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配信ダンジョン育成中~育てた最強種族たちとほのぼの配信~  作者: 空野進
第1話『レッドドラゴンのミィちゃん』
7/60

【配信】『ダンジョン、綺麗にしてみた』

 ダンジョンの入り口を前にして僕たちは箒を、ついてきてるトカゲくんは僕のスマホを構えていた。


 ダンジョンは入り口からでもわかるほどに荒れている。

 そもそも入り口が原型をとどめていない。



「こ、これくらい広い方が入りやすいのだ!」

「でもミィちゃんは小さいでしょ? こんなに大きな入り口は必要ないからあとで埋めていこうね」

「うぅぅ…、わかったのだ」



“広いにも限度があるだろ!? ドラゴンでも飼うのか!?”

“ミィちゃんはドラゴンだ!”

“それもそうだったな”

“ダンジョンを綺麗にしてみたって跡形も無く消したってことなのか?”

“さすがにこれはおかしいと思うよな?”



 なんだか中を見るのが怖いけど、入るしかないので覚悟を決めてダンジョンの中へと入る。



「うわぁ……」



 ダンジョンの中を見た僕は思わず声を上げてしまう。


 以前は洞窟のような感じが、所々にクレーターが開いてる大空間へと変貌していたのだから――。



「や、八代は怒らないと言ったのだ……」



“ここだけ隕石でも落ちたのか!?”

“うっかりってレベルじゃ無いぞ!?”

“ミィちゃんが怯えるほど八代たんって怖いのか!?”

 


 体を震わせるミィちゃん。

 でもこれはこれで良かったかも知れない。



「ここにトカゲ君達の家を作ったらみんなで住めて良いんじゃないかな? ダンジョン自体が崩れ落ちるってないんだよね?」

「な、ないはずなのだ。心配なら私が調べるのだ」

「お願いできるかな?」

「わかった、のだ!」



 ミィちゃんが空を飛び、実際に天井向けて炎を吐いて強度を確かめていた。

 その都度とんでもない破壊音が響いているのが少し気になるけど、天井が崩れ落ちてくる気配はなかった。



“今の炎って最上級魔法じゃ無いのか?”

“崩れる崩れる!!”

“これなに? ダンジョン壊してるの?”

“調査中らしい”

“俺の知ってる調査と違うんだが?”

“安心しろ。俺も知らん”



 しばらくするとミィちゃんが戻ってくる。



「大丈夫だったのだ!」

「うん、見てたよ。これなら安心できそうだよね」

「安心なのだ!」



 いちいち反応が大袈裟なミィちゃん。

 僕の前で胸を張って偉ぶってみせていた。



「そうなるとまず僕たちがすべきことは、クレーターを埋めて、砂とか岩を掃くことかな?」

「吐けばいいのか? 任せるのだ!」



 ミィちゃんの口に強大な魔力が集まり、火の玉を形成し、それを前方に吐いていた。



 ドゴォォォォォォン!!



 ダンジョンの壁に衝突した火の玉が大きな横穴を開けていた。



“ぎゃぁぁぁぁ!”

“おかしいおかしい!!”

“なんで岩を掃こうとして炎が飛んでくるんだよ!!”



 何が起こったのか分からずにしばらく僕は固まってしまう。



「えっと、今のは……?」

「し、初級魔法の火の玉(ファイアーボール)なのだ。ち、ちょっと張り切りすぎただけなのだ」

「そっか……」



 魔法ってここまで威力出るんだね。

 有名探索者のチームもよく魔法を使える人を募集してるし、やっぱりすごいんだ。

 自分が使えないのは少しだけ残念だけど……。



“言い訳乙”

“あれが初級魔法のはずないだろ!!”

“どこの大魔王だよ!!”

“これは極大魔法ではない。初級魔法だってやつか”

“リアルで使う人を初めて見たかも”

“八代たんはなんで今の明らかな嘘を信じてるんだ!?”



「とりあえず今のは人に向けて使ったらダメだからね!」

「わ、わかったのだ! 気をつけるのだ!」



 ミィちゃんは間違ったことをしてしまったらしっかり反省してくれる。

 元々ダンジョンに住んでただけで、外の常識を知らないのだろう。



「それじゃあ、まずは砕けた石とか岩を片付けていくよ」

「任せるのだ!」



 僕が細かい砂とかを箒で掃いているとミィちゃんは埋まっている大石を箒で殴りつけて箒を壊していた。



「わ、私は悪くないのだ!? ほ、箒が弱々なのがいけないのだ」

「箒はそんなに強度ないからね。ゴミを取るものだから武器でもないよ」

「根性が足りないのだ」

「根性でどうにかできるような物じゃないからね」

「私の爪の方がよほど強いのだ。八代にも上げるのだ」



 ミィちゃんが自分の爪の先を僕に渡してくる。


 ただ、ミィちゃんの体から離れた瞬間に大きな爪へと変化したのはどういう魔法なんだろう?


 僕の目の前には僕の腕と同じくらいのサイズの爪が転がっていた。



「爪剥がして痛くなかったの?」

「私なら平気なのだ」

「そっか。トカゲだもんね。元通り生えてくるのかな?」

「トカゲではないけどそうなのだ」



 そう言いながらポンポンと爪を剥がしていく。



“ドラゴンの爪って最高級の素材じゃなかったか?”

“一枚でも売ればそれだけで豪邸が建てられるな”

“まだトカゲと勘違いしてるぞ?”

“なんだ、この宝の山は”

“一枚くれ!”

“凶悪ダンジョンの光景なのにほのぼのするのはなぜだろう?”

“八代たんの性格かな?”



 子供の見た目のうちは小さなものなのでそれほど気にならないのだが、元のサイズのものが多いとさすがに邪魔になってしまう。



「ダメだよ、ミィちゃん! ゴミはゴミ箱に捨てないと、でしょ!」

「みぃぃ……。ごめんなさい、なのだ」



“ゴミwwwwwww”

“ゴミ来ました!!w”

“ドラゴンの爪をゴミ扱いwww”

“素直に謝れて偉い”

“宝をあげたら怒られるなんて理不尽すぎるw”



 ミィちゃんは素直に謝ってくる。

 でも、この爪は中々に頑丈そうなので使い道はあるのかもしれない。



「それじゃあ、ミィちゃんはこの爪で岩を砕いてくれるかな? 砕いた物はあの穴に入れていってね」

「わかったのだ!」



 それから僕たちは夜通しダンジョン内の整地に勤しむのだった。

 その甲斐もあり、ミィちゃんのとんでもパワーや撮影担当以外のトカゲ君達の協力もあってなんとかダンジョン内は綺麗に整地し終えることができたのだった。



「終わった……」

「よかったのだ!」



“お疲れ様”

“中々の耐久配信だった”

“人化はしないみたいだけど、ドラゴンがあれだけいるダンジョンか”

“耐久配信なのに見始めより人増えてるんですけどw”



 僕はその場に座り込んで安堵の息を吐いていた。

 トカゲ君たちもどこか満足げな表情を見せている。



「みんな、協力してくれてありがとう。今日の晩ご飯はみんなの好きなスーパーの(半額ぼそっ)肉を買ってくるよ!」

「みぃぃ!!!」



 トカゲたちは大喜びで今にもダンスを踊り出しそうにしていた。

 若干一名、実際に踊っているロリ少女もいるが……。



“スーパーの肉で良いんだ!?”

“しかも半額”

“もっといい肉を食わせてあげたい”

“ミィちゃんのダンスがかわいい”

“ドラゴンもこうやってみると可愛いな”

“騙されるな! 相手はA級の成竜だぞ!!”



「さて、それじゃあ僕は学校に行かないと……」



 徹夜明けでおそらく授業中は寝てしまいそうだけど、それでも出席だけはしないと、と思い起き上がろうとする。



「あれっ?」



 そのとき、ミィちゃんが横穴を開けた場所になにやら小さな葉っぱが生えていることに気づく。



「ダンジョン内でも草って育つんだ……」



“ダンジョンで草なんて見たことあるか?”

“俺はあるぞ。食べられかけた”

“魔物じゃねーか!!”

“ダンジョンなんだから当然だろ?”

“植物が育つ環境にはないよな”



 思わず感心すると脳裏に言葉が響いてくる。



『育たないの……』



 キョロキョロと周りを見るが、トカゲたちの誰かが話している様子はない。

 つまり、この葉っぱが僕に話しかけているのだろう。



「ダンジョン内の草って喋れるんだ……」

『念話なの……。このくらいしかできないの……』

「育たないってやっぱり光と水が足りないから?」

『そうなの……』

「わかったよ。それじゃあ僕の庭に植え直してあげようか? 外なら光はしっかりあるし、毎朝水もあげていくから」

『いいの!?』

「そのくらいお安いご用だよ!」

『ありがとなのー!!』



 話しは決まったので、僕はその葉っぱを根元から大切に掘り起こして、そのまま地上へと戻っていくのだった――。



“持って帰っちゃったよ……”

“大丈夫なのか?”

“魔物ならダンジョンから出たら討伐されるだろ”

“それもそうだな”

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