プロローグ
私は毎日欠かさず、主を崇め、私の暮らしが穏やかであるようにと祈っていた。その祈りがいつか、主に届くと思っていた。
けれど主は、救いの手を差し伸べてくださらなかった。この後、私は目の前の化け物に殺されるだろう。
最初に近付いた、マイクとポールが殺された。アイツらは子供が相手だからと舐めていた、油断していたのもあるだろうが、あんな簡単に、ただの肉塊になるなんて思ってもなかった。
私はただ祈るしかない。この化け物に殺される時、安らかな死であることを。
残された、妻や子供はどうなるのだろうか?十分な蓄えはあるから、飢えることはないだろう。子供は悲しむだろうか?いやあの子逹は強い、きっと大丈夫だ。長男のミゲルが皆を支えてくれるだろう。
死ぬ際、考えることは家族の事か•••どうせならベッドの上で家族に囲まれて死にたかったな。
しかし上は、この化け物を生かして捕まえろ、と言ってきた。こいつは殺すことさえ難しいだろう。せめて勇者様達、でなければ殺せないだろう•••。
もしやこいつは魔王なのだろうか!?少なくとも幹部級じゃないか!?王都にまで魔王の手が伸ばされているなんて知らない。前線はここなんじゃないか?ああ化け物が近づいて来る。他のみんなは既に逃げているが、私は逃げ遅れた。恐怖で足が動かなかった。
死が私の首を捕まえている。帰ってくると約束したのに•••済まないみんな。
真夜中の城下町で最後の兵士の首が吹っ飛んだ。周りには小隊ほどの死体が倒れており、逃げ出せた者など誰もいなかった。
そこに立つ一人の男が独り言を言いながら暗闇の中へと、消えていった。
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