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配信ダンジョン育成中~育てた最強種族たちとほのぼの配信~  作者: 空野進
第3話『人気探索者のユキ』

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閑話 月夜の光

 Sランク探索者、『月夜の光』は致命的な問題に悩まされていた。



「どうしてこんなにお気に入りが増えないんだ!!」



 リーダーの如月伊月(きさらぎいつき)は頭を抱えていた。



「やっぱり顔だろ?」



 もう一人の男である伊藤水樹(いとうみずき)はパソコンを操作しながらため息交じりに言う。



「いっちゃんは三枚目だしね」



 紅一点の姫乃二葉(ひめのふたば)は自身の爪にマニキュアを塗りながら言う。


 この三人は大学の時からの友人で、そのままパーティーを組んだ形であった。

 前衛(アタッカー)に如月と姫乃、後衛に伊藤というバランスの良い形で地味ながらも着実に実力を付けていった。

 元々才能もあったようで、気がつくと日本でもトップクラスの探索者に上り詰めていた。


 ただそこまで行くと自分たちに限界が見えてしまう。


 致命的な欠点。


 堅実で着実にダンジョンを攻略していくその姿はあまりにも地味すぎて、現在探索者のメイン収入となっているダンジョン配信での稼ぎがほとんどなかったのだ。


 Sランク探索者ともなればダンジョン内の素材採取だけでも十分すぎる収入を得ることが出来た。


 しかし、そこまでである。


 より高みへ上るためには配信で稼ぐ必要があるのだ。


 しかし、彼らの容姿はせいぜい中の中。



 プリンみたいに染めた金髪を邪魔にならない範囲で伸ばしている、背の高い如月。

 丸渕メガネが特徴的な黒髪の平均身長ほどの伊藤。

 長めの茶髪をポニーテールにしているギャルギャルしい姫乃。



 リーダーの如月は中の上ほどはあるのだが、口を開くとすごく残念でライブ配信だとそれが顕著に出てしまう。


 その結果がSランク探索者でありながら、同Sランク内で最低のお気に入り数。いや、それだけならまだマシなのだが、Aランクと比べても下から数えた方が早い。


 打開策を考えようにも容姿を変えることはできない。

 確立された戦闘スタイルを崩せばダンジョン内で危険を招くことになる。


 つまり打つ手がなしの状況だった。


 研究がてらダンジョンの人気配信を三人で片っ端に見ていた。


 同じSランクでライバルである『明けの雫』はもちろん、他にも上位に上がっているAランクの『ユキ』やBランクの『御影』、Cランクでありながら圧倒的なお気に入り数を誇っている『猫派の隼』など。


 そこで集めた情報によるとやはり一番目にとまるのは『容姿が良い』という点だった。

 次点で『派手で特徴的な戦闘スタイル』。

 三番目に『ダンジョン内でダンジョンらしくないことをする』というものである。


 唯一出来そうなことは三番目なのだが、これは二番煎じだと効果が無い。

 常に新しいことに挑戦し続けないと行けないのだ。

 Sランクを兼任しながらのそれはさすがに厳しい。



「良い方法がないな。お前達はどうだ?」

「俺はダメだな。二葉はどうだ?」

「この子、かわいくない?」



 姫乃が見ているのは探索者と全く関係ない少女?の遊び配信だった。

 少女とトカゲが楽しそうに遊んでいる。



「って、トカゲ?」



 如月が不思議そうな声を出す。

 かわいいペットでもなければ、強そうでもない。

 そんな動画の視聴数が既に数十万を超えているのだから声を上げずにはいられなかった。



「これって確かに小さいがドラゴンじゃないか!?」

「そうみたいね」

「そうみたいって姫、さすがにこれはやばいだろ!」

「どこが?」

「どこがってドラゴンだぞ!? 俺たちが苦労してなんとか倒せるような相手だぞ!?」

「これはアーカイブよ。今騒いだところで仕方ないでしょ」

「くっ、こんな幼い子が犠牲になってしまったのか」



 伊藤が眼鏡をあげ、涙を拭っていた。

 しかし、姫野が首を横に振る。



「それがこの子が使役してて、しかもこのドラゴンは人化するの」



 実際に配信画面でも可愛らしい子供の姿に変わっている。



「なるほど! つまりこの子はこのドラゴンに脅されて配信させられてるんだな!」



 それ以外にドラゴンがこの子を食べない理由はない、と如月は確信する。

 もちろんそれは妄想以外の何物でもなかったのだが。



「この子を助け出して僕たちの配信に出てもらう。なんだったら普段のダンジョン配信とかでも出てもらうのはどうだ?」

「こんな戦えなさそうな子にか?」

「別に戦闘なら僕たち三人がいれば何も問題はない。僕たちに足りないのは華だ!」

「でも、仮によ。仮にこの子が本当にドラゴンに脅されてるのだとして、そんな状況で私たちの方へ来てくれるの?」

「普通のやり方だと無理だろうな。ただ、一度誘えばそれもすぐにわかるんじゃないか?」

「どういうこと?」

「僕たちはSランク探索者だ。その誘いを断る奴なんてそれこそ、無理やり脅されてる奴だろう?」

「……確かに」

「でもすぐ側に人化ドラゴンがいるんだろ? 襲われないか?」

「それは大丈夫だ。襲うつもりなら既に町は焦土と化している。つまり、このドラゴンは町中では暴れるつもりはない。今のところは、だけどな。だからこそ初めは普通に誘う。それでダメなら僕たちがドラゴンを優に討伐できる力があることを照明する」

「ドラゴン討伐の証明って爪とか牙よね? もう売り払ってないわよ?」

「それなら今から倒しに行くしかないだろ? まぁ数日あれば帰ってこられる。それの準備を終えたらこの子の救出に行くぞ!」

「全く、一度決めたら頑固なんだから。ほらっ、みずきち、行くよ」

「本当にこれ、脅されてるのか?」



 伊藤は楽しそうな笑みを見せる少女を見て、疑問に思いながらもリーダーのいうことだから、と彼に従ってダンジョンへと潜っていった。

 その結果、過去最短の二日で成竜討伐を果たし、その討伐証明たる爪を手に入れることができた。


 これを見せたらきっと彼女も自分たちがドラゴンを倒せる探索者と信じて、助けを求めてくれるだろう。

 そのときに改めて言おう。



「君が欲しい」と。



 色々と勘違いされそうな言葉ではあるが、如月の中ではこれが一番かっこいいセリフだと信じていた。これが彼が三枚目といわれている所以でもある――。



「さて、この子の場所は……、案外近くに住んでるんだな」



 碌に隠そうとしていないこの子の個人情報は某掲示板を調べたらすぐに出てきた。

 それこそ配信開始の次の日には、住所や名前すら割り出している。

 それでも未だに彼女を救出できたという情報だけは出てこなかった。



「柚月八代っていうのか……。僕たちの配信のマスコットには君以上の存在はいないな。必ず僕たちが助けてやる!」



 全てが彼の妄想であるということに気づかないまま、Sランクパーティ『月夜の光』は死地へと飛び込んでいくのだった――。

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