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29【男装の麗人風の男】

 俺は子供たちを人攫いの檻から解放してやると、代わりに野盗たちを縛り上げてから檻にぶち込んだ。


 牢屋に入れられた野郎どもは、俺に食らったダメージが残っているのか、ほとんどまだ動けない。大人しく檻に入っていった。


 そして、檻を積んだ荷馬車に乗ると、解放した子供たちを連れてシルバームジの町に引き返す。


 俺は馬車の運転なんてできないから、子供の一人に操作を任せた。ちょうど良く、馬車に慣れた子供がいて助かった。


「お前、馬車の扱いに慣れてるんだな」


 俺は隣の馭者台に腰を下ろしながら、巧みに手綱を操る少年に問いかける。すると少年は真っ直ぐ前を向いたまま笑顔で答えた。


「父が旅商人でね。代わりばんこに荷馬車を運転していたんだ」


「そうなのか……」


 少年は商人の息子だったらしい。そのせいか営業スマイルを崩さない。このような状況なのに強い子である。


 とりあえず野盗たちをシルバームジの番屋にでも突き出して、子供たちをどうするか相談しようと思っている。


 子供たちの中には人攫いに親を殺されている子供もいるから、そいつらの今後については役人に任せるしかないだろう。俺なんかが口を出せる話ではない。繊細で難しい話だろう。


 隣の商人の息子も、たぶん親を野盗たちに殺されているのかもしれない。かわいそうだが、俺には何もしてやれないのが悔しい。


 そんなこんなしていると、シルバームジの正門が見えてきた。いつもの門番二人が出迎えてくれる。


「こ、こいつらは……?」


 門番たちはハルバードの先で荷台の檻を小突きながら訊いてきた。その表情は唖然としている。


 たぶん俺がカンニバルベアに続いて野盗たちを捕獲してきたことに驚いているのだろう。


 馭者台から飛び降りた全裸の俺が述べる。


「人攫いの集団だ。何人か捕まえてきたから引き取ってくれないか」


「あ、ああ、分かった……」


 それから俺は、顔を腫らしながら俯いていたゲドーラを指差しながら訊いてみる。


「それとさ〜、このゲドーラって野郎、賞金首じゃあねえの? たしか酒場の張り紙で見た顔だぞ。だから賞金をくれよ」


 門番はゲドーラの顔を覗き込みながら言った。


「それは検査官の仕事だ。今呼んでやるから彼と話し合ってくれ……」


「了解」


 俺は敬礼の後に次の質問をした。


「それと、攫われていた子供たちの面倒も見てもらえないかな? こいつらを引き取ってくれよ。中には帰るところがない子供たちもいるみたいだからさ」


 それに関して門番は困った表情で答える。


「それは、俺たちでは何とも言えないな。管轄外だ。家なし子を面倒見てやる義務はない」


「うわ〜、薄情だね〜。困った子供がたくさんいるのに見捨てるのですか〜。外道だわ〜」


「いや、それは……」


 俺が嫌らしく門番たちを責め立てていると、白馬に跨った麗人が現れた。


 金髪のロン毛に白い軍服。腰には細身の剣を下げている。そして、切れ長の瞳で馬上から俺を見下ろしながら話しかけてきた。


「何があったのかな?」


「これはパワム様!」


 門番二人は白馬に乗った麗人に対して姿勢を正すと、礼儀良く敬礼をしてみせる。どうやら上司らしい。


「この少年が人攫いの集団を捕獲して来たので、現在処理中であります」


「人攫い?」


 パワムと呼ばれた麗人は一見女性に見えた。しかし、やや声が太い。それに体格も女性にしてはがっちりしていた。そのせいか男なのか女なのか判断がつかない。


 そんな感じで俺が不思議そうに美人顔を見つめていると、その視線に気が付いたパワムが話しかけてきた。


「そこの全裸の少年。もしかしたら君は噂のサブロー氏かな?」


「えっ、俺の名前を知っているのか?」


 馬上の麗人は扇子で口元を隠しながら述べる。


「弟から話は聞いているよ」


「弟って、誰?」


「わたくしの名前はパワム・キンニッカー。当主の次男で、マースルの兄ですわ」


「なんだ、あの筋肉ダルマの兄ちゃんか。……えっ、兄?」


 姉かと思ったら兄なのかよ。ってことは、こいつは男性ってことになる。女性のように美しいのに、チンチンが生えていることになる。それはとっても残念な話であった。


 だが、ありかもしれない。これだけ美人さんならば、男の娘っていう設定が生きてくる。完璧な変態設定だ。


 馬上のパワムは、まつ毛の長い瞳を細めながら俺を見下すように訊いてきた。


「なあ、サブローとやら。貴公、弟に勝ったそうではないか。本当かしら?」


「YES、本当だよ」


 俺はパワムを無視するかのように、荷馬車から荷物を引きずり降ろす。それは野盗たちから没収した武具の数々。これらを売って今日の稼ぎに替えようと思っていた。


「なあ、サブローとやら。弟は強かっただろう?」


「いや、それほどでもなかったな」


 その一言を聞いて、パワムの眉間に皺が寄る。パワムは眉間の皺に比例する程度の態度で、冷めた声色でケチをつけてきた。


「素手の殴り合い。そのようなもので強さは測れぬぞ。男の本当の勝負は剣で決まる」


 言いながらパワムは腰にぶら下げた剣を叩いた。ガシャンっと鋼が鳴る。


 俺はロープで縛り上げた武器の束を肩に背負うと、パワムに言ってやる。


「あんた、何が言いたいんだ。鬱陶しいぞ」


「貴公、無礼だな」


「お前のほうが無礼だろ。だから無礼を無礼で返したんだよ」


 ヤンキーのモットーは、やられたらやり返すだ。だから無礼を無礼で返したのである。



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