聖獣変態する
襲い掛かってくる敵を打ち払い、意識を奪うか戦闘不能にした。
そして屋敷中を走り回り、一室にアリスと家族を発見した。
周りには5人の兵が倒れていた。その手にはそれぞれ剣が握られており、人質に向けられていたことが容易に想像できた。もし闇雲に突入していたら傷つけられていたかもしれない。
「あなた!」
「父上!」
マルティーヌとルイスはアリスの手を離さぬままエルンストにかけより、抱き着いた。
「あなた!アリスが!アリスが助けに来てくれたの」
マルティーヌは涙で顔をくしゃくしゃにしていた。ルイスも涙ぐんでいる。なぜか頭に小鳥を乗せて。
エルネストはアリスとともに妻と息子を抱き寄せた。
「良かった、アリス本当にありがとう。みんなが無事で本当に良かった。」
使用人たちも別室に縛られ、閉じ込められていたが無事救出された。
転移で屋敷に入り込んだアリスは、認識阻害を最大に発揮し、マルティーヌたちを探した。人質に剣を向けている兵らを見つけたとき、アリスは彼らの剣に向かい雷魔法をはなった。剣を伝って感電した兵らは一斉に気を失い倒れた。その時に光の柱が屋敷を貫き合図となり、こうして無事人質を救出することができた。
しかしこれで終わりではない。公爵邸の占領は制圧できたが、国中に敵兵が侵攻してきているのだ。エレンの行方も分かっていない。
「お父様、この兵たちも操られていたようです。きっとこの侵攻自体エレンが計画したと思われます。」
「隣国を・・・国をも操ったというのか!」
「国王を精神干渉魔法で操り、魅了薬を与えた兵に命令させれば簡単なことです。ゆっくり話す暇はありません、私も師匠と一緒に戦ってきます」
そういったところでケルンが肩にとまった。
『アリス、僕に魔力を流して』
「今忙しい。それにいつも勝手に流れてるんでしょ」
『意識して、大量に流してほしい。そうすれば・・・・』
と、聖獣に慣れたはずのアリスが驚いてしばらく動けないほど衝撃的な言葉をはなった。
アリスもエルネストも国王も国民もその幻想的な光景に心を奪われていた。
雨が降る漆黒の夜空に金色に光る雄大で美しい竜が舞っている。
その光は雨に溶け込み、地上に降り注ぐ。そしてルーナ国に攻め込んできた兵たちはその聖なる光の雨に打たれ、正気を取り戻した。
真の姿を取った聖獣ケルンの力であっという間に攻勢はひっくり返った。というより、敵方が我に返り侵攻が止まった。
戦火が止まったのを確認するよう大きく空を旋回すると光り輝く聖獣は、天に向かって上昇し消えていった。
その光景に見惚れていた人々は、はっと我に返ると天に向かい祈りをささげた。




