第六話 戦闘の後
城での戦いが終わり、残りの魔王軍を全滅させた後、さらに前線を広げていき、夜までに城外まで押し上げた。しかし皆疲弊しており、これ以上の前進は不可とされ転送で王都に帰らせてもらった。
俺も疲れていて、意識を保つのがやっとだ。
被害はというと死者が300名以上、負傷者700名以上だったらしい。しかし、召喚された人が付近にいるところではあまり死者が少なかったそう。でも…アイリスみたいに付近にいても死者は出ている。
あれは俺がちゃんと周りを警戒していなかったからだ。
俺のせいでアイリスさんは死んだ。このどうしようもない事実が胸を貫く。
現実から逃げたいため、飯だけ食べて寝ることにした。
夢の中は本当にいい。つらいことから逃げられるし、夢の中で何をしてもいい。暖かいベッドの中で目を閉じたら、行けるというところもいい。それじゃお休み・・・
夢の中は、見たことのない森林の中。周りには木と草しかない。そして体が動き出す。何かを警戒しているのか、慎重に歩いている。突然、後ろの方から草を掻き分ける音がして俺は走り出した。しかし、音の正体らしきものに押され、地面に倒れた。顔を覗き込まれたので誰かと思って見てみると、黒色の巨大な猫がいた。そいつの目を見ていると、急に場所が変わり地獄のようなところになっていた。
周りに骨が散乱しており、肉が残っている死体もある。
夢の中なので臭いはしないが、気分が悪い。
さっきの猫はいつの間にいなくなっており、重いものがないので立ってみるが、下がぬかるんでいてまともに歩けない。というか飲み込まれて行っている。岸に上がろうとするが、飲み込まれていて上がれない。下を見てみると、俺の足を引っ張っている無数の死体いて、先頭のやつと目が合った。俺は暴れるがどんどんと引きずり込まれ、ついには目の前が暗くなり発狂して目覚めた。
起きたときはすでに朝。兵士やクラスメイトのみんなが気を聞かせて、寝かしておいてくれたのだろか?だとしたらありがたい。眠い時に起こされるのがいちばん嫌いだからな。しかし意味の分からない夢を見た。
目の前で人が死んだからだろうか?あの時は近くに死を感じた。アイリスが身代わりになっていなければ、俺が死んでいた。あの人には感謝しかない。
食堂に行くと騒がしい声が聞こえた。何か言い争っているようだ。隠れて見てようじゃないか。
どうやら先の作戦で行かせてもらえなかった奴が、行った奴に文句を言っているらしい。
「だからさっきから言ってるだろ!何でお前なんかが選ばれたんだ!どうせ媚びでも売ったんだろ?クソッ腹が立つ。せめて土下座くらいしたらどうだ?ああ」
「はっ何でお前なんかに、土下座するんだよ。そもそもお前に下げる顔なんてない。選ばれなかったのもそうやって偉そうにしてるからじゃないのか?なんか言ってみたらどうだ?」
これ以上、ヒートアップしたら周りが消し飛ぶような気がする。止めるなら今の内に止めないといけない。
俺はすぐに二人の間に入った。戦闘体型になっていたので遅れていたらダメだった。
「まあまあ二人とも一回落ちつけ。二人さ、家族に会えるようにがんはっているだろ?仲間どうしで争いをしてたらだめだと思うよ。皆目的は一緒だろ?それにどうせ皆送り出されるようになるんだしさ」
それを聞いた二人はとりあえず問題は起こさないと約束してくれた。
食べ物を食べ、城の中を適当に歩いていると、田中と出会った。
「調子はどうだ野分」
「今のところは大丈夫。お前の方は?」
「俺は留守番だったから、特に何も・・・」
「そっか・・・ごめん」
「何で謝ってるの?」
「いや、行きたかったのかな~って思って」
「別にそんなことはない」
そんなことを話していると、翔が走ってきた。こいつが走って来るなんてよっぽどのことだ。
「どうした翔?魔王軍でも攻めてきたか?」
「はぁはぁ、そんな悪いことじゃない。魔王軍から領地を取り戻したから、それを祝ってパレードを行うらしい」
「まじか」「お~」
俺と田中は思わず声を出してしまった。
この国が俺達に感謝しているのかもしれない。それなら、また戦場に出て行ってもいいのかもしれないと思った。
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