第一話 異世界召喚
目の前では桜が舞っており、春であることが分かる。大半の人は青春を感じるだろう。
俺もそうだ、新しい学年で新しい仲間と一年間一緒に過ごすのだから。
教室に入ると、去年同じクラスだった翔がいた。
「お、同じクラスか、また仲良くやろうか」
「ああ、もちろんだ」
「そうそう、紹介したいやつがいるんだ。……こいつは修三。一年のころからの友人だ」
「田中・修三です。よろしくお願いします」
「野分・樹だ。こちらこそよろしく」
自己紹介なんてあまり得意ではないが、これであっているはず。
「そうだ!この後クラスの皆を誘ってカラオケにでも行こうぜ!」
「パスで」
俺は即答した。カラオケなんかよりゲームをしたいし、そもそも歌いたくない。
翔が困った顔をして、修三の方を見つめた。それから修三が考え。
「別にありなんじゃないかな。後からそういう機会はあると思うけど、早めに友好を築いたっていいじゃないか?」
確かに、早めに友好を深めるのはありかもしれない。
「ま、そこのところは担任がどうにかしてくれるだろ」
俺の言葉に二人とも頷いてくれて、この話は一度おしまいにした。
そろそろ、ここの担任が来る。たしか名前は・・・佐藤・真由美という20代の女性だったような気がする。
そんなことを考えていると、担任が入って来た。
「これから一年間、3ー2の担任になります。新米教師の佐藤・真由美です。歳は皆さんと近いのでどんどん話かけてください!」
よかった。厳しそうな担任じゃなくて。新米ってことは早くて21歳か・・・若いな。去年の担任は28歳で四捨五入したら30歳ですよ、て煽られてたな。
この後の時間は、絆を深めるやつのはず。毎年やるものは担任が決めており、担任によって変わるという、面白いシステムになっている。一部では人気があるが、不満の声もある。
「えーと今年から、絆を深める会は廃止されることになりました。不平等だという声が上がっていたらしく、やむを得ず廃止しました」
クラス中から、嘆きの声が聞こえる。俺も悲しいよ。
続けて佐藤先生が。
「私も残念に思っていますので、この時間を使ってやりましょう!」
歓喜の声が聞こえる。ああ、なんていい教師なんだ。責任も取ってくれるだろう。
「と言っても、私を皆さんに知ってもらいたいため、周りの人と相談して3つだけ答えます」
このクラスの人数は30人、ポンポン質問したら、誰かの反感を買うだろう。じっくり皆で話し合えってことか。なかなか考える先生だ。
皆立ち上がり、10人ずつ固まっており、何を質問するか考えていた。
途中、急に眠気が襲ってきた。今日に限っては夜更かしなどしていない。あ、やばい寝ちゃう。
うーん、何やら周りが騒がしい。今は何時だ?ていうか何で寝てるんだ?確か学校で眠くなって・・・学校で寝た!?
飛び起きて周りを見ると西洋の建物の中で槍を持った兵士が数人、俺・・・いや俺達を囲むようにフードを被った奴らが30人とドレスを着た美少女が一人、奥の方に冠を被り、玉座に座っている男性が一人。
あれ、これって最近話題の異世界ものじゃないですか?俺が寝ていた場所に魔方陣の後がある。まさか、異世界に来るなんて思ってもなかった。じゃあテンプレどうりで行くと、俺達って勇者ってことじゃないか!!最高かよ。
しかし、俺以外もいる。メンツを見る限り、クラスにいた奴らだけ。他の皆は既に起きており、俺が最後だったようだ。
「あ~あ、お前起きるの早いな。もうちょっと寝顔を見たかったのに・・・お前の寝顔はかわいかったぞ」
「おい!翔、お前一回だまろっか?」
「はい、スミマセン」
「お前ら!王の御膳であるぞ!起きたのなら、陛下が話すまで静かにしてろ!!」
豪華な鎧を付けた兵士が大声で言った。おそらく高い地位にいるのだろう。俺が嫌いなタイプだ。
「よい、あの子たちだって、突然ここにいるのだ。非があるのはこちらであり、さらに願いまで叶えてもらおうとしているのだ。わかったら口を慎め」
「申し訳ございません、陛下」
「分かれば良い。まず君達には悪いことをしたと思っている。なんの前ぶりもなく、突然知らぬ地に飛ばされたのだから。しかし、わかって欲しい。これしか、この世界を救う方法がなかったのだ。どうか頼む、この国のため、世界のため、魔王軍と戦ってくれ!!」
皆口を開け、沈黙が続いた。しかし、それを最初に破ったのは、新米教師の佐藤先生だった。
「王様であろうと関係ないわ。この子達がいた世界は戦争もない平和な世界だったのよ!?実戦なんてしたことないのに、戦場に送り出すなんて、どういうつもりよ!?」
「本当にすまない。我々だって最初は外の力は借りずに抵抗したがいい戦果は出ず。一方的に被害が出て、最近では、民にまで被害が出始めたのだ。このままではこの国・・・いや世界が魔王によって支配され、民は酷い扱いを受けるだろう。だから頼む、あなたたちの力を貸して欲しい」
そう言って、王がした行動は土下座であった。
「陛下、お止めください!王たる貴方がそんなことをしてはなりません!」
「父上!」
王というのはプライドが高く、そんなことはしないと思っていた。しかし目の前の王はどうだろうか?民の為にプライドを捨て土下座をしている。それほど、事態は深刻なのだろう。そう考えると、手を貸したくなる。
「佐藤先生、この話受けても良いんじゃないかと思います。とりあえず身柄は保証されると思いますし、一方通行ではないと思います。帰る方法を探す必要もあるので、拠点が必須であり、協力する変わりに拠点を貸してもらいましょう」
佐藤先生はしばらく考え、深く頷いた。
「分かりました。私達の身柄を保証し、帰るための拠点を貸してくださるのなら乗りましょう。ただし、生徒個人の意見を尊重させてもらいますよ。」
「もちろんです。元の世界に帰るためのポータルは魔王城の地下深くにあるそうです。あなた方の身柄も保証します」
「分かりました。この話、乗ります」
他に、生徒から不満が出ることもなく満場一致でこの世界を救うことに賛同した。
「ありがとうございます!」
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ちなみに、佐藤・真由美が勝手に乗っちゃってますが、皆の気持ちは、同じだったらしく、やってもいいと思っていました。