父と娘
「城下町で話題になっていた赤フードの冒険者。その特徴に似たフードをお前の部屋でたまたま見つけてから、半ば確信はしていたが……」
私はため息をつき、赤フードを取る。
「実際にその姿を見せられると感慨深いものがあるな、キリナよ」
「お父様……わかっていたのなら、早く言ってくれませんか?」
「すまないな。お前が何を思ってその赤フードを被り、冒険者として活動していたのか。その理由が知りたかったのだ。ただ、己の力を試したいが故に、悪人相手に力を振るっているのなら止めようと思っていた」
「さっきも言った通り、そんなつもりはありません。力を手に入れた以上、私はみんなを助けたかった。ただそれだけの目的で、私は赤フードの冒険者になったのです」
「正体を隠していたのは、貴族という身分による、ある種の偏見から逃れるためか。貴族に助けられたという妙な恩は着せたくなかったと」
「そんなところです。それにお父様に止められるかと思って」
「確かにエルバルクの令嬢がモンスターをなぎ倒しているなどと広まることを想像すると笑えてくるな。使用人たちも止めるだろう。だが、私はそうしようとは思わない」
「……そのようですね。さっきからの言動を聞いていれば察しがつきます」
「元々、私はエルバルク当主となる者は有事の際のため、武力をしっかりとその身につけていなければならないと考えている。娘のお前であれ、次期当主である以上、例外はない」
思った以上に、お父様は力を重んじている。
だが、他人を傷つける力ではない。自分を守り、誰かを守る正義の力だ。
「鍛える手間が省けたと考えればよいだろう……しかし、娘に助けられるとは、私もそろそろ隠居するべきかな」
「まだまだ働いてもらわないと困りますよ、お父様」
「お前もな、キリナ。ベルドロール家の反乱は続いているのだろう?」
「はい、当主のバルゴ・ベルドロールが魔力汚染によってモンスター化して王城に向かっています」
それを聞いて、今度はお父様がため息をつく。
「そこまで堕ちたか、バルゴよ……」
色々と思うところがあるのだろう。お父様は少し沈黙していたが、
「それなら早く向かうといい。私は装備を整えて、自衛に努めるとしよう。残念だが、私にはバルゴを止められない。その役目はお前に任せるぞ、キリナ」
「はい!」
「さらばだ。赤フードの冒険者よ。この反乱が落ち着いたら、またゆっくりと話そう」
私はお父様の私室を出て、今度こそ王城へと向かう。
バルゴ・ベルドロールに引導を渡す、最後の戦いだ。




