第十二章 魔人基地への侵入
俺は特別基地へ行く前、とても不思議な夢を見た。
「……ブ…………ク」
何か聞こえる…………
「……ブレイク…………」
俺の名前を誰かが読んでいる…………
「ブレイク!!」
「うわっ!!?」
目を開けたら目の前にキルティが居た
余りに近いため頭をぶつける
「いったいわねぇ~。……まぁ今回ブレイクの夢に無理矢理入り込んだわけはね、ちょっと渡したいものがあるから読んだのよ」
「渡したいもの?ってか夢で渡されるのに持ち帰れるのかよっ」
「あぁ~。そこらへんは気にしないで、ちゃんと持って帰れるから」
そういいながらどこから取り出したか分からない大袋から何かを探し始める……
「えぇ~っと……。ん!これだこれ。ブレイクに渡すものはこの石」
……石?と思いながら受け取ったのは綺麗な赤・青・黄・白・黒・茶・紫・銀・金・透明の10色の石
どこかで見た形によく似ていると思いながら、なかなか思い出すことが出来ない……
「なぜ俺に?」
そう問うとキルティもしわを軽く寄せながらこめかみに手を当てる
「それなんだけどねぇ。私にもよく分からない!」
だ、断言されたし!?
そのよく分からないものを渡されても困るのは俺なんだが……
「でもね、これを渡しといたほうがいいって言ってた」
「誰が?」
「上層部の人にそう言われたんだよね。ぶっちゃけ意味わからないけど、ブレイクに見せたら何かわかるかなぁ~って思ってね」
「ごめん、俺も思い出せない……」
「まぁ、持ってて損は無いでしょ♪なんかキラキラしてて綺麗だし」
そりゃいいけどなかなか重たいぜ、これ……
長時間持ち歩くのはきついし
「まぁ気分的にいいかもな……」
「でしょでしょ!んじゃまた何かあったらこうして夢で呼ぶからよろしくね♪」
「んじゃ、今度は頭ぶつけないようにしてくれよな」
「あ、あぁ……そうね。了解!」
そういうとなにやら腰についているものを取り外す
「なんだそれ?」
「久しぶりの十字架の登場ですよ♪」
「じ、十字架!!?」
俺は戦慄した……。記憶の片隅に眠る恐怖を思い出す
「よいしょっとぉ~。これ、見かけによらずほんとに重いからねぇ~」
この言葉も聞いたことのあるフレーズ
「ち、ちょっと?キルティさん?……どうかなされましたか?」
「ん?やっぱり目覚めはスッキリした方がいいでしょ?」
いえいえ……。頭痛で悩まされますよ
「それで、それをどうするおつもりで?」
ほとんど分かりきっていることだが聞いてみる
「聞こえなかった?これ!意外にぃ~重いのよねぇ……」
「いや、だから、その~」
俺の言葉は全く聞いてなく標的に向けて十字架を構える
「目指せ!ホームラン!!振りかぶってぇ~~~」
「や、やめてくれまうぐっ!!」
「カッキーン!!っとぉ~。頑張ってきてねぇ~」
ブレイクは
目が飛び出るかと思った
体が砕けるかと思った
一生頭痛がしそうな気がした
その他症状もろもろ降りかかった……
――――SZAK特別基地――――
ヴェセア城から南に約10km進んだところにある地下の基地
入り口が、高級ホテルにあるトイレの掃除器具入れを魔法を唱えながらずらすとあら不思議。秘密階段のご登場です。そして今、俺はそこをギフェアと下へ降りている途中……。
なんか頭痛が朝から酷いんだがどんなことがあったのかいまいち思い出せない……
綺麗な天使にぶっ飛ばされたという恐ろしい夢だったような気がする
でも、そのことについてはあまり深く考えたくなかった
「ギフェアさんのおかげで場所がすぐにわかりました」
「ここの街にはよく来るからな」
「ここの街って確か、アルタンテ地方のキャラルってとこですよね?」
「そうだが?」
「このキャラルって所、何もかもが高級品って聞きましたが何を買って……?」
「まぁ確かにここは高級品ばかり売られているが、珍しいものも売っていてな。そうだなぁ……香辛料とかレシピとか、よく買うかな」
「ギフェアさんって料理とかするんですか?」
「まぁな。今度タルタンテっていうの作るから食べに来るか?」
「タルタンテ?」
「それについてはまた後で話すよ。……さぁ到着だ。ここがSZAK特別基地」
そういって見せられたドアは……いや、ドアじゃなくこれは布か?
そのようなものをとにかく、くぐり抜けた場所はもの凄くしっかりとした施設だった
「入り口とは違いこんな凄い場所があるなんて……」
「ん?あぁ。ここはなぁ、少し前に改装されたんだが入り口まで改装費がいきわたらなくてな」
計画性ってのが無かったのか……?
それはそうと、既に集まってる方たちが数名……いや、これで全員か……?
それにしても少ないなぁ~
「その服装はセル騎士団のギフェア・リザクストさんですね?」
そう声をかけてきたのはゼロ騎士団所属の人
そっか、さすがギフェアさん。いろいろな人に知られてるんだな…………ってあれ?ギフェアってリザクストって言うんだ。初めて知ったし。……ってことは騎士団全員に下の名前があるのか。ちょい興味ありだな。
「お!ルイセスじゃないか。久しぶりだな」
「お久しぶりですね。え~っと、そちらの方は……」
「俺はブレイクです、よろしくお願いします」
「こちらこそ。私はルイセス・ファボラーテ、これからは、選ばれた9人で力を合わせることになるだろうからよろしく。あ、あと他にもドンハスとゼナスがいる」
「あの二人も来ているのか」
そういって俺とギフェアさんはルイセスと握手をした
「あ~ら。そこの可愛い男の子はなんていう名前かしら?」
っ!? 顔を見なくてもわかる…………こいつはおかまだっ!!
「君?君に聞いてるのよん」
「え?俺ですか(出来れば話したくなかったんだが)」
「そうそう。なんていう名前なの?」
「ブレイクです。よろしく」
そういって顔を合わせると意外と美青年だった
「ブレイク君?良いお名前ねん♪私はウェズペス・ヨーグンツよ。これでもクア騎士団のリーダーを勤めてるのから。よろしくね♪」
でもまぁ……喋り方のせいでせっかくの顔も台無しだ
しかもリーダー勤めてるんだこの人。この騎士団大丈夫なのかな……
「あまり周りから引かれると後で困りますよ。ウェズペス」
「トルツ君ったら私のことが心配なの?優しいわねん」
「いえ、クア騎士団の名誉に関わる問題ですので。……あ、失礼しました。僕はトルツ・イオナンテです。よろしくお願いします」
この子がいるから大丈夫か。ってかいなかったらどうなっていたことやら……
「おい。あんたらたち、どんな武器使ってんだ?……ってギフェアじゃないか。久しぶりだな~」
「テペバロクかぁ。最後に一緒に戦ったのはファベスト帝国の襲撃以来だな」
そう話しかけてきたのは……アカ騎士団か、ずいぶん仲が良さそうだな
しかもファベスト帝国の襲撃って一体どんな戦いだったのか……
「そうだな。こうしてまた戦えるのも何かの縁だ。頑張ろうぜ!」
そうしてみんなの武器紹介が始まったのだが
「私は、チャクラムを使います」
へぇ~ルイセスさん、チャクラム使うんだ
「私はカルトベーターよん」
カルトベーター?いったいどんな形状をしてるんだ?
セル騎士団のみんなが持っていた武器とは違うものばかり……
「そうか、俺はアックス系の武器だ。そして俺の名はテペバロク・ウオラッツェだ」
「私はアイナ・リザベキート。テペバロクと同じアカ騎士団所属よ。武器は3バレルフリントロックっていう銃を二丁」
うん。この人は女の人だ。武器は3バレル2丁持ちとか超かっこいいな
……テペバロクの彼女に見えるけどどうなんだか
そしてある程度紹介が終わった時、老師さんが階段を下りて来た。
一通り挨拶を交わしたところで中央の席に着いた老師さん
「ゴッホン。……さて、今回の任務の話だが、お前たちにはボルテキア地方のマシリストにあるといわれている魔人基地の調査に行ってもらうとする」
魔人基地への調査!?
「分かりました。……しかしなぜそのようなことを?」
ギフェアが訊く
「ふむ。奴ら、魔人の秘密実験の情報がこぼれてな。どうやら一刻も争うようなんじゃ」
「一刻も争う?」
少し疑問に思いながらルイセスが話す
「そう。どうやらこの世からスペルという概念を消すやらなんとかのぅ」
「それは大変じゃないですかぁ~。もし、そんなことが起きたとしたらん」
ウェズペスの口調からしてまったく焦ってるとは思えない
「お前さんたち、いや、この世界の人々皆、魔法が使えなくなるんじゃよ」
魔法が使えなくなる!?どうやってそんなことを……
アイツの仕業だろうけど一体何の目的があって
「そういうわけで早急に対処してもらいたいのだが」
「わかりました。ダケストル老師」
胸に手を当てギフェアが答える
「では、何か危険があった時の対処は各自任せる。命だけは大切にな」
はっ!!と全員で返事を返し、その後、俺たちは、必要最低限のものを用意して早急に現場へと向かった。
――――ボルテキア地方・マシリスト――――
「ここが魔族基地のあるマシリストかぁ」
アルタンテ地方のキャラルから西に10km進んだところにボルテキア地方が存在するマシリストへはそこからさらに南に3km。はぁ~疲れた。帰りは単純計算で23kmかぁ~。そして先ほどから約1時間ほど入り口を探しているのである。
「おーい。見つかったか?」
ルイセスが声をかけるも見つかりませんと帰ってくるだけで、やはり見つけることは簡単ではなかった。
「あら?これはなにかしらん?……えいっ!」
ウェズペスが単三電池ぐらいの大きさのロープに気づき引っ張り上げると。直径約100mの穴が開き、全員落とされた。
「くッ!罠か!誰がこのようなことをっ!」
「気をつけろ!!何が待ち受けているか分からないぞ!」
みんな武器を構え戦闘の準備をする
……ん?このまま落下したら骨折れるよなぁ
シュタッ!!
「よっと!」
「結構深いところまで落ちちまったなっ!」
シュタッ!!
華麗に地面に着地する騎士団たち。慣れてんなぁ、でも、おかげで降り方が分かったよ
武器の先に圧縮した風を纏わりつかせクッション代わりに使用する。なんて誰が考えたんだかな。
シュタッ!!
「全員無事か?……平気みたいだな」
「……そしてここはどうやら目的地のようだ」
壁のところどころに何かの絵が描かれているが何を意味しているものか……
道は二手に分かれていてどちらも暗く先は全く見えない
今ここも、空からの光でかろうじてみんなの顔が見えるくらいだ
「どうしますか?」
なんかとても冷静なゼナスさんが言う。腰につけているのは双剣か?
「二手に分かれるか」
ルイセスさんがそう言いだした
「何が起こるか分からないこの場所で少数移動は危険では?」
「確かに一理あるが今回はあくまでも調査に来たわけであって、各自フラッシュを使えば周りは明るくなるから平気だろう」
フラッシュありがてぇ
「ルイセスの言うとおりだ。ゼナス、そういうわけだ。二手に分かれようぜ」
あの人はきっとドンハスさんって人だろう。武器は・・・何も持ってないのか?
その後、クア騎士団リーダーのウェズペスの魔法。シャッフルでチームを作った
その結果
俺・ギフェアさん・ウェズペス・トルツ君のチーム
そしてルイセスさん・ドンハスさん・ゼナスさん・テペバロクさん・アイナさんの2チームが出来た。
「よしっ!各自気を付けていくように」
ルイセスさんの言葉にみんなが用心し、二手に分かれていった