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20【大成功】

 ミザリー姉さんから酒代を受け取ったシマムのオヤジがカウンターの奥から訊いて来た。


「ところでお前さんたち、今日は冒険に出ないのか。朝から依頼書を見ていただろう」


 その質問にラッセルのオッサンが答える。


「もう今日は無理だろ。サンバル兄弟は酔い潰れてるし、ロックの野郎は姿を消しやがった。もう仕事って空気じゃあないぞ」


 ロックとはハゲ戦士の事である。宴会が始まると早々に姿を消したのだ。どこに行ったのかは知らない。


 するとミザリー姉さんがジョッキてエールを煽りながら言う。


「いつも通りに売春宿にでもしけこんだんでしょう。あのハゲは好き者だからさ〜」


 なるほど、この町にもピンク色の店があるようだ。今度勉強がてら行ってみたいものである。全裸禁止なんてルールが無いことを祈ろう。


「それじゃあさ〜、これからサブローにーちゃんの加護を鑑定してもらいに行かないか〜」


「教会で鑑定してもらえるんだっけ?」


「どんな町でも一軒ぐらいは鑑定師が居る教会があるんだぜ」


「鑑定師って神官なのか?」


「そうだぜ。神官魔法で鑑定するんだよ」


「ラッセルのオッサンは鑑定が出来ないのか?」


 ラッセルはアルコールに酔った眼差しで下品なゲップを吐いた後に言う。


「鑑定魔法は上級神官しか使えない高度な魔法だ。俺なんかのような野良神官が使い熟せるような魔法じゃあないんだよ……」


「なんだ、ラッセルのオッサンってザコなのか?」


 俺の揶揄を聞いたオッサン神官がテーブルにジョッキを叩き付けた。怒ってやがる。


「てめぇ〜、傷付くような事を言うなよな。独身神官の男性三十歳を舐めるなよ。うらぁぁああああ!!」


「なんの!」


 酔っぱらったラッセルが飛び掛かってきたが俺はチョップの一撃でザコ神官を撃退した。脳天にたん瘤を拵えたラッセルが床に倒れ込む。


 すると今まで真面目に仕事をしていたマキが恥ずかしそうに話し掛けてきた。白いエプロンの裾を持ってモジモジしている。


 そんな可愛らしい仕草の彼女に視線が集まる。


「あの〜……」


「なんだ?」


「もしも良かったら、鑑定は二日後にしないかな……?」


「何故?」


「私、二日後に十五の誕生日なの……」


「なに、成人するのか!」


「う、うん……」


 俺は両眼をハートマークに変えると飛び上がって言う。


「よし、それじゃあ結婚しよう。成人したのなら即結婚だ!」


「何故やねん!」


 否定するマキちゃんのVの字型目潰しが飛んで来た。その二本の指は綺麗に俺の両眼に突き刺さる。


「きぃゃぁああああ、目が〜、目が〜!!!」


「なんで私がサブローと結婚しないとならないのよ!」


 マキがガミガミと文句を垂れていたが即座に復活した俺は凛々しく澄ましながら彼女に寄り添った。抱き着き頬をマキの体に擦り付ける。


「だって僕たちは親同士が公認した許婚同士じゃあないか」


「そんなの初耳よ!」


 シマムのオヤジも言う。


「俺も初耳だ」


 しかしそれでも俺は諦めない。瞳をクールに潤ませながらマキの小さな顎を片手で救うと真面目な表情を近付ける。


「ならばここで告白しよう。僕と結婚してくれ。必ずキミを幸せにしてみせるからさ」


 潤む瞳で見つめ合う二人の男女。そのような中で気不味い空気に負けたマキが視線だけを逸らした。


 そして、小さく一つだけ頷く。


「う、うん。結婚してもいいよ……」


「………えっ」


「「「えええええええええええ!!!」」」


 絶叫に酒場内が轟いた。皆が皆、信じられないと叫んていた。


 マキに駆け寄ってきたミザリー姉さんが彼女の肩を両手で許しなから問いただす。


「マキちゃん、なんでこんな変態全裸男の結婚なんて受け入れるのさ!?」


「いや、なんでって素敵だから……」


「「素敵って……」」


「し、信じられないわ……。マキちゃんの頭が可笑しくなったのかしら……」


 周りの皆は状況を信じられないと言った感じであったが、 こうして唐突なプロポーズは成功した。


 マジで大成功である――。


「こ、この女、冗談が通じないのか……」


 怯えるように震える俺がハグを解除して彼女から後退る。するとミザリー姉さんとマースルが手厚い拍手を飛ばして俺たちの結婚を祝ってくれていた。


「おめでとう〜、二人とも幸せになれよ〜」


「サブローのにーちゃん、結婚おめでとう〜」


 パチパチと拍手で湧く酒場内。そのような中でラッセルのオッサンが床に唾を吐く。それでも殆どの客たちが俺たちの結婚を祝ってくれていた。


 するとカウンターの奥からシマムのオヤジが走り出てきた。俺と娘の間に割って入る。


「ちょっと待て、お父さんは許さないぞ、マキ!」


「そうですよね〜。普通のお父さんは許しませんよね〜」


 猫背で媚びるように言う俺と違いマキちゃんは強気で父親に怒鳴りつける。


「なんでお父さんは娘の幸せを祝ってくれないのよ!」


 マジ怒りだった。


 何故に彼女が本気で俺との結婚を受け入れたのかが結婚を申し込んだ俺にも理解できなかった。不思議過ぎて気が狂いそうである。否、マキは気が狂ったのではないだろうかと思う。


 シマムのオヤジが俺を指差しながら怒鳴った。


「だってこいつ、全裸じゃん。それに無職で家無しの冒険者だぞ。そんな変態に可愛い娘を嫁に出せるか!」


 正論である。シマムのオヤジのほうが言ってることが正しい。俺的には反論の余地が無い。これが正常な親の意見であろう。


「それじゃあサブローが冒険者として成功してさ、一軒家ぐらい建てられるほどの大物になれたのなら私たちの結婚を許してくれるって事ね!」


「ああ、許してやろうとも。ただしサブローが冒険で命を落としても、マキが路頭に迷わないほどの貯金が出来たら結婚を許してやるぜ!」


「お父さん、約束よ!」


「男に二言は無い!」


 なんか俺の意見を聞かないままに話が進んでいく。


 そもそも結婚の話は酒に酔った勢いで言ってしまった冗談なのに本気にされているし、なんか知らないけど、いろいろな条件まで付け加えられてしまった。


 まあ、マキちゃんは可愛いから嫁に貰うには申し分ない娘さんなのは間違いないんだけれども……。


 でも、まだ俺は十七歳の餓鬼だぞ。それが結婚なんて重たい責任を背負っていけるのであろうか……。


 だが、これで間違えなく童貞は卒業できるのは確定した。しかも結婚前からマキちゃんを抱いても問題なかろう。もう、今夜からパラダイスなんじゃねえ。なんかそれを考えるとウキウキとワクワクが止まらないぜ。


 早くも今晩が楽しみである。



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