第十五章 魔法破壊計画の阻止 後篇
――――魔人基地・中心部――――
テペバロクが命を落としたことでアイナに怒りがこみ上げる
力を振り絞りゼナスの相手をするエルエスに向かっていった
「こちらの魔法が一切通じないようですね『双剣無双!』」
カキンッ!キンッキンキンッ!!
「そんな物理技が通じるとでも?」
「ゼナスっ!大丈夫っ?『6弾ジャックポット』」
「たった6発の弾が私になど通用す………………なん……だ……と?」
「その弾はね、少しでもかすれば1発が10発の弾に分裂するのよ」
「改良の散弾銃か・・まぁ・・・私は・・分身の身・・・本体ではないので・・あしからず…………」
「助かりました。」
「いやいや、気にしないで、それよりも援護に行くわよっ!」
「了解です!それより……平気なのですか?」
「ん?アイツの事だしあの世でも元気にやってるでしょうよ。いつまでもクヨクヨしてたって何も変わらないでしょ?」
「そうですね。さすがアイナさんお強いです」
「このくらい当然よ?」
「……さすがです」
「えいっ!」
「カルトベーターか、クセのでかい武器だな。」
鎖の先に付いた鎌を自在に振り回す
「そーお?私にはとーっても使いやすいわよん」
「そうか……。我こそは魔神王の使いなり、暗黒魔導書ネクロノミコンの元、今この者をとらえ絶望と終焉を迎えよっ!」
「いやんっ!束縛プレイはあまり好きじゃないのよねん」
「何言ってるんですか!早く逃げて下さい」
「ん?……あ!トルツ君、私なら大丈夫よん。それより後ろ。来てるわよ~」
「えっ!?っとっと!!」
「他の人を構っている程、暇がおありとは、私もなめられたもので…………」
ザクッ!……
「どこに気ィ取られてんだぁ?これであんたもおしまいだ」
ドンハスが後ろから糸かなんかで首を切り落とした
暗殺術を得意として扱うドンハスだと分かりブレイクは少しぞくっとした……
「ふっ……そのようですね。しかし本物は私ではありませんよ。では……」
そういってエルエスの影は全て消えた……
「ウェズペスを今すぐ放せっ!!」
「それは無理な話です。SZAK騎士団を殺すことは私たちの計画の大事な材料になります……」
「材料?それはどういうことだ?」
剣を構えたギフェア言う
「ふふふ……。5人の騎士団を殺す時その命を魔神王に捧げることで強大なる力を取得することが出来るという言い伝えがあります。」
「言い伝えごときを信じるというのか!?」
「信じるも信じないも私たちの自由。あなたたちには関係ありません」
「それなら、僕と勝負をして勝ったら放してください!」
「フフ…フハハ……私と一騎打ちですか?面白い……負ければあなたの命もいただきますよ?」
「覚悟!『エクスプロード』(大爆発)」
「ほぅ、炎の上級魔法か短い詠唱時間でこの魔法を出すことが出来るなんてなかなか……『アブソリュートゼロ』(絶対零度)」
丸い大爆発を起こした炎をまるで、包み込むようにしてカチカチに固まらせた……
それは何かのアートのように綺麗なもので詠唱時間は口を少し動かした程度
「氷属性の超級魔法…………(こんな奴に勝てるはずがない……)」
トルツは絶句した。自分がどんなに頑張ってもこんな奴に勝てないと……
「どうしましたか?あなたも私によって殺されるのです!『オーバーウェルム!!』(打ちのめす)」
「トルツ!逃げろっ!!!」
ギフェアが叫ぶがトルツには全く聞こえていない
「一体どうすれば……」
俺は考えた……。しかし、ミヴィのいない今じゃ何も……
(お前はそんなにも弱いやつだったのか?)
ミヴィ?……じゃない……誰なんだ……
(そんなやつが俺の子だったとはな……)
父さん…………いや、違う。俺の父さんとは少し声が違うような……
(仲間が死にそうになっているというのに指を咥えて見ているというのか……)
俺にはどうしようも出来ない……俺には…………
(そうか……。目覚めよ!『ソリドゥスポテンシャル』(究極なる潜在力))
「っ!?……うぐっ……ぐぐ……がはっ!かはっ……」
「どうした!?ブレイク?」
「き、急に体が…………熱い……熱いっ!」
そういって胸を押さえながら俺は地面に倒れた……
体全体が火傷を負ったように熱かった
「こっちを先にとどめを刺した方が効率が良さそうですね『ウィケッドインパルス』(邪悪に纏う電撃)
「ブレイクっ!!大変だ、みんな!援護を!!」
「もう遅いっ!!!あなたもこれでおしまいですっ」
「クククッ…… それはどうかな?」
「なにだと?」
ブレイクは手をぶらぶらさせて床から立ち上がった。
まるで墓から這い出てきたゾンビのように
「ブレイク?」
もはやブレイクには何も聞こえなかった。
「我。闇に生きるものなり!」
そう言いを片手を前に出すとブレイクの目の前でウィケッドインパルスがいとも簡単に打ち消された。
それも詠唱時間は皆無……
「なにっ!?」
「光とは苦痛を与えるものとなり!」
光の柱をいくつも構築してさらに呪文は続く
「闇とは我を強くさせ、相手に大いなる光よ降りそそげ!」
ブレイクの背中から赤いラインが入った紫色の翼を生やし、地面に魔法陣を作り上げた。
「これは!?・・・破壊・苦痛・野望・絶望・悲劇・悪夢・憤怒・終焉のスペルで作り上げた魔法陣・・・。一体どういう事だ?」
「相手に苦痛を!『レイディアントホーリーエンジェル』(光輝く聖なる天使)」
目が眩むような光を見せられて、もはや視界は真っ白で何も見えなかった
「リ、『リジェクトオォォォ!!』(排除)」
「ふん……そんな魔法、我の作り上げた魔法に比べれば雲泥の差。消えろっ!!」
リジェクトはただの紙切れのように破れ消えた……
「こ、この私が……こんな奴らに負ける……だ……と?考えられない。考えられない!!どうせ死ぬなら……!」
「……弱いな。我に勝てる者などこの世に存在するのだろうか……」
そう言葉をはくと何かが抜け去ったようにブレイクは、ふっと倒れる。
「ブ、ブレイク!?大丈夫か!?死ぬんじゃないぞ?死んでしまったら姫様にどう話せばいいのやら、私は、顔をお見せすることも出来なくなってしまうのだぞ!?」
「大丈夫です。落ち着いてください、ギフェアさん。一時的な膨大な魔力使用の為、意識が途切れているだけです」
冷静なゼナスの対応でなんとか落ち着きを取り戻すギフェア
「という事は死んでないんだな?」
「そうです。安心してください」
(…………くっ……アイツだけは……アイツを倒せば……騎士団を2人狩った……こと……に……じ、自爆……魔法…………『デス』(相手に絶対なる死を))
そういってエルエスは死神を召喚したことによって息絶えた…………
その息絶えたエルエスを遠くから眺める少女
「ったく。死んだら騎士団いくら殺しても意味無いじゃない、生きていればそれなりの褒美もくれただろうに、バカねぇ……。まぁ、ブレイクは生きてるみたいだし何の問題も無いわね♪」
「ウェズペス!大丈夫ですか?」
「わたしなら大丈夫よん!それよりみんな無事かしら?」
「そうだね。みんな無事……の……よう………………テペバロク?」
視線を向けた先には体をあちこち刻み込まれたテペバロクだった。
アイナはアイナの着ている服をそっとテペバロクにかけて手を合わせていた。
「ウェズペスさん……」
トルツはそう言いながらウェズペスに向きかえると後ろから
死神がウェズペスを鎌で切ろうとしていた。
「っ!?危ないっ!!!!」
とっさの判断でウェズペスにショルダーアタックをかまして吹き飛ばした。
「とっ!トルツ君っ!!」
「……あなたに会えて本当にうれしかったです。……僕、強くなれましたか……?」
★★★★★イスナル城・ウェズペスの部屋★★★★★
タッタッタッ!
「ウェズペス隊長!城門前で人が倒れています」
「っ!なんだって?助けに行かないとっ!」
「これは倒れている人が持っていた物です」
「……入団手続き?」
「どうやらそのようです。こんな時期に入団するとは珍しいものですね」
「確かに……ちょっと珍しいよな」
「あ!あそこです。」
目の前にはボロボロになった服を着ていた少年だった
そして、なぜかその子にこの俺が恋心を抱いてしまった……
「可愛い……」
「……ど、どうなさったんですか?ウェズペス隊長?」
「ん?あぁ……なんでもない、とにかく治療室へ運ばないと」
――――イスナル城・治療室――――
「…………ここは?」
「目覚めたか?調子はどうだ?」
「は、はい。どこも痛くありませんし大丈夫なようです」
「ならよかった。ところで何であんなところで……」
そう言うと、あ!と飛び起きてポケットを確認する。
「ん!?無い……無いっ!入団手続きが無い!」
「お、落ち着いて、君が持っていた物はこれ?」
そういって一枚の紙を見せる
「あっ。はい、これです。ありがとうございます」
……トクン!
その笑顔は私の心奪っていった……
まさか、こんなことになるなんて
「そ、それで、なんでここに入団を?」
「小さい頃から、イスナル城での騎士団員さんたちがやっている練習風景を見ていたんです、みなさんのかっこいい姿を見ていたらどうしても入団したいと思いまして。」
「それにしてもなんでさっきはあんなにボロボロで……」
「あぁ……それですか。僕、昔からいじめられっ子で、いつも周りからいろいろ言われてたんです。父のことや母のこと、妹のことも、借金をしてることがバレてそれを毎回のように……。」
顔をうつむいて話す姿に耐え切れなくなり止めようとしたのだが
「だっ、だから、必ず強くなって!家族みんなを守れるくらい強くなって!将来は養えるくらい稼いで、あいつらに馬鹿にされないくらいの人材になって―――っ!」
俺はその子を抱きしめていた……
今は、好きだからとかいう感情は一切なく。ただ、俺と同じ人生を歩んでいたから共感できた。
「そうか、ここに入団すれば必ず強くなる。必ず。保証しよう!」
「本当ですか!?」
「本当だとも、さぁ、元気出して!これから毎日特訓だからな!」
「はいっ!!よろしくお願いしますっ!!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ほんの数秒の出来事だった……
死神の鎌は体を切らずに通り抜け、トルツの心臓だけを狙い、体から抜き取った。
ドクンっ……ドクンっ……………………
死神はその心臓を丸呑みした。
ゴクリっ……
「と、トルツ君?」
出血はどこも見られなく、その顔は悔い無く微笑んでいた…………
「お、起きて!何寝てるのよん。どうせ……そうやって脅かすんでしょ?」
そんな事を言わなくてもウェズペスには分かっていた。
生き返ることなんて絶対にないと…………
それでも、少しでも可能性を信じて体を何回も揺さぶった。
「本当に、強くなったわね…………。こんな私を守れるなんて」
仲間を二度と殺してはならないと誓ったのにこんな事態を招いてしまった
最初はみんなで仲良くやってたのに。何故……。
あいつらの計画も残り3人になってしまった
計画を止めるためにも……計画!?
忘れてた!と思った時には遅かった…………
プシュ~~~
そんな音を立てながら怪しい煙が四方八方から迫る
「なんだこれは!ごほっごほっ……」
「みんな。気をつけろ」
そう、ルイセスが言ったときにはもう遅かった
「かはっ!」
「な・・なんだこれは……体から……ち……力が…………」
「こ、これは……魔力……が、抜き取られています」
「魔法……破……壊……計画…………なの……か」
ドサドサッ!
その嫌な空気が消え去った後、しばらく全員がその場で倒れていた。