本物の魔法使い
魔法使い。
それはどこにでもいそうで、しかし今まで存在しなかったものだった。
魔法は希少だ。特定の魔法を偶然覚え、魔法技術者として働く人間はいる。
グラズ魔法工場にはそういう人々がたくさんいた。
だが、この王国で使われる魔法使いという言葉は、多くの魔法を操り、高い戦闘能力を持った人間を指す。
それはたびたびフィクションの中で語られてきたが、実際にはそういった存在は確認されてこなかった。しかし、バルゴもそれを知っていて、あえて魔法使いという言葉を口にしたのだと思う。
だとすれば、今までの中で一番の強敵だ。
「エルバルクのご令嬢。そのまま、おとなしく僕たちに捕まる気はないかな? 父上の仰った通り、僕は魔法使いだ。一般人のキミに勝ち目はない」
タルクはそう言った。
言動から多少の増長が見られる。
若い年齢である程度の力を得てしまったために、少し優越感を覚えているようだ。私はそういう風にだけはなるまいと誓って、冒険者家業をしてきたからよくわかる。
自分の力を驕るようでは、まだ三流にも到達しない。
「じゃあ、見せてみてよ。たくさんの魔法を。あなたが本当に魔法使いと呼ばれるのにふさわしいか、私が見てあげる」
私はわざと挑発するように言う。
どのみち、戦闘は避けられそうにない。
『この姿で戦うことに抵抗はあるが、戦うのであれば、自称魔法使いの全てをきちんと見ておくべきだ。
「キリナさま!」
だが、最悪のタイミングで、私の護衛二人が部屋へと突入してきた。
どうやら争いの気配を察知したらしい。かなり遅い……というよりも、この場でやってくるのは、タルクの良い的にしかならないだろう。
「逃げて!」
私は叫ぶが、
「では、その二人相手に魔法を使って見せましょう……《炎上》、《氷結》」
彼が魔法名を呟くと同時、護衛二人が炎と氷に包まれる。
「ぐぁぁぁぁっ!!」
一人は全身が発火し、もう一人は氷が全身をおおっていた。
「くっ……!」
私はスキル『異常現象解除』を使用する。すると、彼らの身体は元の状態に戻った。
が、ダメージまでなかったことになるわけではない。その場に護衛たちは倒れる。
これは本物の魔法使いかもしれない。
私はタルクをにらみながら、そう思った。




