表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天地の円舞曲  作者: 成瀬くま
地界編 第一幕「終焉の世界と空白の異空間」
3/20

地界編2話「殷賑の異空間」

「エイジ・アインシュタインだ」


 そう、何も無い真っ白な空間に一人の少年、成瀬栄慈。否、エイジ・アインシュタインの声が響いた。

 何故、エイジは地球にいた頃からこの名前に変えたかったのか。その理由は明瞭としている。単純に栄慈は、誰もが知る物理学者「アルベルト・アインシュタイン」に憧れ、その苗字であるアインシュタインを名乗りたかったからだ。

 人間誰しも、憧れた人と同じ苗字になりたいと考えた事が、少なからず一度はあるだろう。無い人の方が多いかも知れないが、データが無い為、何人かはあるだろうと勝手に結論づける。


「能力と名前が決まりましたね。もう一つの祝福(ギフト)はどうしますか?」


「そのこと何だが、先に確認したいことがあるんだけど、いいか?」


「いいですけど、何ですか?」


 エイジの確認したいこと。それは、『引力操作』の強さをさらに引き立たせる為に必要なことだ。その内容は。


「二つの能力を同時に使用することは出来るのか?」


 能力に同時使用ができるのか。それが、確認したいことの内容である。エイジはもう一つの祝福(ギフト)でもう一つ能力を選んでもいいと聞いた時から、このことを考えていた。


「能力の同時発動なら、全然できますよ。概要は言いませんが、実際に僕だって現在進行形でしていますからね」


 能力の同時発動が出来るかの問いに対する解。それは、ポセから可能と出た。何なら、ポセは現在進行形で同時使用していると。

 このことから、エイジの選択は確定した。もう一つの祝福(ギフト)は、もう一つの能力にすると。


「そうか、なら三つ目の祝福(ギフト)はもう一つの能力にさせて貰う」


「そうですか。では、その能力を聞かせてもらってもいいですか?実のところ、今僕はとてもワクワクしているんですよ。天才物理学者と謳われた人物がどのようなもう一つの能力を選ぶかを!」


 エイジの選択に興奮しているポセ。もう一つの能力を何にするかを早く言えと急かしてくる。

 先程も述べたが、エイジは、能力の同時使用が可能と聞いた時、もう一つの祝福(ギフト)を二つ目の能力にすると決めていた。

 そして、それと同時にその二つ目の能力は、『引力操作』と対になる能力にするということも決めていた。

 もし能力の同時使用が出来なかった時のことも考慮して、別のことも考えていたが、その心配は無用に終わった。


「そう急かすなって。じゃあ、俺の選ぶもう一つの能力は...」


 ポセがもう一つの祝福(ギフト)の概要を勿体ぶったように間を空けて言ったことの仕返しとして、エイジもまた間を空けて言うことにした。


「早く言ってくださいよ!」


「さっきの仕返しだ」


 ポセは、さっき変に勿体ぶらなければ良かったと後悔したような表情を見せてエイジに言う。


「今度こそ言うぞ。俺の選ぶ二つ目の能力は...」


 今度こそ言うとエイジが言った刹那、静寂に包まれたこの何も無い真っ白な空間の中で、ポセはゴクリと唾を飲み込む。


「『斥力操作』だ」


 エイジがそう言うと、興奮を抑えきれなくなったポセは、縦横無尽にこの空間を駆け回った。

 ポセがもう一つの祝福(ギフト)の概要を勿体ぶった時のやれやれと首を振ったエイジの反応とエイジがもう一つの能力を勿体ぶった時のポセの反応は真逆となっていた。


「そう来ましたか!『引力操作』と対になる『斥力操作』を選ぶとは!完全に予想外です。てっきり別系統の能力にするものかと思っていました」


 『引力』と、それの対になる『斥力』。その2つのについて簡単に説明をしよう。『引力』は、2つの物体の間に働く相互作用のうち、引き合う力のこと。『斥力』は同様に二つの物体の間に働く相互作用であるが、引き合う力の真逆。反発し合う、すなわち互いを遠ざけようとする力のことだ。


 その二つをそれぞれ操作することのできる『引力操作』と『斥力操作』だが、それらをどれだけ強く使えるかはエイジにかかっている為、まだ未知数だ。


 ここで一つ、問題を出そう。 

 誰でも思いつくような最強の能力を持った凡人と、誰が聞いても弱いと思う能力を持った天才。これらが戦えば、どちらが勝つか。

 

 この問題の解を考えるのは、人々にとって難しいことかも知れない。単純に考えて、能力が強い方が勝つ。と、思うだろう。前者の人間が、もし『無敵』や『不死身』などの能力を持っていた場合、後者の人間はそれに対抗し得る能力。例えば、『能力無効』のようなものを持っていなければ倒すことのできないと人々は考えるだろうからだ。だが、それは違います。後者の人間が例え『豆鉄砲』のような能力でも、思考、知恵を巡らせれば、打開策を見出す事が出来るかも知れない。そう言った可能性も少なからずあるからだ。


 先程出した問題の解。残念だが、それは存在しない。解が存在しないというのは、問題として成立していないが、ただ単に解が無いというわけではない。

 前者が勝つ可能性があれば、後者が勝つ可能性もある。引き分けになる可能性もあれば、決着が着かない可能性もある。はたまた、謎の第三者の乱入により、想定外の決着を迎える可能性もある。

 

 この問題で言いたいこと。それは、能力だけで強さは決まらず、その使い手や使い方によって、この世の理を一変する事が出来るかもしれない。と、いう事だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ