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10/13

episode10 それぞれの想い

 夜空に満天と星が輝く初夏の夜に僕はどこか宙に浮いたような気持ちで空を見上げていた。

 今日は部活の取材で友達と三人で遊園地へと行き、きっといつもと変わらない一日でごく平凡に幕を閉じるものだと思っていたんだ。でもそれは、清水さんからの告白で一遍することになってしまった。

 あんなに素直に好意を直接伝えられたことのなかった僕にとって、今日起きた出来事というのはとても刺激的なものだった。

 そして恋愛沙汰に興味はない、といつもどこか他人事みたいに考えていた僕は、今日ほど相手に対して自分がしてきた行動が棘のように胸に突き刺さる思いへと駆られたのも初めてだった。

 僕はもう一度自分の気持ちを整理しようと夜の冷たい空気を肺いっぱいに吸い込み、小刻みに震える手を落ち着けて家の玄関のドアを開いた。

「愚弟。ここへなおれ」

 閉めた。

 玄関を開けたら仁王立ちで待ち構える姉がいた。恐怖を感じた。

 あの目は絶対に今日のことを根掘り葉掘り聞き出そうとする、そんな目だった。

 怖いなー。やだなー。

 僕は早く自分の部屋に入って今日のことを整理したいっていうのに。あんなところに我が家のボスがいたら大人しく部屋に入れないじゃないか。

 もう一度僕はドアノブに手をかけ、恐る恐る扉を開いてみる。

「――ッ! あ、いなくなった。よかっ――」

 そこからは一瞬の出来事でした。瞬く間に口を塞がれ、一番上の秋兄ちゃんは僕を米俵を担ぐ百姓さんのようにリビングへと連れ去り、2番目の夏姉ちゃんは手足を縛ったのでした。

 もしこれが家の外で行われていれば、確実に誘拐犯の実行現場です。

「いきなり何するのさッ!?」

「愚弟。私はな、帰ってきたお前がどこかおかしいことに気がついていた。そう、あのワンコンタクトでな」

「は?」

 最初に玄関を開けたときのことを言っているのだろうか。

「そして、お前は一度逃げた。実に怪しいよなぁ。だから私はお前にお仕置きをすることにしたのだ」

「いやいや! 僕は別に何も怪しいことなんてないし! てか口調がなんか変だよ? キモイよ?」

 そう、僕は何もやましいことはしていない。ただ、清水さんに告白されただけだ。でもそれを正直に言うのはなんだか恥ずかしいし……それに姉ちゃんたちに言えば絶対に茶化されるに決まっている。だからここはなんとかして誤魔化さないといけない。

「いいから、とっとと吐けよ! ラブコメしてきたんだろ? 酒池肉林かオイ」

「うぇ? なんで僕が夏姉ちゃんたちに言わなきゃいけないのさッ! まず酒池肉林なんてしてない!」

()()()()()してない? つまりそれ以外のことはあったということね? アンサー?」

「あ、いや、その……」

 何だこれ? 誘導尋問されてんの?

 僕がどう説明しようか言葉を詰まらせていると、秋兄ちゃんが肩に手を置き温かい目で囁く。

「文春。(女に)目覚めたか?」

「(行間の)意味わからんけど(何を言いたいか)わかるのがムカつく」

『妹が立派になってッ』と涙ぐむ兄に僕は軽蔑の眼差しを向ける。

 どんだけ僕を()にしたいんだこの人は。

「で? 何があったの?」

 そんな兄を払いのけて夏姉ちゃんは『しゃべらんと玉潰してホントに女にする』と物騒な言葉を交えながら僕を問い詰める。

 ぐうぅッ! やむを得ないか。まあ瑠璃川さんにも相談してたし、身内に話すくらい(本当は嫌だけど)いいか。何か年上としてのアドバイスも貰えるかもしれないし。それに本物美少女へ転生するリーチがかかった今、四の五の言ってられないッ。

「…………その、女子に告白された」

「ほーん。で、返事はどうしたの?」

「え? 返事って?」

「は?」

 夏姉ちゃんは拍子抜けしたような顔をしていた。

「……だから、その告白に対しての返事だよ」

「まだだけど……」

「マジで言ってんのか? このラブコメのカスは」

 夏姉ちゃんは呆れたようにため息を吐く。

「女の子が勇気を出して告白したっていうのに何やってんだオメーはよ」

「文春くんサイテー」

 兄妹二人そろって『仲良し女子グループが友達のために告白された男子を詰めに来た』みたいな構図で僕に責め立てる。

「ちょっと話を聞いてって! たしかに告白はされたんだけど、また別の日に告白するって言われたから答えが出せなかったんだって!」

「ほーん? それなら()()別の日にあんたは何て返事をするわけ?」

「え? いや、それは……」

 正直迷っている、と言ったら嘘ではない。今までの僕なら即答で断っていたのだが、今回清水さんが自分の素直な気持ちをさらけ出してくれたことが今までの自分の態度に重くのしかかり答えを出せないでいた。

「わからなくて……」

「はぁ? あんた、迷ってるってワケ?」

「ち、違うよ! 迷っている、とういか、僕はただ、その……今までアプローチされてたのを避けるようにしていたのに……」

 僕はポツリと言葉を続ける。

「その子はそれを分かっていても僕のことが『好き』だって言ってくれたから、僕も正面からきちんと相手の気持ちに向き合おうとは思うんだけど。どう答えればいいのかわからくなって……」

「まあお前みたいなラブコメの主人公キャラにそんな高等テクニックは無理だよな」

 秋兄ちゃんは僕の頭をポンポンと叩き『ドンマイ』と励ましてくれる。いや、励ますならもうちょっと優しくしてくれよ。

 でも、やっぱり僕は恋愛がわからない。今まで誰かを本気で好きになるという経験をしたことがないし。

 だから、今はこんな優柔不断な自分が嫌だし、情けないとも思っている。

「童貞どころか恋愛拗らせて無駄にモテると人間ここまで醜くなるものね」

 それはさすがに言い過ぎじゃないかな。

「私だったら、迷うくらいなら試しに付き合うけどね」

 夏姉ちゃんは興味なさそうに呟く。

「だってさ、告白の返事って『付き合う』か『付き合わない』かのどっちかでしょ? 別に自分がちょっとでも『良いな』って思ったら付き合うでしょ? 相手のことどう思うかなんて付き合ってから考えていけばいんだし」

「いや、夏姉ちゃんならそうすると思うけど。みんなが同じ考えってわけじゃないでしょ?」

 そう訊くと夏姉ちゃんは隣に視線を向けて『秋兄ちゃんはどう思うよ?』と話しを振る。

「俺は顔とおっぱいがタイプなら付き合う」

「うわぁ」

「引くわぁ」

 あまりのストレートな返答に僕と夏姉ちゃんはドン引きする。まあ、それが秋兄ちゃんらしいと言えば秋兄ちゃんらしいけど……。

「エロ兄のことはほっといて。小難しいことばっか考えてないで、純粋にその子と付き合ってみたときのことをイメージしてみればいいんじゃない? 例えば、手つないでデートしたり、出先でキスしたりセッ――」

「もうわかったから! もう充分だから!」

 僕は夏姉ちゃんの言葉を遮るように叫ぶ。いくら身内とは下ネタを聞かされるのは恥ずかしい。というか身内から聞く下ネタは嫌だ。

「で? なんであんたは『付き合う』って答えが出ないわけ?」

「……やっぱり、正直いうと僕は自分の好きになった人と付き合いたいな、って」

「面倒臭いカスだな。そんなん付き合ってから考えたらいいじゃねぇんかよ」

「そういうのとは違うんだよ……」

 恋愛経験のない僕は、どうしても付き合う=結婚みたいなイメージがある。だから『好き』という気持ちだけですぐに付き合うのは違う気がする。

 でも、そういう気持ちも大切だけど、もっと大切にしたいことがある。

「僕は、その子と『ずっと一緒にいたい』って思うんだ」

「それってもう好きってことなんじゃないの?」

 僕は夏姉ちゃんの言葉に少し驚いたように目を丸める。そして秋兄ちゃんはどこか納得したような様子で頷いていた。

「まぁ、文春は今『恋愛』に悩んでるわけじゃないもんな」

 秋兄ちゃんの言葉に図星をつかれたかのように思わず心臓が脈打つように跳ねたのを感じる。

 ふと脳裏に浮かびあがったのは瑠璃川さんに言われた『蒼君が気にしているのは『周囲からどう見られるか』ってことじゃないですか?』その言葉だった。

 秋兄ちゃんは僕を一瞥すると『それじゃこの話しはここまで~。飯作るから、夏目も少し手伝え』と残しゆっくりとキッチンへ向かっていった。

 夏姉ちゃんは僕の煮え切らない態度が気に入らないのか、少し不服そうにしながらもその後を追いかけていく。

 僕は瑠璃川さんに言われたことをもう一度掘り起こすように頭を悩ませ、自分の部屋へと戻っていく。

『ずっと一緒にいたい』か。それは今のあの()()に対して、僕が心の底から思えることだな。

「恋愛って難しいな……」

 窓の外からうかがえる夜空に輝く星々が僕の曇った心を照らすことはなく、ただただ暗闇の中で自分がどうしたいのかを茫然と考えるのだった。

 夜はもう遅く、もう少しで時計は明日を迎える。


 怒涛の夜が過ぎるのは早く、気付けば今日は月曜日。僕はうなだれた様子でその重い足を引きずり教室へと入る。

 遊園地で()()()()()があった手前、なんだか今日は清水さんと顔を合わせづらい。

 こういうときは普通にしていれば良かったんだっけ。そんな鬱屈する思いに縛られながらも、僕は自分の席へと腰をおろした。

「おはよ。文春」

 真っ先に声を掛けてきたのは有紀だった。いつもと変わらない日常の始まりに僕は少し安堵した表情を見せる。

「おはよう、有紀」

「……なんでちょっと安心した感じしてんの?」

「え? そ、そう見える?」

 顔に出ていたのか。僕としたことが有紀に挨拶されただけでこんなに安心するなんて。

「何かあったの?」

「べ、べべべっべべべ別になんでもございませんこと?」

 動揺し過ぎだ僕。中世の貴族みたいな語尾になってしまっているぞ。

「何その口調? ストレートにキモイよ?」

「傷つくぞ」

 僕と有紀が他愛もない会話をしていると、続けて流星が教室へと入ってきた。

 週末は部活の練習がよほど忙しかったのか。疲労気味気な表情であくびをしていた。

「おーっす。なんだお前ら? 何話してんだ?」

「文春の口調がキモイから指摘してあげてた」

「キモくないわい!」

「相変わらずバカやってんなー」

 いつもと変わらない様子で僕たちは会話を続ける。どうやらまだ清水さんは登校していない様子だった。

 やっぱり週末のあの出来事のせいで学校に来づらいのだろうか。そう思うと胸が締め付けられるような気持ちに苛まれる。

 朝のホームルームの時間が近づいてきた頃だった。

 廊下から急いで走ってくるような勢いよく地面をける音が教室の中まで響き渡ってくる。そしてその音はやがて僕たちの教室へと近づくと、勢いよく扉を開けて清水さんが息を切らしながら入ってきた。

「お、おおっはよー。は、はぁ、はぁ、ち、遅刻する、とこだったッ」

 相当急いで登校してきたのか、かなり疲れた様子で倒れこむように席へとついた。

「あ、文春、くん。おっは、よー」

「お、おはよう清水さん。なんだか今日はギリギリみたいだったね? 寝坊?」

 僕は平静を装いつつ普段と変わりないように言葉を絞り出した。

「ね、寝坊というか、昨日はエロゲにハマって寝れなくて……」

 そうか。清水さんも夜眠れなかったのか。そりゃ遊園地のあの後だもんね。寝付けようと思ってもいろいろ考えこんじゃって寝れないよ。


 文春は勘違いしていた。六花はただエロゲのやりすぎで寝坊しただけで、別に告白の件についてはそれほど考えていなかったのだ。

「と、とりあえず呼吸を整えて落ち着こう?」

「ヒッヒッフーだな」

「それはラマーズ法だから。普通に深呼吸してね? 清水さん」

 茶化すように流星が後ろから声を掛ける。

 それを隣で見ていた有紀は真剣な表情で唐突に口を開いた。


「清水さん、今日の放課後に少し時間もらえるかな? ちょっと話したいことがあって」


 有紀がそんな目をするのはバレーの試合で集中しているときくらいだ。何か清水さんに対して真面目な相談でもあるのだろうか。

 清水さんはそんな有紀を見て、何かを察したように静かに答える。

「いいよ。私も天野さんに話したいことがあったから」

「……わかった。それじゃあ、放課後に屋上で待ってるね」

「うん……」

 何やらただならぬ空気を二人の背後から感じ取れずにはいられない。

 流星はその光景を目の前にして『これは思い切ったことすんなー』と感心したように頷いていた。

 一体彼女たちは何をするのだろうか。それを知る由もない僕はただ目の前の光景を静観することしか出来なかった。



 ◇ ◇ ◇



 夕立昇る放課後。校内はいつにも静けさを帯びた雰囲気でオレンジ色の風景が濃く校舎を照り付けていた。

 夏の始まりを告げるような暖かい風が屋上まで吹き抜けている。

 今朝、有紀に屋上まで来るようにと告げられた六花は、彼女が自分に何を言いたいか理解した上で階段を一段一段踏みしめて、夕差しに導かれるように前へと進む。

 なぜ()()タイミングで私を呼び出したのかしら。私が文春君へ先走って告白したことをどこかで知った? でもあの現場には文春君を除いて、瑠璃川さんしかいなかったはず。あの子が周りに言いふらすようなことをするだなんて考えつかないわ。それに観覧車の中でしたことについては私と文春君の二人だけしか知らないはず。

「女の勘、というやつかしらね」

 六花は週末からすぐのタイミングで有紀に呼び出しを受けたことに驚きつつも、自分の信念は揺るぎがなく、同じ相手を好きになった人間として彼女にも()の自分自身をさらけ出すかを迷っていた。

 おそらく天野さんは私に対して『告白すること』を宣言しようとしているのだわ。少女漫画で読んだからこういう展開も織り込み済みだわ。だったら尚更、私は彼女に対しても素の自分を見せるのが筋ってものだと思うの。でも。

 六花が有紀に素の自分を見せるか迷う理由、それは彼女が()()()()の覚悟で告白に臨もうとしているのか、その点であった。

 正直、今までの天野さんの言動を見た感じだと、積極的に文春君にアプローチをしているような雰囲気ではなかった。むしろ一線を引いて、関係を壊さないように臆病にしているイメージだったわ。

 彼女がそんな態度を()()見せているようなら、私の敵ではないわね。

「といっても、それこれも――」

 六花が屋上へと続く扉を開けると、そこには覚悟を決めたように真剣な眼差しで真っ直ぐに自分を見据える有紀が待っていた。


「――あなたのその表情を見て確信したわ」


 私は幼馴染なんかに負けないわよ。

「来てくれてありがとう。清水さん」

「いいえ。話したいことは分かっているわ。天野さん」

 二人は互いに認め合ったかのように笑みを浮かべた。

 ぶつかり合う目線の先で窓ガラスに反射した夕日が火花のように飛び散る。

「……()()()()清水さんはキャラ作っていたんだね?」

「気付いてたのね? 他の学校でもほとんど気付かれたことなんてなかったのに」

「今時、あんな漫画みたいな天真爛漫な転校生キャラなんて違和感しか感じないよ?」

 え? お兄ちゃんは()()キャラで大丈夫って言ってくれたのに。

「フッ。高飛車お嬢様キャラくらいの方がよかったかしら?」

「それはもっとありえない」

 そうなるとあとはドジっ子転校生キャラしかないわね。どうしようかしら。

「はあー。なんか気が抜けてきた。正直、あたしはいつもの明るいキャラよりも、今の清水さんみたいなクール系の方が接しやすいけどね」

「同感よ。私もいつものポンコツ先走り幼馴染キャラよりも、今の天野さんみたいな燃えるスポーツ系の方が話しやすいわ」

「あたしはキャラ作ってないんだけど!?」

 序盤は負け幼馴染(ヒロイン)みたいなムーブかましてたのに意外と漢気あるのね。見直したわ。

「なんか今失礼なこと考えてなかった?」

「そんなことないわよ。ただ負けヒロインムーブが漢気を見せて感心していたのよ」

「まだ負けてないわッ!」

 有紀は普段と真逆のリアクションを見せる六花に半ば呆れつつも話しを切り替えした。

「いつまで経っても話しが進まないから単刀直入に言うよ。……あたしは文春ことを一人の異性として本気で好きだよ。清水さんは?」

 少し震えた声で語気を強めて話す有紀に対して、六花も同じように力強く口を開く。

「私も文春君のことを異性として本気で好きよ。毎晩ベッドを濡らすくらいにね」

「最後のいる?」

「あ、もちろん安心して。ベッドを濡らすのは私一人よ」

「そこ心配してないから」

「あらそうなの?」

「……なんかもうペース狂わされる。ていうか、清水さんって結構、あの、言動がアホッぽいんだね?」

 私がアホですって。心外ね。キャラ作りでアホの子になることはあっても、素の私自身はこんなにクールビューティーな真面目キャラだというのに。

「私は至って真面目な人間よ?」

「だー! 話が逸れる!」

 有紀は話しが進まないことに苛立ちを覚えつつ、再び六花へと向き直り言葉を続けた。

 対する彼女はそんな有紀を前に余裕の表情を浮かべる。これこそが有紀が苛立つ原因ともいえよう。

「とにかく! あたしは文春が好きだから告白するの! だから――」

 少し言いよどんだ有紀は決心したかのように口を大きく開いて。


「――清水さんもあたしと同じ時間、場所で文春と告白しよう! そして、どっちが選ばれても文句なし! これを提案したかったの!」


 彼女の声が屋上で静かにこだましていく。

 六花はその言葉を聞き勝ち気な表情で笑顔を見せた。

「いいわねッ。その提案乗ったわ! 正直、私も自分一人で告白するよりも誰か彼に思いを寄せている人間と一緒に告白した方が良いと思ってたのよ」

 周りの目を気にする文春君だからこそ、その壊したくない関係に含まれる天野さんの隣で告白することによって、私は自分の勝率を上げるッ。だってが『どっちが振られても恨みっこなし』という名目のもと同じ場所、時間で告白が行われるんですもの。互いに別の日に告白をして、変にそれぞれ時間を置かれて考えこまれるよりも遥かにこっちの方がいいわッ!

 おそらく、天野さんも私も同じ考えで――

「い、勢いでこんなこと言っちゃったけど、あたし大丈夫かな?」

 ポツリと呟く有紀をよそに六花は思った。

 天野さんってやっぱりバカなのね。応援したくなるわ。

 この場のテンションでこんな提案を思い切って出来るその胆力には感服するけど、そこから先は一切考えていなかったのね。そうやってパニくって判断力鈍らせて暴走するから負け幼馴染感が出てるんだわ。ああはなるまい。

「天野さん? 告白の日時はどうするの?」

「ん。それならもう決めてるよ。明日の放課後にこの屋上で告白するよ」

「急ね」

 ホントに何も考えてないわね。大丈夫かしらこの子。

「そうと決まれば、今から二人で文春にメッセージを送るけど。準備はいい?」

「……ええ。問題ないわ」

 二人はそれぞれスマホでメッセージ文を打ち合うと、送信ボタンへと指を掛ける。

 ここまで来たらもう後戻りは出来ない。言いようのない緊張が二人にじわじわと迫る。

「そ、それじゃあ、いくよ? せーのっ」

 同時にメッセージを送信した二人は、自身の肩にのしかかる不安と緊張に押しつぶされそうになりながらもお互いを見据え、プレッシャーで笑いが込み上げるのを我慢するようにただ真っ直ぐ相手に視線を注いでいた。

 二人にとっての決戦はついに明日へと迫りくる。

 彼女たちの負けられない戦いが今、火ぶたを切るであった。

 そして、二人の送ったメッセージは文春のスマホへと届く。


『明日、あたしと清水さんの二人から文春に話しがあるから、放課後に屋上まで一人で来て!』

『明日、天野さんと一緒に文春君にお話ししたいことがあるので屋上まで来てほしいわ』

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