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今度は悪意から逃げますね!  作者: れもんぴーる


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聖女?

 いくら口止めしたとしても、行く先々で奇跡を起こしていたエルのことが噂にならないわけがない。ルーナ国に女神が現れ、困っている者に奇跡をもって手を差し伸べてくださると。


 季節外れの強大な嵐に襲われたゲーテ領では暴風で数多くの屋根が飛ばされ、木が倒れて道をふさぎ、大雨で橋が流された。山に染み入った雨が川に流れ出て、さらに川が増水し氾濫するのも時間の問題だった。


 そこに巫女が着るような白い細身のゆったりとした服をまとった女性が数名の神官を伴って現れた。噂を聞いていた領民たちは女神様が来てくれたからもう安心だ!と嬌声を上げて出迎えた。

 女神様!女神様!と皆から声をかけられた女性は微笑みをたたえながらもう安心ですと告げた。


 領主が、川が決壊しそうなので防いでほしいと求める。長い川のどの部分を強化すればよいのか、堤防すべてを強化することはできず、決壊を止めるのは難しかった。決壊した後の水の流れを操作するしかない、そう説明しているうちに堤防の決壊は起こった。


 女神と呼ばれた女性は腕を大きく広げ、魔力を高めると流れ出た泥水や流木の流れを変え、できる限り居住区や田畑を守った。

 そして次に案内された領主の館にはけが人が多く避難してきており、骨折や傷を次々と治していった。


「あ、あの・・・女神さま。こっちの怪我人の方がひどいんです。お願いします!」

 意識を失い、瀕死の状態の怪我人の治癒を求めた。

「申し訳ありません、これほどひどいけがでは私の力では・・・」

 周りがざわめく。

 十分高度な治癒魔法を行使しているのだ。魔法とはいえ、助からないものは助からない。感謝されることはあれ、不満に思われることではないのに。


「貴方様は女神様なんでしょう?女神さまは奇跡を起こせると聞きました!」

「え?ええ・・・いえ、そんな恐れ多いですわ。できることをしているだけですので…」

「女神様!お願いします、夫を助けてください!」

 女性が縋るが、女神は悲しそうな表情を浮かべて首をふるだけだ。


 そこに嵐発生の報告を受けたイリークが転移でやってきた。

 イリークは状況を把握すると、瀕死の患者のそばにしゃがんだ。

(私でも無理だ・・・アリスとケルン様なら。だがここには呼べない)

 ちらっと女神と呼ばれている女を見た。

 ここで出会うとは思いもしなかった。

 これがアリスが言う聖女エレンに違いない。アリスを陥れ、自分を処刑に追い込んだ悪魔のような女。ピリッと神経が尖る。


 胸がざわめき、頭の中がたぎるようだ。だが今は冷静にならねばならない。

「奥様、私は魔術宮の魔術師イリークと申します。わたくしを信じてご主人をお預けいただけませんか?」

 ローブに刺しゅうされている、王宮の魔術宮所属である印を見せる。

「ど、どうするんですか。」

「できる限り手を尽くします。一刻を争うのです、決断いただけませんか」

 男の妻は涙を落してうなづいた。このままでも夫は助からないのだ。

 イリークは瀕死の男性とともに、姿を消した。


 転移も相当難易度の高い魔法である、それなのに他者を連れて一瞬で姿を消したことに残された人々は驚いた。

 それに目を瞠りながらも残ったエレンは妻の背中をさすり、励ましの言葉をかけた。心のこもったいたわりの言葉に妻も覇気を取り戻し、夫が戻ってくるまで気をしっかり持って頑張ると約束をした。


 水の被害を抑え、多くの怪我人を治療し励ましてくれたエレンに領民たちは感謝をし、口々にお礼の言葉を述べた。

 エレンは他の地域にも支援の必要がないか見てまわる、とゲーテ領を後にした。


 エレンがここを離れてから、しばらくしてイリークは男を連れて戻ってきた。

 意識を取り戻し、以前同様元気になった男性は妻の元に走り、抱きしめた。


 しばらくして魔術宮の魔術師は「女神の御使い様」であるという噂が流れた。


 前回、聖女と奉られたエレンのことは人々の口には上らなかった。


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