偽の最強
ベルドロールの屋敷の中庭へと出た私のもとに、大きな鳴き声が聞こえてくる。
巨大な黒鳥が頭上まで飛んでくると、急降下して私を背中に乗せた。
「ありがとう、ビッグ!」
屋外戦闘になると判断した時点で、私は『呼び出し』のスキルを使って、ビッグに助けを求めていた。
ビッグは私を乗せて、空へと飛び上がる。
このまま逃げても構わないが、魔法使いを名乗り、他人を攻撃したタルクの身柄は一度拘束して、その後の処遇を決めるべきだ。
私の護衛役二人も、まだ屋敷内に残されている。
「さて、遠距離に攻撃をする時はどんな魔法を使って来るかしら」
タルクは私たちの真下におり、杖を再び掲げた。
だが、今度の対象は直接私たちに向けてではない。
タルクは屋敷の外壁に向けて、魔法を撃ち出した。その先には、魔力を貯めた鉱石が置かれている。
鉱石に一度充填された魔法は、今度は正確な狙いで魔力が凝縮された弾となって私とビッグを襲う。
「くっ!」
危機一髪回避して、私は中庭に出たことが失敗だったことを知る。
そこには大量の魔力鉱石が置かれていた。どれも砲台としての利用目的だろう。
私はタルクの魔法練習場に足を踏み込んでしまったようだ。
「どうだ! 魔法はただ現象を発生させるだけじゃない! 人工的な兵器に力を与えることもできるんだ!」
タルクは叫ぶ。
そして、私はベルドロール家の魔法戦略がどういうものかをなんとなく理解した。
まず、魔法使いを量産できるようにする。
そして近距離では攻撃魔法、遠距離へは製造した魔法兵器へのエネルギー供給を行う役目を担わせ、戦いで優位に立つ。
つまり、タルクは自分のことを万能だと思っているが、ベルドロールの魔法戦略全体から見れば、一つの強力な駒にすぎない。
「ハハハ! 僕は最強だ!!」
結局、魔法使いもスキル枠無限に勝る存在ではなかったようだ。
確かに一般に普及すれば、スキルよりも魔法の方が利便性が高いと判断されるかもしれない。
――だが、一対一の戦いにおいてのみいえば。
タルクは、決して、最強などではなかった。




