逆境のバルゴ
「そ、それは……」
バルゴ・ベルドロールの顔色が初めて変化した。
強烈な焦りが滲み出ている。これで自白したも同然だ。
私は魔法手袋をつけて懐から取り出した透明石粒をバルゴの目の前に掲げていた。
本当は魔法手袋なしでもスキル効果で無効にできるが、それがバレても厄介なので、手袋をつけている。
私はキラキラと光り、向こう側が透けて見える石粒を手の中でもてあそび、笑顔で言う。
「綺麗な石でしょう?」
「貴様……ッ! なんということを……!」
「何を慌てているのです? ベルドロール家は何も知らない。黒装束のことも知らない。グラズ家との繋がりもごく一般的なもの。じゃあ、この石がなにかも知らないですよね?」
私が言ったことが全てだ。
ベルドロール家が何にも関与していないなら、透明化石粒のことなど知るはずがない。
関与の程度は言い逃れができるかもしれないが、こんな危険な存在を知っていて黙っていた時点で終わりだ。
私はグラズ魔法工場から抜け出す前、少量の透明化石粒と魔法手袋を一つ、拝借していた。迷惑料みたいなものだ。
これは駆け引きの場で絶対に利用できると踏んでいた。
だから、自室の奥に魔法手袋に包む形で保管していたのだ。
どこかに触れるだけで透明にしてしまうので、取り扱いがかなり面倒だった。
しかし、それに見合った効果を発揮してくれた。
「これをあなたに投げつけてもいいですか?」
「や、やめろッ!! 工場の一件以来、唯一の解除石が行方不明なのだ!!」
バルゴの顔が醜く歪む。
さっきまでの余裕はどこかに消え、懇願するような表情を浮かべ、脂汗を流している。
「……ベルドロール家がグラズ家とこの石粒の取引をしようとしていたことを認めますか?」
「ぐっ……!」
「それと最近、エルバルク家に対抗しようと何か計画しているでしょう? その内容も全てお話しください」
「黙って聞いていれば……ただの小娘がッ!!」
バルゴが指を鳴らす。
すると、私の四方を囲むように突然黒装束の連中が現れた。




