、レアものばかり……」
周りにいた騎士団全員がギフェアの周りに集まった
「本当だ!こんな色初めて見たぞ」
「聞いたことがある。シオラ石には緑の他に赤・青・黄・白・黒・紫・銀・金・透明の色のついた石があって、魔力がいつしか無くなったとしてもこの石を使えば魔法を発動できるという話だったのだが、本当にあったとは……」
はぁー。そんな話が合ったんだ…………
なんだか知らないけど、俺、かなりすごい物持ってたんだな……
でもいつ貰ったんだっけ……
「しかし、使い方が分からない……」
ギフェアが頭の中の引き出しを猛烈に開け閉めしたが見つからなかった……
「うる覚えかもしれませんけど、扱い方を本で見たことがあります。」
「それは本当か!?」
さすがはゼナスさん。こういう冷静でクールな女の人ってこういうことに詳しいよな
「はい、とりあえずやってみます」
シオラ石を1つ1つ手に取り記憶をたどる……
「脱出系魔法は銀色のシオラ石ですね。そしてこれを……」
誰か、ペンを持っていませんか?と聞いたところルイセスが貸してくれた。
そして地面に騎士団全員を囲むように星を書き中心に石をおいた。
「これで準備完了です。移動系の魔法陣はこれでいいはず」
「それで、どうするんだ?」
魔法陣の中であぐらを組みながら座るドンハスが訊く
「中心。石に向かって、なんでもいいので自分の持ち物を投げて下さい。そうすると発動するはずです。」
ドンハス以外、身近にある武器をみんな持った。
ちなみにドンハスは靴
「じゃあ、いきますよ!1・2・3で投げますから」
せーのっ!とゼナスが掛け声をかけ
全員で1・2・3を言った。そうして中心部に私物が集まった瞬間、騎士団全員が姿を消した
最初にいた場所に戻ってきたみんなは目の前から飛んでくる武器を寸前で避けた。
「おわっ!!」
「っぶね!!」
しかし、スピードの関係で死なずにすんだ。
ん?俺は飛んでこないぞ?って浮いてる……
さすがは意思のある剣だよな。ありがとな。ミヴィ
(いえいえ、私があなたを傷つけるようなことは一切ありませんのでご心配なく)
「お?戻ってきたか、どうした?洞窟では一切話しかけてこなかったが」
(テレパシー妨害の関係で話しかけても通じなかったみたいです)
「やっぱりそうだったか、まぁ、またこうして話せてよかったよ。それにしても、すいませんみなさん。まさか、こんな返し方になるとは……」
「いやいや、いいって、ワープしてきた瞬間に自分の武器で死にそうになったけど、外に出れたことがなによりだ。感謝してるよ」
少しギフェアさんの皮肉が混ざっているようにも聞こえたけど
確かにそうだ。もし、ゼナスさんが使い方を知らなかったら
今頃、あの洞窟内をさまよってたとこだろう……
「あ~それにしても帰りが大変だな……何キロだっけ?相当歩く……いやシオラ石を使えば!「残念ながら、銀・金・透明のシオラ石は1度の使用で1日は使えなくなってしまいます」……んなっ!」
そのあとの俺はあまりにも良すぎる思いつきのせいで激しく落胆したのであった。
――――SZAK特別基地――――
「ただ今戻りました」
「おぉ!帰りが遅いから心配したのだぞ」
迎えてくれたのはダケストル老師だった
「はっ!申し訳ございません」
「いやいや構わん。結果報告をしてくれ」
みんながみんなの顔を合わせる…………
「はっ。結果は失敗に終わってしまいました。犠牲者は2名テペバロク・ウオラッツェ・トルツ・イオナンテです……」
「……そうか、戦いにそういうのはつきものだ」
ダケストル老師はただ、そう言うだけだった。
SZAK特別基地を出る前に老師から慰めの言葉と今回の報酬をいただいたが、それ以上話すことは無かった。
その後、各地方の墓で勇敢な2名騎士団を埋葬をし、深い祈りをささげたのであった……
138年7月24日
テペバロク・ウオラッツェ、トルツ・イオナンテ
この2名は勇敢に戦いを挑んだ勇気ある者、今ここに眠る
どうか、安らかに眠って下さい
――――アルタンテ地方・キャラル――――
俺はポケットに入れた名刺を取り出す
「一体誰なんだ?竜崎幸次って……」
魔人が持っていたこの世界には絶対にない物
なぜそんなものを持っていたのか?
どこで手に入れたのか?
本人は今どこにいるのか?
次々に浮かび上がる疑問に頭を悩ませながらアルタンテ地方を後にした……
次回は新キャラ登場です(姫)
ちなみに場所は、ジェキア地方のガルヘント城というところ
そしてブレイクの周りでなにか不穏な雰囲気が……
はたしてブレイクの運命は(笑)